ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】物理学はいかに創られたか

2006年02月09日 22時25分46秒 | 読書記録2006
物理学はいかに創られたか 初期の観念から相対性理論 及び 量子論への思想の発展 (上)(下), アインシュタイン インフェルト 著 石原純 訳, 岩波新書(赤版) R14・15(50・51), 1939・1940年
(The Evolution of Physics)

・ガリレイの時代から量子論までを旅する、「ソフィーの世界」の物理学版といった内容です。 「数式を使わない!」を売り物にしたりする、内容の薄い解説本などとは根本的に異なる本で、言葉の重みが全然ちがいます。 かといって内容が初心者にとってわかりやすいかというと、、、まったく予備知識がない場合はちょっとキビシイかもしれません。
・「私たちの目的とするところは、むしろ人間の心が観念の世界と現象の世界との関係を見つけ出そうと企てたことについて、その大要を述べてゆこうとする点にあるのでした。」上巻 原著序文
・「科学の書物は、どれほど通俗的であるにしても、小説と同じようなつもりで読んではならないのが当然です。」上巻 原著序文 キビシイお言葉・・・
・「真実を理解しようとするのは、あたかも閉じられた時計の内部の装置を知ろうとするのに似ています。」上巻 p.35
・「また知識には理想的な極限があり、これは人間の頭脳によって近づくことのできるのを信じてよいでしょう。この極限を客観的真理と呼んでもよいのです。」上巻 p.36
・「物体は重さをもっていますが、エネルギーには重さがないのです。だからここには二つの異なった概念と二つの恒存の法則とがあるわけです。ところでこういう考え方は今でもそのままでよいでしょうか。」上巻 p.61 この疑問から相対論が生まれ、物体とエネルギーが統合された。
・「たとえて言えば、新しい理論を作るのは、古い納屋をとりこわして、その跡に摩天楼を建てるというのとは違います。それよりもむしろ、山に登ってゆくと、だんだんに新しい広々とした展望が開けて来て、最初の出発点からはまるで思いもよらなかった周囲のたくさんの眺めを見つけ出すというのと、よく似ています。」上巻 p.175
・「ある観測者が一生涯を通じて回転する部屋の中で日を過ごし、そこですべての実験の行なうように運命づけられていたなら、私たちのとは異なった力学の法則を得ることでしょう。」下巻 p.5
・「科学ではいつもそうである通りに、私たちは深く根づいてはいるものの、これまでしばしば無批判に繰り返されて来た偏見から離れることが何よりも大切です。」下巻 p.36
・「まず簡単な疑問に答えることから始めます。  時計というのは何でしょうか。」下巻 p.39 このような『あほか?』と思われるような問いから相対性理論は展開されていく。
・「それはあたかも太陽が西に没するのを見て、実はその出来事が八分だけ以前に起ったのを今見ているのだと考えるのと同様です。」下巻 p.41
・「すなわち、もし光の速度がすべての座標系で同じであるならば、動いている棒はその長さを変え、動いている時計はそのリズムを変えなければならないのであって、かつこれらの変化を支配する法則は厳密に決定されます。」下巻 p.48 相対性理論の真髄。
・「相対性理論を車や船や汽車の運動に適用するというのは、乗算の表だけでも足りるところにわざわざ計算器を持ち出すのと同じような無駄な手数をかけることになります。」下巻 p.56
・「もし私がすべての物体から遠方に離れ去って、あらゆる外界の影響から免れることができたとしたなら、その時には私の座標系は慣性系となるでしょう、」下巻 p.79
・「あらゆる座標系に対する物理的法則をどうしてつくってゆくかという問題は、いわゆる一般相対性理論によって解かれました。これに対して、慣性系だけに適用される以前の理論は特殊相対性理論と名づけられています。」下巻 p.83
・「科学が発展するにつれて、いろいろ新しい困難が現われ、それによって私たちの理論はだんだんに抽象的に傾いてゆくことを免れません。(中略)私たちの新しい考えは簡単なもので、つまり、すべての座標系に対して成り立つ物理学をつくろうというのです。ただこれを成し遂げるのには形式的に複雑になるのを免れないので、そして従来物理学で用いたのとは異なった数学的の道具を用いなくてはならないのです。」下巻 p.84
・「すなわち相対性理論から知られたように、物体はエネルギーの大きな貯蔵者であると共に、エネルギーは質量をもっているのです。(中略)ですからこう言ってもよいでしょう。エネルギーが多量に集中している場所が物体であって、エネルギーの集中の少ない場所が場であると。」下巻 p.122 この世のすべてはエネルギーの濃淡に帰着せられる、というモノスゴイ世界観。原子力発電所がふつうに稼動している現在でもドキッとするのに、この説が発表された当時の衝撃はいかばかりのものであっただろうか。
・「相対性理論は物理学において場の重要性を強調するものです。しかしながら私たちはまだ純粋の場の物理学を形作るのに成功していません。現在では依然として物体と場との両者の存在を仮定しなくてはならないのです。」下巻 p.127
・「このようにして質量もやはり不連続的な量であることがわかります。」下巻 p.135 これまた強烈。たしかに究極元素が見つかれば、それ以下の質量単位は存在しないですね。。。 同じように時間も不連続であるという説もあるようですが、どうなんでしょうか。この世のすべてはデジタル??
・「物理学の理論を立てるのには、根本的な思想が最も本質的な役目を演じます。物理学の書物は複雑な数学公式で充たされていますが、どの物理理論にしても、その端緒となるのは観念や思考であって、公式ではありません。」下巻 p.165
・「たくさんの自動車の登録標を観察すると、その登録番号の三分の一は三で割り切れることを、すぐに見出すことができます。しかし私たちは、次の瞬間に傍らを通り過ぎる自動車がどのような番号をもつかどうかを予言することは決してできません。統計的の法則は単に大きな群集に適用することができるだけで、その個々の要素には適用せられないのです。」下巻 p.175
・「科学はまさに法則の集積でもなければ、まとまりのない事実のカタログでもありません。それは人間精神の一つの創造物であって、それが自由に発明した思想や観念を含んでいます。物理学の理論は実在の一つの形像を形づくって、それと感覚的印象の広い世界との連関を確立しようとします。」下巻 p.189
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?さくざつ【錯雑】 いろいろなものが秩序なくまじっていること。また、そのさま。錯綜。
?コックロビン(クックロビン)(cock robin) 雄のコマドリ。
?びほう【弥縫】 補い合わせること。欠点や失敗をとりつくろうこと。また、一時的に間にあわせること。
?えんえき【演繹】
  1 一つの事から他の事に押しひろめて述べること。
  2 (英deduction)一般的な命題から特殊な命題を、また、抽象的な命題から具体的な命題を、経験に頼らないで、論理によって導くこと。⇔帰納
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