ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】脳をあやつる分子言語

2006年02月19日 22時17分11秒 | 読書記録2006
脳をあやつる分子言語 知能・感情・意欲の根源物質, 大木幸介, 講談社 ブルーバックス B-389, 1979年
・「《ホルモンとは何か》ホルモン焼きの材料……ではない。人間の体内で、細胞が他の細胞に情報を伝えるための言葉である。」カバーより
寒いギャグはさておき。1960年代に組織化学的蛍光法が開発され、70年代に脳についての研究が飛躍的に進んだのを受けて書かれた解説書。アミノ酸の結合図に『進め』『止めろ』『痛くない』などの訳をつけたり、分子式を擬人化して説明したりと、易しく解説しようという工夫は見られるものの、内容はやや堅め。
・「ホルモンとはギリシア語の「刺激する」、「誘発する」という意味で、体内に微量(体重キログラムあたり数ミリグラム)分泌され、その作用を受ける臓器の細胞を刺激し、活動させる物質であり、分子である。体内へ分泌されるので、古くから内分泌物質といわれており、最近では、体内の細胞間に情報を伝える物質ということに焦点をあてて、そのメカニズムそのまま、ケミカル・メッセンジャー(化学的情報伝達因子)と呼ばれるようになった。」p.15
・「生命とは何かといえば、タンパク質の合成そのものである」p.20
・「タンパク質分子にとって最も重要なことは、そのアミノ酸の自由な配列によって、無限の情報を持てるということである。」p.24
・「碧巌録の杜荀鶴の詩から「心頭を滅却すれば、火もまた涼し」といって業火に飛び込んだ快川和尚」p.76 出典を初めて知った。
・「モルヒネの発見後およそ一世紀たった一九世紀末、ドイツの製薬会社はモルヒネの簡単な誘導体を喘息の治療薬として売り出した。それは、モルヒネに酢酸分子二つが結合し、活性が強くなったジアセチルモルヒネで、モルヒネから簡単に合成される。そして、これはヘロインという名前で売り出された。」p.81 もともとは合法薬だったのか。
・「神経細胞と神経線維をまとめてニューロン(神経元)と呼ぶことがあるが、それほど使われる言葉ではない。」p.95 時代を感じる一文。
・「アドレナリンはアド(副)レナ(腎)リン(因子)で、」p.112
・「人智の発達の原因は、神経化、髄鞘化、最後に反転による大脳の巨大化という三段階の進化にあったといえるだろう。」p.170
・「人間精神を作った原点を分子レベルで求めれば、神経細胞を作った電線(神経線維)の神経膜と、その効率を倍々増した絶縁被覆髄鞘にあるということになる。」p.192
・「近代的ストレスには騒音、悪臭、汚染など、近代工業の産物も多いが、何んといっても、多量強烈なのは、近代化によるディジタル型情報の氾濫である。」p.206 『情報の氾濫』とはわりと最近の話かと思っていましたが、今からすると長閑だったと思える約30年も前に、既に言われていたのですねぇ。
コメント
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