ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】潰れる大学、潰れない大学

2009年03月20日 08時13分37秒 | 読書記録2009
潰れる大学、潰れない大学, (編)読売新聞大阪本社, 中公新書ラクレ 51, 2002年
・自身の置かれた状況に非常に強く関連した内容を取り扱った書。大学の抱える、学力低下・経営危機などの問題点を明らかにし、少子化に端を発した大学の定員割れが頻発しだした状況に際し、日本の大学がとる生き残り策の数々を紹介する。
・紹介されるのは先進的な取り組みを行う有名大学が主で、例えば室蘭工業大学などは書中どこにも登場しません。タイトルを借りて言えば "潰れない大学" の紹介のみで "潰れる大学" の実例は無く、内容的に片手落ちの印象あり。「まっ先に潰れるダメ大学ワースト30」と題して具体的校名を挙げ、どこがダメなのかツッコミを入れていくなんて企画はいかが。
・「学生数が半分に減るなら、大学も半分に減らすべきだ」というような単純な主張があってもよさそうですが、そのような主張は見あたらず、「大学数は今のままでどうにか対応できないか」という無茶な前提の下、「潰す」という言葉には極力触れず、腫れ物にさわるような議論に終始し、「いかに大学を減らすか【「遠山プラン」(1)】」という議論が出てこないのが不思議な気がします。大学の内輪でのみの議論による弊害でしょうか。
・「国内のトップクラスの大学に合格する力がありながら、アメリカの大学を選んだ井上君らのような「若い頭脳流出」が増えている。海外留学のイメージは確実に変化している。一流大学のブランドさえも優秀な学生を引きつける力を失ってきている。学び、研究する場として日本の大学が見捨てられつつある。」p.9
・「「学ぼうとしない学生はいらない」  これが大学は教育・研究の場である、という根源的な位置付けに対する当たり前の大学側の宣言だ。普通に勉強すればクリアできるレベルなのに、それさえ怠っている粗悪品は国立大として社会に出せない、という思いがある。」p.29
・「直接的な教科の学力低下に加えて、六割以上の大学が学生の「日本語能力」の低さに戸惑っている。大学の運営でもコミュニケーション能力の低下が障害の一つになっている。読む・書く・話す。友達同士、家庭などでの日常生活を送るうえで不足はないが、高等教育を受け、高度なことを表現するのに必要な技術が欠けている。論文を読んで「君、意味が通じないよ」と指導しても、学生からは「どこがおかしいんですか。友だちは分かると言っています」という言葉が返ってくる状態だ。」p.38
・「大学や企業からは学生の学力低下を憂い、嘆く声が聞こえてくるが、教員への批判も強い。教員は自分の研究には熱心だが、教育には関心が低いという声は依然としてある。学生からプロ意識がない、使命感がない、休講が多い、授業は退屈なのに出席で学生を縛りつける、十年一日の教科書を棒読みする、論文・研究発表しないなどと、無気力、不まじめ、意地悪、マンネリ、楽勝、不勉強教授のレッテルを貼られる教授もいる。教授の中からさえ「大学教授は三日やったら辞められない」というつぶやきがもれてくるのだ。」p.66
・「「遠山プラン」と呼ばれる方針の主な内容は、次の三項目だ。
(1)国立大学の再編・統合を大胆に進める→スクラップ・アンド・ビルドで活性化
(2)国立大学に民間的発想の経営手法を導入する→新しい「国立大学法人」に早期移行
(3)大学に第三者評価による競争原理を導入する→国公私「トップ30」を世界最高水準に育成
」p.84
・「文科省は2002年1月、トップ30施策を「世界的教育研究拠点の形成のための重点的支援――21世紀COEプログラム」と変更することを決めた。「トップ30」が「大学の序列化などの誤解を招いた」という判断からだった。」p.94
・「日本の企業、大学の双方にとって産学連携のメリットは大きい。出口の見えない不況の中でリストラを余儀なくされている企業はR&Dや基礎研究に投資する余裕はなく、新製品のヒントとなる大学の成果は貴重だ。少子化で生き残りをかける大学は、成果の見返りとして競争的外部資金を受け取れる。」p.149
・「研究室の成果がビジネスに育つまでには、相当距離がある。そこで、大学と企業の間のギャップを埋めるのが役割で、実用化や量産化のための仕掛けづくり、マーケティング調査などを手掛けている。」p.151
・「しかし、これだけ大衆化が進んだときに、大学すべてが知の殿堂だと言っていられるでしょうか。大学はもはや高等大衆教育の場であることを強く認識しなければならない。」p.188
・「十年ぐらいまでの短い将来を目指すなら、大学だけじゃなくて、国立あるいは私立の研究所で十分できると思います。企業でできます。  でも、二十年先、三十年先、五十年先の学問はどうあるべきかということを考えられるというところは、私は大学しかないと思う。」p.192
・「学生と格闘する気持ちで責任を持って教えているのかと、疑問を感じる先生が私学も含めて多くの大学で70%くらいいると思う。いったん助教授とか教授になると、セクハラ事件でもない限り辞めさせられない。教え方が悪い、内容がない、研究のレベルも上がらない、という先生方をずっと教授に置く必要があるのかどうか。」p.206
・「結局のところ、私立のほうが焦りの色が強く、やれることはやろうという姿勢が見える。これに対し国立の回答には、これからもなんとか存続するだろうから、内部で比較的やりやすい改革を行なえばよいだろうという方向性が表れている。」p.244

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