19th international congress of Parkinson’s disease and movement disorder @ San Diegoに参加している.びっくりするようなgrand round(症例検討会)が行われた.Stanley Fahn,Joseph Jankovic,Andrew Lees,Eduardo Tolosa先生といった運動障害疾患の領域の,まさに第一人者の先生方の問診・診察を見ることができたのだ!それも大勢の聴衆が見守る中,実際の患者さんが壇上に現れ,リアルタイムで問診・診察・診断の過程を見せるというものであった.日本ではこのような試みは思いもつかないが,多くの神経内科医に非常に良い経験になったと思う.エキスパートの先生方の和やかな問診が印象的で,また患者さん,ご家族の医学に貢献したいという気持ちも伝わってくるようだった.以下,議論された5疾患についてまとめる.
症例1:過去に何度ももの脳手術を行っているという28歳男性.L-DOPAが有効.診断はなにか?なぜ手術を受けたのか?
→中脳のVirchow Robin腔が多房性に拡張したものが占拠性病変となり,パーキンソニズムをきたした症例.血管周囲のVirchow Robin腔の拡大は経験するが,多房性となることは稀.調べてみたところGiant tumefactive perivascular spacesと呼ばれる病態で.以下のような画像を呈する.
tumefactive perivascular spaces
症例2:有痛性振戦,頸部筋力低下,不眠を主訴とする18歳女性.発作性ジスキネジア,良性舞踏病,ジストニア,脳性麻痺,ミトコンドリア病などがこれまで鑑別に上がっていたが,診断がつかなかった.画像異常なし,筋生検異常なし.診断はなにか?
→ADCY5(adenylate cyclase 5) 遺伝子変異による,familial dyskinesia with facial myokymia (FDFM)であった.常染色体優性遺伝の疾患で,早期発症,舞踏病様,ないしジストニア様のジスキネジア,眼や口部周囲のミオキミアを呈する.ポスターでは,良性遺伝性舞踏病(BHC)でTTF-1遺伝子陰性の症例のなかに含まれているという報告があった.以下,抄録.
症例3: 46歳から片側のジストニア・パーキンソニズムが出現した66歳男性.当初L-DOPAが有効,画像上異常なし.L-DOPAの開始後5年後からジスキネジアとmotor fluctuationが出現し,7年前から増悪した.娘はDOPA-responsive dystonia,祖母は80歳代でパーキンソン病である.診断はなにか?
→GTP cyclohydrolase 1(GCH1)遺伝子保因者(pThr94Lys)であった.GCH1はチロシン水酸化酵素の補酵素で,テトラヒドロビオプテリン(BH4)の合成酵素の一つとして見つかった.GCH1遺伝子変異は中枢のドーパミン生合成低下をともなうジストニア,いわゆるdopa-responsive dystonia (DRD, DYT5 あるいは瀬川病)の原因である.ここで大事なのは,その遺伝子変異の保因者は,早発型パーキンソン病に類似するparkinsonismを呈しうるということである.近年の研究でGCH1はPDのlow risk susceptibility locusであることも分かっている.以下,参照.
症例4:脳性麻痺と診断されていた43歳女性.強い眠気とジストニアを呈した.ずっと診断がつかなかった.髄液5HIAA,HVAは著明に低下.7,8 dihydroneopterin triphosphateが増加.L-dopa投与で症状が劇的に改善した.診断はなにか?
→脳性麻痺と誤診されることの多いSepiapterin reductase欠損症.この酵素はBH4の合成酵素である.L-DOPA投与で劇的な治療効果が期待できるため見逃さずに髄液検査,遺伝子検査で診断することが重要である.以下,論文へのリンク.
症例5:バランス障害,姿勢時・運動時振戦を呈する73歳男性.進行性の小脳性運動失調(ただしspeechはほぼ正常).診断はなにか?
→Fragile X-associated tremor/ataxia syndromeである.FMR1遺伝子のCGG繰り返し配列が延長している.正常では50以下だが,FXTASでは50以上,脆弱X症候群では200以上に延長する.本例は99リピートで,頭部MRIでMCP(中小脳脚)サイン陽性,白質高信号を呈していた.
症例1:過去に何度ももの脳手術を行っているという28歳男性.L-DOPAが有効.診断はなにか?なぜ手術を受けたのか?
→中脳のVirchow Robin腔が多房性に拡張したものが占拠性病変となり,パーキンソニズムをきたした症例.血管周囲のVirchow Robin腔の拡大は経験するが,多房性となることは稀.調べてみたところGiant tumefactive perivascular spacesと呼ばれる病態で.以下のような画像を呈する.
tumefactive perivascular spaces
症例2:有痛性振戦,頸部筋力低下,不眠を主訴とする18歳女性.発作性ジスキネジア,良性舞踏病,ジストニア,脳性麻痺,ミトコンドリア病などがこれまで鑑別に上がっていたが,診断がつかなかった.画像異常なし,筋生検異常なし.診断はなにか?
→ADCY5(adenylate cyclase 5) 遺伝子変異による,familial dyskinesia with facial myokymia (FDFM)であった.常染色体優性遺伝の疾患で,早期発症,舞踏病様,ないしジストニア様のジスキネジア,眼や口部周囲のミオキミアを呈する.ポスターでは,良性遺伝性舞踏病(BHC)でTTF-1遺伝子陰性の症例のなかに含まれているという報告があった.以下,抄録.
症例3: 46歳から片側のジストニア・パーキンソニズムが出現した66歳男性.当初L-DOPAが有効,画像上異常なし.L-DOPAの開始後5年後からジスキネジアとmotor fluctuationが出現し,7年前から増悪した.娘はDOPA-responsive dystonia,祖母は80歳代でパーキンソン病である.診断はなにか?
→GTP cyclohydrolase 1(GCH1)遺伝子保因者(pThr94Lys)であった.GCH1はチロシン水酸化酵素の補酵素で,テトラヒドロビオプテリン(BH4)の合成酵素の一つとして見つかった.GCH1遺伝子変異は中枢のドーパミン生合成低下をともなうジストニア,いわゆるdopa-responsive dystonia (DRD, DYT5 あるいは瀬川病)の原因である.ここで大事なのは,その遺伝子変異の保因者は,早発型パーキンソン病に類似するparkinsonismを呈しうるということである.近年の研究でGCH1はPDのlow risk susceptibility locusであることも分かっている.以下,参照.
症例4:脳性麻痺と診断されていた43歳女性.強い眠気とジストニアを呈した.ずっと診断がつかなかった.髄液5HIAA,HVAは著明に低下.7,8 dihydroneopterin triphosphateが増加.L-dopa投与で症状が劇的に改善した.診断はなにか?
→脳性麻痺と誤診されることの多いSepiapterin reductase欠損症.この酵素はBH4の合成酵素である.L-DOPA投与で劇的な治療効果が期待できるため見逃さずに髄液検査,遺伝子検査で診断することが重要である.以下,論文へのリンク.
症例5:バランス障害,姿勢時・運動時振戦を呈する73歳男性.進行性の小脳性運動失調(ただしspeechはほぼ正常).診断はなにか?
→Fragile X-associated tremor/ataxia syndromeである.FMR1遺伝子のCGG繰り返し配列が延長している.正常では50以下だが,FXTASでは50以上,脆弱X症候群では200以上に延長する.本例は99リピートで,頭部MRIでMCP(中小脳脚)サイン陽性,白質高信号を呈していた.