神経サルコイドーシスではその5%程度に中枢神経合併症が認められる.しばしば治療が困難で,報告によってはその70%において,ステロイドや免疫抑制剤による治療に抵抗性と言われ,再発や進行性の経過をとることがある.とくにステロイドの減量中に再発するため,ステロイド治療が長期化し臨床上問題となる.新規治療法の確立が望まれている疾患のひとつである.
本症は動物モデルにおいて,肺胞マクロファージにおけるTNFα発現と肺病変の活動性に関連があることが知られ,さらにTNFαを抑制することが治療として有効であることが示唆されている.TNFαを特異的に抑制する薬剤が治療に有効と考えられるが,具体的候補としてはTNFαに対するヒトキメラ・モノクローナル抗体(インフリキシマブ;商品名レミケード)が第一に考えられる.この薬剤は本邦では,慢性関節リウマチ,クローン病,ベーチェット病の眼病変に適応があり,欧米では強直性脊椎炎,乾癬に対する治療薬としても使用されている.欧米ではリンパ球の増殖を抑制する作用がある経口免疫抑制剤ミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate mofetil;MMF)を併用するが,これには2つ理由がある.つまり,①自己抗体が産生され,治療時の急性反応や,長期的使用時の治療効果の減弱が生じることを避けること,②免疫抑制作用の併用効果を期待することである.今回,米国より神経サルコイドーシスに対するインフリキシマブとMMFの併用療法の効果が報告されたのでし紹介する.
対象は生検により診断が確定したサルコイドーシス症例のうち,中枢神経障害を伴い,かつステロイドによる治療が奏功しなかった7例である.インフリキシマブは週5 mg/kg,1回目の治療後は,2週,6週に行い,さらにその後6-8週ごとにも投与を行った.7例中6例でMMF(1,000 mg/日)内服も行った.治療効果の判定は神経症状とMRIにより行い,インフリキシマブの3-4回の投与後3か月ごとに行った.
結果としては,4回目のインフリキシマブ投与後には全例で,神経症状(頭痛,神経痛,運動・感覚・失調症状,てんかん発作など)の改善を認めた.さらに画像でも病変サイズの縮小と造影病変の抑制を認めた.この効果は病変部位や分布(硬膜vs脳実質,脳vs脊髄,単一病変vs多発病変)に関わらず認められた.6~18か月の経過観察期間ではとくに重大な副作用は認められなかった.以上より,インフリキシマブとMMFの併用療法は神経サルコイドーシスの治療として有用であると考えられた.インフリキシマブは抗体医薬のトップランナー的な薬剤である.本邦では1瓶(100mg)10万円以上する薬剤ではあるが,それでも今後さらにその適応は拡大されるものと考えられる.一方,MMFは本邦では腎移植後の難治性拒絶反応の治療など限られた場面での使用しか認められていない.
Neurology 72; 337-340, 2009
本症は動物モデルにおいて,肺胞マクロファージにおけるTNFα発現と肺病変の活動性に関連があることが知られ,さらにTNFαを抑制することが治療として有効であることが示唆されている.TNFαを特異的に抑制する薬剤が治療に有効と考えられるが,具体的候補としてはTNFαに対するヒトキメラ・モノクローナル抗体(インフリキシマブ;商品名レミケード)が第一に考えられる.この薬剤は本邦では,慢性関節リウマチ,クローン病,ベーチェット病の眼病変に適応があり,欧米では強直性脊椎炎,乾癬に対する治療薬としても使用されている.欧米ではリンパ球の増殖を抑制する作用がある経口免疫抑制剤ミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate mofetil;MMF)を併用するが,これには2つ理由がある.つまり,①自己抗体が産生され,治療時の急性反応や,長期的使用時の治療効果の減弱が生じることを避けること,②免疫抑制作用の併用効果を期待することである.今回,米国より神経サルコイドーシスに対するインフリキシマブとMMFの併用療法の効果が報告されたのでし紹介する.
対象は生検により診断が確定したサルコイドーシス症例のうち,中枢神経障害を伴い,かつステロイドによる治療が奏功しなかった7例である.インフリキシマブは週5 mg/kg,1回目の治療後は,2週,6週に行い,さらにその後6-8週ごとにも投与を行った.7例中6例でMMF(1,000 mg/日)内服も行った.治療効果の判定は神経症状とMRIにより行い,インフリキシマブの3-4回の投与後3か月ごとに行った.
結果としては,4回目のインフリキシマブ投与後には全例で,神経症状(頭痛,神経痛,運動・感覚・失調症状,てんかん発作など)の改善を認めた.さらに画像でも病変サイズの縮小と造影病変の抑制を認めた.この効果は病変部位や分布(硬膜vs脳実質,脳vs脊髄,単一病変vs多発病変)に関わらず認められた.6~18か月の経過観察期間ではとくに重大な副作用は認められなかった.以上より,インフリキシマブとMMFの併用療法は神経サルコイドーシスの治療として有用であると考えられた.インフリキシマブは抗体医薬のトップランナー的な薬剤である.本邦では1瓶(100mg)10万円以上する薬剤ではあるが,それでも今後さらにその適応は拡大されるものと考えられる.一方,MMFは本邦では腎移植後の難治性拒絶反応の治療など限られた場面での使用しか認められていない.
Neurology 72; 337-340, 2009
