Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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未視感(ジャメビュ)を訴える患者さんとノーベル賞

2020年09月10日 | 脳血管障害
回診でジャメビュ(Jamais vu;未視感)の話をしました.「見慣れた光景に親しみを感じなくなる状況」を指します.映画やドラマの題材になるデジャビュ(déjà vu既視感:初めての光景なのに以前来たことがあるような親しみを覚える)の反対の現象ですが,いずれも脳神経内科的にはてんかん性記憶障害を疑う必要があります.多くは側頭葉に焦点を持つ単純部分発作です.未視感はてんかん放電が海馬に及んで,「場所細胞(place cell)」の機能が障害されると一時的に認知地図が失われた状態になり,場所の記憶がおかしくなると考えられています.

この「場所細胞」は,1971年,英国のジョン・オキーフ博士がネズミを使った実験により,海馬にはネズミが特定の場所にいるときだけ反応する神経細胞が存在するとして,初めて報告したものです.そして「場所細胞」により空間の認知地図が脳内に作られるという説を提唱しました.脳内の空間認識をさらに研究し,グリッド(格子)細胞を発見したモーザー夫婦とともに,オキーフ博士は2014年にノーベル賞を授章されています.

文献:白河裕志.てんかん発作時の記憶障害.脳神経内科92;248-51, 2020
図は日経サイエンスより引用.


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