follow up しきれない常染色体優性遺伝性脊髄小脳変性症の報告(ついにSCA28!).若年発症し,緩徐に進行する,4世代にわたるイタリア人家系1家系(11人の罹患者)の連鎖解析が報告された.平均発症年齢は19.5歳,表現促進現象なし.初発症状は体幹失調,歩行障害.注視方向性眼振も病初期からみられる.経時的にslow saccades,眼球運動障害,眼瞼下垂が見られるようになる.8割の症例で下肢の腱反射は亢進.遺伝子診断および連鎖解析で既知のSCAは否定された.genome-wide screen analysisではchromosome 18のマーカーへの連鎖が確認された(D18S53に対しlod score 4.20).ハプロタイプ解析ではcritical regionはD18S1418,D18S1104間の7.9 Mb(18p11.22–q11.2),この領域をSCA28 locusと名づけた.原因遺伝子は未同定.
以下にSCA20番台を列挙する.
SCA20;Anglo-Celtic originの1家系.発症年齢は19~64歳(平均46.5歳).初発症状は構音障害であることが特徴的で,のちに小脳失調,錐体路徴候,palatal tremorが出現する.CTで小脳歯状核石灰化を高率に認めることも特徴的.遺伝子座(11p13-q11)はSCA5と重複し,同一疾患か今後の検討が必要(Brain. 127:1172-81, 2004).
SCA21;4世代にわたるフランス人1家系(11人の罹患者).症状はさまざまで小脳失調, akinesia,構音障害,嚥下障害,hyporeflexia,振戦,筋強剛,認知障害など.発症年齢は 6~30歳で,表現促進現象はあるかもしれないと.遺伝子座は7p21.3-p15.1.(Ann Neurol 52: 666-670, 2002).
SCA22;中国人1家系の報告だが,のちにSCA19(ドイツ人1家系)と同じ遺伝子座に連鎖することが判明.ドイツ人家系は比較的軽度の小脳失調に,認知障害,ミオクローヌス,振戦を伴っていたが,中国人家系は軽度の小脳失調のみでADCA-IIIの範疇に分類されていた.表現促進現象はあるらしい.遺伝子座は1p21-q21(Brain 127: e6, 2004).
SCA23; 3世代にわたるオランダ人1家系.発症年齢は40~60歳代.表現促進現象は不明.小脳症状と深部覚の障害,腱反射の亢進を認める.1例で剖検が行われ,プルキンエ細胞層,歯状核,下オリーブ核の神経細胞脱落と小脳橋路の菲薄化,脊髄の後索・側索の脱髄,さらに若干の黒質ニューロンにおいてubiquitin陽性核内封入体(1C2抗体陰性)を認めた.遺伝子座は20p13-12.3(Brain 127; 2551-2557, 2004).
SCA24;なぜか常染色体劣性遺伝(注;SCA#は優性遺伝にのみ付けられる).よってOMIMではSAC24ではなくspinocerebellar ataxia with saccadic intrusions (SCASI)の名称で登録されている.小脳失調,錐体路症状,ミオクローヌス,眼球運動障害,pes cavusを呈する(Ann NY Acad Sci 956: 441-444, 2002).
SCA25;フランス人1家系.小脳失調を呈さない感覚性ニューロパチータイプから,小脳失調も認めるフリードライヒ型まで症状は様々.染色体2番短腕に連鎖し,剖検組織の1C2抗体では陽性に染色される構造物はなし(Ann Neurol 55: 97-104, 2004).
SCA26;ノルウェー人1家系.緩徐進行性の純粋小脳失調.発症年齢は26~60歳.MRIは小脳の萎縮のみ.染色体19p13.3における15.55cMの領域に連鎖.この遺伝子座はCayman ataxia(Cayman Islandで認められた常染色体劣性SCD.精神運動発達遅延と小脳失調を呈する.原因遺伝子産物caytaxin)とSCA6の遺伝子座位の近傍(Ann Neurol 57: 349-354, 2005).
SCA27;fibroblast growth factor-14(FGF14)遺伝子変異(13q34)に伴うSCDがいつの間にか SCA27と名づけられていた.最初の報告は3世代にわたるドイツ人家系.現在,10家系以上の報告がある.症状は小児期に振戦にて発症し,その後,dyskinesiaと緩徐進行性の小脳失調を呈する.(Am J Hum Genet 72: 191-199, 2003).
以上.臨床的に役に立つかどうか不明(鑑別診断に上記を加えると,オタク呼ばわりされるのは間違いない).
Brain 129:235-242, 2006
以下にSCA20番台を列挙する.
SCA20;Anglo-Celtic originの1家系.発症年齢は19~64歳(平均46.5歳).初発症状は構音障害であることが特徴的で,のちに小脳失調,錐体路徴候,palatal tremorが出現する.CTで小脳歯状核石灰化を高率に認めることも特徴的.遺伝子座(11p13-q11)はSCA5と重複し,同一疾患か今後の検討が必要(Brain. 127:1172-81, 2004).
SCA21;4世代にわたるフランス人1家系(11人の罹患者).症状はさまざまで小脳失調, akinesia,構音障害,嚥下障害,hyporeflexia,振戦,筋強剛,認知障害など.発症年齢は 6~30歳で,表現促進現象はあるかもしれないと.遺伝子座は7p21.3-p15.1.(Ann Neurol 52: 666-670, 2002).
SCA22;中国人1家系の報告だが,のちにSCA19(ドイツ人1家系)と同じ遺伝子座に連鎖することが判明.ドイツ人家系は比較的軽度の小脳失調に,認知障害,ミオクローヌス,振戦を伴っていたが,中国人家系は軽度の小脳失調のみでADCA-IIIの範疇に分類されていた.表現促進現象はあるらしい.遺伝子座は1p21-q21(Brain 127: e6, 2004).
SCA23; 3世代にわたるオランダ人1家系.発症年齢は40~60歳代.表現促進現象は不明.小脳症状と深部覚の障害,腱反射の亢進を認める.1例で剖検が行われ,プルキンエ細胞層,歯状核,下オリーブ核の神経細胞脱落と小脳橋路の菲薄化,脊髄の後索・側索の脱髄,さらに若干の黒質ニューロンにおいてubiquitin陽性核内封入体(1C2抗体陰性)を認めた.遺伝子座は20p13-12.3(Brain 127; 2551-2557, 2004).
SCA24;なぜか常染色体劣性遺伝(注;SCA#は優性遺伝にのみ付けられる).よってOMIMではSAC24ではなくspinocerebellar ataxia with saccadic intrusions (SCASI)の名称で登録されている.小脳失調,錐体路症状,ミオクローヌス,眼球運動障害,pes cavusを呈する(Ann NY Acad Sci 956: 441-444, 2002).
SCA25;フランス人1家系.小脳失調を呈さない感覚性ニューロパチータイプから,小脳失調も認めるフリードライヒ型まで症状は様々.染色体2番短腕に連鎖し,剖検組織の1C2抗体では陽性に染色される構造物はなし(Ann Neurol 55: 97-104, 2004).
SCA26;ノルウェー人1家系.緩徐進行性の純粋小脳失調.発症年齢は26~60歳.MRIは小脳の萎縮のみ.染色体19p13.3における15.55cMの領域に連鎖.この遺伝子座はCayman ataxia(Cayman Islandで認められた常染色体劣性SCD.精神運動発達遅延と小脳失調を呈する.原因遺伝子産物caytaxin)とSCA6の遺伝子座位の近傍(Ann Neurol 57: 349-354, 2005).
SCA27;fibroblast growth factor-14(FGF14)遺伝子変異(13q34)に伴うSCDがいつの間にか SCA27と名づけられていた.最初の報告は3世代にわたるドイツ人家系.現在,10家系以上の報告がある.症状は小児期に振戦にて発症し,その後,dyskinesiaと緩徐進行性の小脳失調を呈する.(Am J Hum Genet 72: 191-199, 2003).
以上.臨床的に役に立つかどうか不明(鑑別診断に上記を加えると,オタク呼ばわりされるのは間違いない).
Brain 129:235-242, 2006
かなり緩やかな進行、症状からは似通う症例がなく、
遺伝子検査は出来ないままでいます。
SCDの型は、今や20以上あるそうですが、
その中のどれ一つとして,当てはまりそうなものが無いとのことです。
劣性遺伝の弧発性ではないだろうか???程度です・・・
数日前、SBMA掲示板から来ました。
とても詳しく興味深い内容に感謝しております。私のblogにて、リンク集に貼り付けさせていただいてよろしいでしょうか?!
SCDの病型に関する記事については,私が尊敬する神経内科の先生からもコメントをいただきましたが,分子遺伝学が進歩した現在も,診断がつかずに困っている患者さん,主治医が少なからずいらっしゃいます.確かに20種類を超す優性遺伝性のSCDの存在が明らかになったのですが,遺伝子座(遺伝子の存在する場所)は分かっても,遺伝子そのものが分からないと遺伝子診断を行うことはきわめて困難です(ご家族の中に何人ものご病気の方がおられる場合にのみ,家族内の複数の遺伝子解析の結果を総合して検討する「連鎖解析」という方法を用いて,病気の可能性を調べることはできます).ですから今回取り上げたSCA 20番台でも現実的に遺伝子診断できそうなものは,原因遺伝子が判明しているSCA27のみとなってしまいます.
ただSCDの診療に取り組む神経内科医師,または遺伝子の解明に取り組む医師には執念深い人が多いので(個人的な印象ですが),多くの場合,遺伝子座の判明後,原因遺伝子が明らかにされています.例えば,2005年8月6日に取り上げた16q22.1-linked ADCAという病型の遺伝性SCDの原因遺伝子は東京医科歯科大の神経内科医グループが明らかにしましたが,その苦労,執念は凄まじいものでした. SCDの病気のメカニズムの研究や治療法に関する研究は間違いなく進歩していると考えております.
ブログも拝見させていただきました.どうもありがとうございました.
私は気圧により大きく自律神経症状が左右されてしまうもので、
暮れからは数日寝込んでしまっており、
お礼が遅くなり、スミマセンでした。
確かに、専門的な内容なので難しいですが、
私は副作用が出やすい体質で、
昨年インフルエンザ罹患時に服用したタミフルの副作用でヒドイ目に遭ってしまったりして、
医学的な正しい知識は、いつもアンテナを張って得たいものだと思っている者です。
私も日頃から眼振の強弱の波もスゴイので、ここ数日は全く目を明けていられないほどでしたが、
ゆっくりと拝読させていただきたいと思います。
ありがとうございました。
父が小脳変性症を発症して4年が経っています。53歳でHolmes型と診断されました。
父方の祖母も発症しており、父の症状が出てすぐに気づくことができました。祖母は発症してから10年過ぎた頃から5年ほど寝たきりとなっています。
父方のいとこも50歳後半で発症しているので家系的に多いのだと思います。
祖母はオリーブ橋との診断だったそうですが、家族で遺伝性が高いように思いますが型が違うこともあるのでしょうか。ちなみに祖母の妹も発症しています。
確かに症状はみな違っていますのでそれが診断の違いだとは思います。
父の症状は、特に眼振とそれに伴う首の揺れです。揺れというより引きつっているように見えます。左首の筋肉が過度に収縮しているのか右側が弛緩しているのかわかりませんが左へぐぅっと引っ張られているので常時力を込めて前向きに直しているようです。なぜか首の後ろのでっぱり(首と肩の境目)を押さえるようにたすきがけをすると左に傾かず揺れも治まります。不思議・・・。
運動失調は歩行に杖が必要でよろよろしているくらいです。
運動失調ということでセレジストを服用しています。
肩や首の緊張を訴えるとデパスが朝夕で処方されました。
痙攣とまではいかないでしょうか。パーキンソンの症状もでていないでしょうか。治験に協力したいから何か治る薬を・・とどなたも考えているでしょうが魔法の薬を求めています。
進行は緩徐なのでしょうか。
長々とすみません。勉強不足なので疑問ばかりです。先生のブログで勉強したいと思います。
本を購入してみます。ありがとうございました。