Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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クリスマス企画「芸術家と神経学」(Brain Nerve誌)

2021年11月28日 | 医学と医療
12月号の特集は「芸術家と神経学」です!私は大好きなゴッホについて思い入れたっぷりに執筆しました(表紙もクリスマスらしいゴッホです).ゴッホを苦しめた病気は一体何なのか?ゴッホを支えた医師とは?そして彼の作品が人々を惹きつけるものは何なのか?について書きました.あとがきにも書きましたが,本当にオススメの一冊になりました.ぜひ手にとっていただければと思います.以下,目次とあとがきです. 

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◆ショスタコーヴィチの右手麻痺(神田 隆)
◆マルセル・プルースト――『失われた時を求めて』と記憶・時間の神経学の誕生(河村 満 他)
◆ベートーヴェンの病跡と芸術(酒井邦嘉)
◆ファン・ゴッホの病跡学と病気の絵画への影響(下畑享良)
◆エゴン・シーレとジストニア(髙尾昌樹)
◆卓越した絵画能力を支える脳基盤(三村 將)
◆脳科学の視点で読むドストエフスキーとポリフォニー(虫明 元)
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【あとがき】
2021年最後の特集として「芸術家と神経学」をお届けする.本特集は,編集会議において,年に1回,クリスマス企画として,編集委員自身が書きたいものを書く機会があっても良いのではないか,そうすれば各編集委員のひととなりを読者に知っていただけるのではないかとのアイデアが出て,企画されたものである.具体的なテーマとしては,各自が紹介したい「芸術家と神経学の関わり」を執筆するのが良いだろうということになった.私は大好きなゴッホについて,愉しみながら書かせていただいた.

あとがきを書くために,いち早く,すべての原稿を拝読したが,本当に面白く,あっという間に読み終えた.さまざまなことを感じたが,まず各編集委員のそれぞれの芸術家や作品に対する深い愛情を感じた.そして優れた文学,音楽,美術といった芸術と神経学には深い関わりが生じ得ること,つまり神経疾患を患った芸術家において,その疾患は芸術家やその作品に大きな影響を及ぼす一方,反対にその芸術家や作品がのちの神経学に影響を与える事例も数多くあることが分かり,大変興味深かった.また偉大な芸術のそばには主治医として脳神経内科医がいて,芸術家やその作品に少なからぬ影響を与えていたことも分かった.

本特集号は一般の人を含めた多くの方々に読んでいただきたいと思うが,個人的にはとくに若い神経内科医に読んでいただきたい.若いうちは,ともすると自分が取り組んだり研究したりする神経学の一部分ばかり追い求めたりしてしまうが,神経学は幅広く広大で,深く人間と関わるものであることが今回の特集からもご理解いただけるのではないかと思う.そこには脳神経内科医としての人間性を成長させるヒントがあるように思う.昨今,理系の教育において,科学的な面ばかり追求するSTEM教育(Science,Technology,Engineering,Mathematics)では収束思考に陥りがちだが,そこにArts(芸術や人文科学を含むリベラルアーツ)を加えたSTEAM教育では,思考が拡張して創造的な発想が生まれると言われている.医学の中でArtsと特に関わり合いの深い領域が神経学なのではないかと思う.ぜひ編集委員からのクリスマスプレゼントを受け取っていただき,芸術作品と神経学をより一層,愉しんでいただきたいと思う.


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