Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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哲学を通した「幸せ」の追求を@「医師こそリベラルアーツ!」連載第8回

2024年12月27日 | 医学と医療
「医師こそリベラルアーツ!」の連載第8回が,日経メディカル「Cadetto.jp」にて公開されました(https://tinyurl.com/26a33w8e).いままで岐阜大学にて31回のリベラルアーツ研究会を開催しましたが,各回で行なった私のミニレクチャーを紙面で再現する企画です.

医師はその忙しさから,自分自身の人生や「幸せ」について深く考える機会を失いがちです.しかしそのような中でも,哲学を学ぶことによって,生きる意味や幸せとは何かを問い直すことは,患者さんを理解し,自身の医療者としての役割を再確認する上でも役に立ちます.今回は,日本を代表する哲学者・三木清の著書『人生論ノート』を課題図書とし,医療者が「幸せ」を追求する意義を考えてみました.

三木清(1897-1945)の『人生論ノート』は,死,虚栄,孤独,嫉妬,成功など,誰もが一度は悩む人生のテーマを取り上げたエッセイ集であり,戦時下の厳しい言論弾圧の中で執筆されました.本書では,「幸福」を中心テーマに据え,個人の幸せが社会にとっていかに重要であるかを強調しています.三木清は,「成功」と「幸福」は異なるものであると説いています.成功は外部の評価や条件に左右される一方で,幸福は内面的な充実や自己の価値観に基づくものであり,自らの生き方次第で得られるものです.幸福を追求することなく成功ばかりを追い求めると,他者や社会にコントロールされる危険性があると警鐘を鳴らしています.



三木清の考えをさらに深めるため,19世紀の哲学者たちによる「三大幸福論」にも触れました.スイスのカール・ヒルティは「不幸を経験することで得られる使命感」が幸福につながると述べ,フランスのアランは「楽観的に行動することの重要性」を説きました.また,イギリスのバートランド・ラッセルは「他者や社会とのつながりが幸福に欠かせない」とし,人生の目的と仕事の一致を幸福の条件として挙げています.皆さんの「幸せ」とは何でしょうか.一度,哲学的な視点から考えてみてはいかがでしょうか.



次回は,隠岐さや香著『文系と理系はなぜ分かれたのか』を題材に,理系の人々にも必要な「文系とアートの力」について考察したいと思います.

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