今回のキーワードは,南アフリカのオミクロン株感染の特徴は,若年者や併存疾患の少ない人の感染,入院や急性呼吸器症状の少なさ,重症度と死亡率の低下である,ファイザーワクチンのオミクロン株に対する予防効果はデルタ株より低下するものの70%と維持されている,ファイザー社の経口抗ウイルス薬パクスリモドの前臨床試験~第1相臨床試験の報告,COVID-19の重症化にCD16+T細胞と補体活性化が関与する,COVID-19感染を併発する虚血性脳卒中は多領域病変が多く,機能的転帰は悪化する,パンデミック禍の運動異常症に関するnarrative reviewです.
明けましておめでとうございます.オミクロン株感染が徐々に増加する年明けですが,悪いことばかりではなく,いくつかの光明も見えます.①オミクロン株に対するファイザーワクチンは,報道されたように中和抗体価は大幅に低下するものの,実臨床における入院予防効果は比較的保たれており,ブースター接種でさらに改善しうること,②米国で先月末,緊急使用許可を取得したパクスリモドなど複数の経口抗ウイルス薬が登場し,外来診療が行いやすくなること,③重症化やlong COVIDにおけるT細胞の役割が明らかになりつつあり,今後,病態機序を理解したうえでの治療が可能になることです.明るく頑張っていきたいと思います.
◆南アフリカ第4波でのオミクロン株感染の特徴は,若年者や併存疾患の少ない人の感染,入院や急性呼吸器症状の少なさ,重症度と死亡率の低下である.
2021年11月24日,南アフリカでは第4波として,オミクロン株(B.1.1.529)が確認された.第4波におけるCOVID-19入院患者を過去の3波(オリジナル,ベータ株,デルタ株)と比較した研究が報告された.第1~3波では救急外来を受診した患者の68~69%が入院したのに対し,第4波では41.3%であった(図1).第4波で入院した患者は若く(中央値36歳,第3波では59歳,P < 0.001),女性の割合が高かった.また併存疾患のない患者の入院が多く,急性呼吸器症状で入院した患者の割合も低かった(第4波では31.6%,第3波では91.2%,P < 0.001).第4波で入院した971人のうち,ワクチン接種を受けていたのは24.2%,未接種は66.4%で,不明が9.4%だった.第4波では酸素吸入を要する患者の割合も低かった(第4波で17.6%,第3波で74%,P < 0.001)(図1).ICU入室は,第4波で18.5%,第3波で29.9%であった(P < 0.001).入院期間の中央値は,第4波では3日,第1~3波では8~9日であった.死亡率は,第1波で19.7%,第2波で25.5%,第3波で29.1%であったが,第4波では2.7%に減少した.以上より第4波は過去と異なるパターンで,入院は少ないものの,若年層や併存疾患が少ない人の入院がみられ,急性呼吸器症状が少なく,重症度と死亡率も低下していた.この違いがワクチンや感染による免疫の影響なのか,あるいはオミクロン株が以前の変異株よりも病原性が低いのかは不明である(ちなみに2021年12月時点で,南アフリカ成人の44.3%がワクチン接種を受けており,人口の50%以上がウイルス感染した経験がある).
JAMA. Dec 30, 2021.(doi.org/10.1001/jama.2021.24868)
◆ファイザーワクチンのオミクロン株に対する予防効果はデルタ株より低下するものの70%と維持されている.
ウイルス中和アッセイでは,オミクロン株はファイザーワクチンによる抗体中和から免れることが示されているが,実臨床で,オミクロン株に対するワクチンの入院予防効果に関するデータが求められる.南アフリカの保険会社Discovery Healthのデータを用いて,ファイザーワクチン2回接種(完全ワクチン状態)の入院に対する予防効果を推定する研究が報告された.具体的には,完全ワクチン状態の会員を対象に,オミクロン株が優位の期間(11月15日~12月7日;オミクロン代理期間)におけるオミクロン株に関連した入院に対するワクチンの効果と,デルタ株が優位であった9月1日~10月30日までの期間(比較期間)におけるワクチンの効果を比較した.オミクロン代理期間のワクチン効果は70%であり,デルタ株が主体であった比較期間の93%より低下したものの維持されていた.著者らはブースター接種を追加することで,このようなワクチン効果の低下を軽減できる可能性があると述べている.
New Engl J Med. Dec 29, 2021.(doi.org/10.1056/NEJMc2119270)
◆ファイザー社の経口抗ウイルス薬パクスリモドの前臨床試験~第1相臨床試験の報告.
パンデミックに対してワクチンの開発が大きな効果をもたらしたものの,世界的に見てワクチンへのアクセスに課題がある.またブレークスルー感染が発生し,新たな変異株が出現するリスクがある.よってCOVID-19の治療として抗ウイルス剤,特に経口薬の開発が不可欠である.臨床試験中のいくつかの薬剤候補は,ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼに対して作用するが,薬剤による阻害の良い標的と考えられてきた他のウイルス酵素がある.Science誌に,in vitroで汎ヒトコロナウイルス活性を有し,in vivoで優れた標的外選択性と安全性プロファイルを有する経口投与可能なSARS-CoV-2主要プロテアーゼ(Mpro)阻害剤PF-07321332(パクスリモド)について報告された.この薬剤,PF-07321332は経口投与が可能で,優れた選択性と安全性プロファイルを有し,マウスモデルにおいて感染から保護されることが確認された.第1相臨床試験では,in vitro試験に基づいてウイルスを阻害すると予想される血中濃度(EC90;ウイルスの複製を90%低下させる濃度)に到達した(図2).ただしCYP3A4により分解されることからCYP3A4阻害剤と知られるHIV治療薬リトナビルを併用することで,パクスリモドの効果を高めている.また,COVID-19のみでなく,SARSおよびMERSなど,他のコロナウイルスも阻害し,将来のウイルスの脅威に対する武器になる可能性がある.ちなみに12月22日に米国で緊急使用許可を取得した.塩野義製薬のMpro阻害剤も治験中であり,パクスリモドとともに期待される.
Science 374;1586-1593, 2021.(doi.org/10.1126/science.abl4784)
◆COVID-19の重症化にCD16+T細胞と補体活性化が関与する.
COVID-19の重症化において,T細胞がどのような関与をしているのかについては不明である.ドイツから,シングルセル・トランスクリプトミクスとプロテオミクスを組み合わせて,T細胞の機能と誘導シグナルを評価した研究が報告された.重症のCOVID-19では,活性化された細胞傷害性の強いCD16+T細胞が特徴として認められることが分かった.CD16(Fcγ受容体IIIA/IIIB)の発現は,インフルエンザ感染や肝炎などの他の疾患では見られない,免疫複合体を介した,T細胞受容体に依存しない脱顆粒と細胞傷害性をもたらした.この重症COVID-19患者に認めるCD16+T細胞は,肺胞上皮細胞や微小血管内皮細胞の傷害を促進し,好中球および単球の化学誘引物質放出をもたらした.CD16+T細胞のクローンは,急性期以降もその細胞傷害性の表現型を維持していた.また重症化したCOVID-19では,補体C3aの生成が増加し,このC3aリッチな環境はCD16+ T細胞の細胞傷害性を促進した.さらに活性化したCD16+ T細胞の割合と,C3aの上流にある補体の血漿レベルは,COVID-19の致死的転帰と関連していた(図3).→ 重症化における補体の関与は過去にも報告され,補体を標的とした臨床試験も進行中である.本研究は急性期の病態として,CD16+T細胞の重要性を示したことに加えて,long COVIDの病態にも関与する可能性を示した点で重要と言える.
Cell. Dec 28, 2021.(doi.org/10.1016/j.cell.2021.12.040)
◆COVID-19感染を併発する虚血性脳卒中は多領域病変が多く,cryptogenic strokeは少なく,機能的転帰は悪化する.
スイス脳卒中登録(SSR)から,COVID-19の第1波(2020年2月25日~6月8日)に脳卒中センターに入院した18歳以上の虚血性脳卒中患者全例を対象とした.調査期間中にSSRに登録された虚血性脳卒中患者2341人のうち,36人(1.5%)にCOVID-19の感染が認められ,うち33人は脳卒中発症の前後1カ月以内に感染していた.多変量解析では,COVID-19感染患者は,複数の血管領域に病変を持つ患者が多く(OR 2.35,p=0.032),cryptogenic strokeが少なかった(OR 0.37,p=0.049).8人(24%)の患者でCOVID-19が脳卒中の主原因である可能性が高く,12人(36%)では寄与因子・誘発因子となり,13人(40%)では脳卒中に関与していない可能性が高いと判断された.COVID-19感染を認めた患者の機能的転帰(modified Rankin Scale)は,年齢,脳卒中の重症度,血行再建治療について調整した後も,強い影響が確認された(PSで調整したオッズ比1.85,p = 0.07)(図4).以上より,全国規模の解析では,COVID-19と虚血性脳卒中の併発は比較的まれであった.感染を認める場合,多領域病変が多く,cryptogenic strokeは少なかったが,3ヵ月間の機能的転帰は悪化する傾向にあった.
Eur J Neurol. Nov 30, 2021.(doi.org/10.1111/ene.15199)
◆パンデミック禍の運動異常症に関するnarrative review.
Eur J Neurol誌にCOVID-19パンデミック禍と運動異常症の分かりやすいnarrative reviewが発表されている.以下の3点を述べている.①COVID-19の急性期に出現する運動異常症には様々なものがあるが,最も多いものはミオクローヌスで,文献上,50名以上の患者が記載されている.自然に,もしくは免疫療法により消失し,持続期間は数日から2ヶ月である.また新規発症パーキンソニズム,舞踏運動,機能性運動異常症も報告された.パーキンソニズムについてはスペイン風邪や嗜眠性脳炎と同様のヒットアンドラン・メカニズム(不顕性症状を呈する可能性のあるウイルスに早期に暴露すると,通常は病的変化を引き起こさない後続の刺激に対して,中枢神経が反応し,パーキンソニズムを呈するという機序)により今後,発症しうる懸念がある.機能性運動異常症は,若年者におけるSNSを介して伝播するチック様行動が多い.②COVID-19ワクチン接種後の副反応としての運動異常症は稀であり,使用した0.002~0.02%の頻度で発生し,主に振戦が報告された.③パンデミックは,既存の運動障害症候群を持つ患者にも影響を与えており,症状や全体的な幸福感の増悪と,治療薬や医療へのアクセスの障害をもたらした.その一方で,パンデミックは新しいデジタルソリューションの開発を含む医療システムの再編成をもたらした.
Eur J Neurol. Dec 16, 2021.(doi.org/10.1111/ene.15217)
明けましておめでとうございます.オミクロン株感染が徐々に増加する年明けですが,悪いことばかりではなく,いくつかの光明も見えます.①オミクロン株に対するファイザーワクチンは,報道されたように中和抗体価は大幅に低下するものの,実臨床における入院予防効果は比較的保たれており,ブースター接種でさらに改善しうること,②米国で先月末,緊急使用許可を取得したパクスリモドなど複数の経口抗ウイルス薬が登場し,外来診療が行いやすくなること,③重症化やlong COVIDにおけるT細胞の役割が明らかになりつつあり,今後,病態機序を理解したうえでの治療が可能になることです.明るく頑張っていきたいと思います.
◆南アフリカ第4波でのオミクロン株感染の特徴は,若年者や併存疾患の少ない人の感染,入院や急性呼吸器症状の少なさ,重症度と死亡率の低下である.
2021年11月24日,南アフリカでは第4波として,オミクロン株(B.1.1.529)が確認された.第4波におけるCOVID-19入院患者を過去の3波(オリジナル,ベータ株,デルタ株)と比較した研究が報告された.第1~3波では救急外来を受診した患者の68~69%が入院したのに対し,第4波では41.3%であった(図1).第4波で入院した患者は若く(中央値36歳,第3波では59歳,P < 0.001),女性の割合が高かった.また併存疾患のない患者の入院が多く,急性呼吸器症状で入院した患者の割合も低かった(第4波では31.6%,第3波では91.2%,P < 0.001).第4波で入院した971人のうち,ワクチン接種を受けていたのは24.2%,未接種は66.4%で,不明が9.4%だった.第4波では酸素吸入を要する患者の割合も低かった(第4波で17.6%,第3波で74%,P < 0.001)(図1).ICU入室は,第4波で18.5%,第3波で29.9%であった(P < 0.001).入院期間の中央値は,第4波では3日,第1~3波では8~9日であった.死亡率は,第1波で19.7%,第2波で25.5%,第3波で29.1%であったが,第4波では2.7%に減少した.以上より第4波は過去と異なるパターンで,入院は少ないものの,若年層や併存疾患が少ない人の入院がみられ,急性呼吸器症状が少なく,重症度と死亡率も低下していた.この違いがワクチンや感染による免疫の影響なのか,あるいはオミクロン株が以前の変異株よりも病原性が低いのかは不明である(ちなみに2021年12月時点で,南アフリカ成人の44.3%がワクチン接種を受けており,人口の50%以上がウイルス感染した経験がある).
JAMA. Dec 30, 2021.(doi.org/10.1001/jama.2021.24868)
◆ファイザーワクチンのオミクロン株に対する予防効果はデルタ株より低下するものの70%と維持されている.
ウイルス中和アッセイでは,オミクロン株はファイザーワクチンによる抗体中和から免れることが示されているが,実臨床で,オミクロン株に対するワクチンの入院予防効果に関するデータが求められる.南アフリカの保険会社Discovery Healthのデータを用いて,ファイザーワクチン2回接種(完全ワクチン状態)の入院に対する予防効果を推定する研究が報告された.具体的には,完全ワクチン状態の会員を対象に,オミクロン株が優位の期間(11月15日~12月7日;オミクロン代理期間)におけるオミクロン株に関連した入院に対するワクチンの効果と,デルタ株が優位であった9月1日~10月30日までの期間(比較期間)におけるワクチンの効果を比較した.オミクロン代理期間のワクチン効果は70%であり,デルタ株が主体であった比較期間の93%より低下したものの維持されていた.著者らはブースター接種を追加することで,このようなワクチン効果の低下を軽減できる可能性があると述べている.
New Engl J Med. Dec 29, 2021.(doi.org/10.1056/NEJMc2119270)
◆ファイザー社の経口抗ウイルス薬パクスリモドの前臨床試験~第1相臨床試験の報告.
パンデミックに対してワクチンの開発が大きな効果をもたらしたものの,世界的に見てワクチンへのアクセスに課題がある.またブレークスルー感染が発生し,新たな変異株が出現するリスクがある.よってCOVID-19の治療として抗ウイルス剤,特に経口薬の開発が不可欠である.臨床試験中のいくつかの薬剤候補は,ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼに対して作用するが,薬剤による阻害の良い標的と考えられてきた他のウイルス酵素がある.Science誌に,in vitroで汎ヒトコロナウイルス活性を有し,in vivoで優れた標的外選択性と安全性プロファイルを有する経口投与可能なSARS-CoV-2主要プロテアーゼ(Mpro)阻害剤PF-07321332(パクスリモド)について報告された.この薬剤,PF-07321332は経口投与が可能で,優れた選択性と安全性プロファイルを有し,マウスモデルにおいて感染から保護されることが確認された.第1相臨床試験では,in vitro試験に基づいてウイルスを阻害すると予想される血中濃度(EC90;ウイルスの複製を90%低下させる濃度)に到達した(図2).ただしCYP3A4により分解されることからCYP3A4阻害剤と知られるHIV治療薬リトナビルを併用することで,パクスリモドの効果を高めている.また,COVID-19のみでなく,SARSおよびMERSなど,他のコロナウイルスも阻害し,将来のウイルスの脅威に対する武器になる可能性がある.ちなみに12月22日に米国で緊急使用許可を取得した.塩野義製薬のMpro阻害剤も治験中であり,パクスリモドとともに期待される.
Science 374;1586-1593, 2021.(doi.org/10.1126/science.abl4784)
◆COVID-19の重症化にCD16+T細胞と補体活性化が関与する.
COVID-19の重症化において,T細胞がどのような関与をしているのかについては不明である.ドイツから,シングルセル・トランスクリプトミクスとプロテオミクスを組み合わせて,T細胞の機能と誘導シグナルを評価した研究が報告された.重症のCOVID-19では,活性化された細胞傷害性の強いCD16+T細胞が特徴として認められることが分かった.CD16(Fcγ受容体IIIA/IIIB)の発現は,インフルエンザ感染や肝炎などの他の疾患では見られない,免疫複合体を介した,T細胞受容体に依存しない脱顆粒と細胞傷害性をもたらした.この重症COVID-19患者に認めるCD16+T細胞は,肺胞上皮細胞や微小血管内皮細胞の傷害を促進し,好中球および単球の化学誘引物質放出をもたらした.CD16+T細胞のクローンは,急性期以降もその細胞傷害性の表現型を維持していた.また重症化したCOVID-19では,補体C3aの生成が増加し,このC3aリッチな環境はCD16+ T細胞の細胞傷害性を促進した.さらに活性化したCD16+ T細胞の割合と,C3aの上流にある補体の血漿レベルは,COVID-19の致死的転帰と関連していた(図3).→ 重症化における補体の関与は過去にも報告され,補体を標的とした臨床試験も進行中である.本研究は急性期の病態として,CD16+T細胞の重要性を示したことに加えて,long COVIDの病態にも関与する可能性を示した点で重要と言える.
Cell. Dec 28, 2021.(doi.org/10.1016/j.cell.2021.12.040)
◆COVID-19感染を併発する虚血性脳卒中は多領域病変が多く,cryptogenic strokeは少なく,機能的転帰は悪化する.
スイス脳卒中登録(SSR)から,COVID-19の第1波(2020年2月25日~6月8日)に脳卒中センターに入院した18歳以上の虚血性脳卒中患者全例を対象とした.調査期間中にSSRに登録された虚血性脳卒中患者2341人のうち,36人(1.5%)にCOVID-19の感染が認められ,うち33人は脳卒中発症の前後1カ月以内に感染していた.多変量解析では,COVID-19感染患者は,複数の血管領域に病変を持つ患者が多く(OR 2.35,p=0.032),cryptogenic strokeが少なかった(OR 0.37,p=0.049).8人(24%)の患者でCOVID-19が脳卒中の主原因である可能性が高く,12人(36%)では寄与因子・誘発因子となり,13人(40%)では脳卒中に関与していない可能性が高いと判断された.COVID-19感染を認めた患者の機能的転帰(modified Rankin Scale)は,年齢,脳卒中の重症度,血行再建治療について調整した後も,強い影響が確認された(PSで調整したオッズ比1.85,p = 0.07)(図4).以上より,全国規模の解析では,COVID-19と虚血性脳卒中の併発は比較的まれであった.感染を認める場合,多領域病変が多く,cryptogenic strokeは少なかったが,3ヵ月間の機能的転帰は悪化する傾向にあった.
Eur J Neurol. Nov 30, 2021.(doi.org/10.1111/ene.15199)
◆パンデミック禍の運動異常症に関するnarrative review.
Eur J Neurol誌にCOVID-19パンデミック禍と運動異常症の分かりやすいnarrative reviewが発表されている.以下の3点を述べている.①COVID-19の急性期に出現する運動異常症には様々なものがあるが,最も多いものはミオクローヌスで,文献上,50名以上の患者が記載されている.自然に,もしくは免疫療法により消失し,持続期間は数日から2ヶ月である.また新規発症パーキンソニズム,舞踏運動,機能性運動異常症も報告された.パーキンソニズムについてはスペイン風邪や嗜眠性脳炎と同様のヒットアンドラン・メカニズム(不顕性症状を呈する可能性のあるウイルスに早期に暴露すると,通常は病的変化を引き起こさない後続の刺激に対して,中枢神経が反応し,パーキンソニズムを呈するという機序)により今後,発症しうる懸念がある.機能性運動異常症は,若年者におけるSNSを介して伝播するチック様行動が多い.②COVID-19ワクチン接種後の副反応としての運動異常症は稀であり,使用した0.002~0.02%の頻度で発生し,主に振戦が報告された.③パンデミックは,既存の運動障害症候群を持つ患者にも影響を与えており,症状や全体的な幸福感の増悪と,治療薬や医療へのアクセスの障害をもたらした.その一方で,パンデミックは新しいデジタルソリューションの開発を含む医療システムの再編成をもたらした.
Eur J Neurol. Dec 16, 2021.(doi.org/10.1111/ene.15217)