アンサンブル・ド・ミューズ ニュースレター

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辻井信行さんのピアノ…♪

2022-05-09 08:58:37 | Weblog
エスコート役の男性とともに下手袖から登場したピアニスト辻井信行さん。
ピアノの前の椅子に腰を下ろすとそっと鍵盤を確かめてから躊躇なく演奏を始めました。
ドビュッシー作曲の『こどもの領分』から、第1曲<グラドゥス・アド・パルナッスム博士>、第2曲<象の子守歌>、第3曲<人形へのセレナード>、第6曲<ゴリウォーグのケークウォーク>を。
テレビのスピーカーを通してではあるんですけど、本当に曇りのない音なんですよね。
昨日21:00~NHK Eテレで辻井信行さんの特集が放送され、これまでの大まかな足跡と演奏、サントリーホールでのコンサートを収録ノーカットで。
次に演奏されたのは演奏会用組曲『くるみ割り人形』でした。
序曲、 金平糖の踊り、 タランテラ、 間奏曲、 トレパーク、 中国の踊り、 アンダンテ・マエストーソ の7曲。
一人のピアニストが1台のピアノで演奏しているその音の世界は、オーケストラに匹敵するほどの豊かさ、華やかさに満ちています
チャイコフスキー作曲の原曲はバレエ音楽ですからもちろん踊れる音楽ですが、こちらは聞いて楽しむための音楽ですね、踊れそうにありません。
ただ、 中国の踊りにはちょっと気持ちを揺さぶられたなぁ。
原曲はピッコロによる速いテンポでノリのいい演奏が特徴で、踊りの方も超絶技巧とまではいかないにしてもダンサーの身体能力の発揮しどころといった振り付けですが、この演奏会用組曲の中国の踊りは少しゆっくり目のテンポで柔らかな感じです…、いいなぁ、振り付けしてみたぁいって思っちゃいました
それから辻井さんが大震災後の東北の地との関わりを大切にしてこられたことやご自身が作曲された『それでも、生きてゆく』が紹介されたり。
最後に今年2月24日のサントリーホールでのコンサートではショパンのピアノ・ソナタ3番を演奏されました。
先にも言いましたけど、演奏を始めるときに躊躇いとか溜めとかがないんですよね、深呼吸したり指を温めるような仕草をしたりその他諸々、ピアニストそれぞれのルーティーンになっているであろうような、間(=ま)を作るということがない、腰を下ろして鍵盤をちょっと確認して、そのままスン…と演奏に入っていく。
そして、演奏を終えてからも辻井さんはさっさと腰を上げる。
鍵盤から離した指や手が束の間空間を漂ったりポーズになったりすることもないし、音の余韻を追っているような表情を見せることもない、最後の音を送り出して指を離したらすぐ立つって感じです。
始める前に躊躇なく終われば一切の未練なし、ってことなのかしら。
で、そのショパンのソナタですけど、なんてキレイな音なんだろうって思いました。
磨き抜かれたダイヤモンドのように濁りがない、それでいて他者を排するような冷たさがない、繊細でありながら剛毅、静謐でありながら躍動的。
そして事件が起こりました、演奏中にスタインウェイのピアノの弦が切れて弾けた
テレビを通して聴いている分には分からなかったけど、鳴らない音をどう解釈して演奏されたんだろう、動じることなく演奏を続ける辻井さん
ただもう言えることは一つだけ、素晴らしかった
アンコール曲はドビュッシーの亜麻色の髪の乙女、ショパンのエチュード25の12、最後がシューマンのトロイメライでした。
トロイメライを演奏する前に
弦が切れてビックリさせてごめんなさい
という辻井さんの一言があり、演奏を終わって腰を上げエスコート役の腕に掴まる前に鍵盤の蓋を閉じるというお茶目な振る舞いも
あ~、辻井さんの<ラプソディ・イン・ブルー>聴きたいなぁぁぁ…
コメント
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