カフカをハネケが映画化する。ナレーションを多用して、原作を紙芝居として映画にする。ストーリーには起伏がなく、不条理な出来事を淡々と見せていくだけだ。
もう少しメリハリを付けなくては、眠くなってしまう。でも、そうはしてくれない。ただ、原作をなぞって行くばかりである。そして、未完の小説のまま、映画も未完の状態でいきなり終わる。こんなところでやめにされたら、見ている方はたまらない。でも、ハネケはそ . . . 本文を読む
谷崎の『刺青』の再映画化。一体何度映画にすれば気が済むのだろうか。ポルノにも充分なるから、いい素材なのだろう。昔にっかつロマンポルノにもなったし、OVのエロ文芸路線としても最適なのだ。今回もそんな流れに乗った企画だし、低予算のOVもどきの映画だが、これを作っているのが、瀬々敬久と井土紀州の黄金コンビなのだから、何があっても、誰に後ろ指指されようと(誰が指す?)見たかった。
この素材を通して彼 . . . 本文を読む
高橋恵さんの前作『野を焼く』のさりげなさがとてもよかった。田舎に引きこもった女性の数日間を追っていきながら、今ある状況をなんとかして変えて行こうとする人たちの静かな内面の闘いを描いていく作品だった。
今回もまた、前回の流れを組む作品になっている。大きなドラマはない。話の核には、兄の失踪という出来事があり、それがここに出てくる人たちに大きな影響を与えている。だが、表面的には夏の暑い中、縫いぐる . . . 本文を読む
前半はドキドキしながら、見れた。テンポよく、お話が進んでいく。この芝居のペースに乗っかってジェットコースターにでも乗ってるように主人公の少女、りん(白亜)に降りかかる災難を見ていく。いったいこのお話はどこに向かっていくのかも、読めないような展開が素晴らしい。あれよあれよという間にどんどん先に行く。よく解らないけど、ずっと舞台を見つめていたくなる。そんな芝居だ。
そして、後半。彼女の頭に葉っぱ . . . 本文を読む
なんだかとても寂しい映画だった。それは、いいとか、わるいとかのことではない。この映画の気分の問題である。夏休み、ヨーコさん(竹内結子)が家にやってきて、彼女と過ごした20年も前の思い出が甦ってくる。これはそんな記憶を辿る物語。
さらりとしたタッチで回想されていく。ヨーコさんはとても男らしい女性で、こだわりがなく、元気で、私はそんな彼女に惹かれていった。でも、表面的には、そっけなく振舞う。だっ . . . 本文を読む
市川拓司を見ていると、この人はこれから作家としてきっと行き詰まってしまうに違いないと確信してしまう。それくらいに手の内が明白で、バリエーションがないのだ。何を書いてもいつも同じで、自分のことしか書けない。
同じように内気な男の子とか、女の子が出てきて、不器用な恋をする。彼らの世界はいつも狭くて、そこからはみ出したらそれだけで生きていけないようなのだ。だから、その小世界で息を潜めて生きている。 . . . 本文を読む
夏休みのお子さまランチとして見たならば、別に腹も立たないけど、大人向けの1本の映画としては、これではあんまりではないか。今時、子供用、大人用の区別なんて『ポケモン』や『ドラえもん』ならいざ知らず、こういうタイプの映画ではなくなっている。『ハリーポッター』は大人だって見るし、『スパイダーマン』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』なんかは決して子供向けではない。
そんな時代に、明らかに大人を舐めて . . . 本文を読む
アキ・カウリスマキの映画を初めて見た時の衝撃は今も忘れられない。こんな映画がこの世の中に存在したなんて考えられなかった。何の予備知識もなく(というか、その頃日本では、カウリスマキなんて誰も知らなかった、と思う)『真夜中の虹』を今は亡き国名小劇の小さなスクリーンで見た。
たった75分の映画だ。しかし、そこには全く余計なものがない。これ以上削ぎ落とすことは不可能だと思った。必要最小限のものしか、 . . . 本文を読む
25年の歳月を経て、『転校生』が大林さんの手で甦る。尾道から、長野の善光寺に舞台を移し、夏の映画が、冬の映画へと様変わりしても、大林宣彦監督の生きる姿勢は変わらない。
前回は「生きることの輝き」を描いたのに対し今回は「死んでいくことの痛み」を描きながらも、変わる事のない命の讃歌を見せてくれる。そのあからさまなメッセージが、昔は少し恥ずかしかったが、今はもっとやってよ、なんて思う。世の中はどん . . . 本文を読む
安田真奈監督の劇場用長編第1作。頑固一徹の父(沢田研二)と、彼を受け入れる家族に反発する次女(上野樹里)を主人公にして、お互いの意地の張り合いと、譲らない姿を通して彼らの深い親子愛が見えてくるハート・ウォーミング。
終始不機嫌で、むっとした顔をして、誰に対してでも摑みかからないばかりの勢いでぶつかってしまう上野の姿が、ちょっと腹が立つくらいに描かれてある。この頑なさがいい。そこ . . . 本文を読む
これは一体何なんだ?全く意味のないドタバタ騒ぎで、こういうのをおしゃれな映画だとか、新しいタイプのコメディーだなんて言うのなら、そんなものはお断りだ。
細部にまで手が込んでいるし、そんな作り手の拘りは悪いとは言わないが、全体があまりにルーズすぎて、見ていてイライラしてくる。自分たちは面白がっているのだろうが、独りよがりでしかないし、話自体が有機的に繋がらないのは、あんまりだ、とを思う。
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降旗康男と木村大作のコンビによる新作。こういう大人の映画が、日本映画から影を潜めて久しい。今回の作品を見て、今更ながら彼らが高倉健とコンビを組んだ新作が見たくなった。
『冬の華』は従来の健さんのイメージを損なうことなく全くイメージを一新したスタイリッシュな映画だった。『あしながおじさん』を彼が演じるなんて、当時は思いもしなかった。もちろんヤクザのあしながおじさんなのだが、そのことも含めて、 . . . 本文を読む
ハネケの映画の中で、これは失敗作に位置付けられる数少ない作品だ。前半は刺激的なのだが、あまりに丸投げしすぎて、後半、想像力が膨らまないまま終わる。
少女を殺してしまうという行為のそっけなさ。そのあまりのあっけなさには唖然とさせられる。しかも、その行為はビデオに撮られていて、少年はその映像を何度も繰り返し見る。これは猟奇殺人ではない。彼にとってこれは事故のようなものだ。(殺されたほうはたまらな . . . 本文を読む
こういうタイプの芝居を見ることはめったにない。今回も春演の審査員をさせてもらわなければ100%見ることがなかった芝居だ。これはこれで見れてよかったと思う。こういうタイプの芝居を拒否するのは簡単だが、受け入れてみることで、見えてくるものもある。
真摯に芝居と向き合い、芝居を通して世界を変えていけたらと願う。その姿勢には感動した。すぐに斜に構えて、物事をしっかり見ようとしない今の若い人たちに、こ . . . 本文を読む
魔人ハンターミツルギ版『ニューシネマパラダイス』とでも呼ぶべき作品。彼の映画に対する愛がここには余すところなく溢れている。といってもそれは映画検定とかに通るための雑学的なものではなく、ここには純粋な映画に対する熱い想いと憧れが詰まっている。暗闇の中、大きなスクリーンに映像が映り、アクションがあり、サスペンスがある。ドキドキして、それを見守る。そこには笑いと涙がいっぱい詰まっている。
それは、 . . . 本文を読む