衝撃的な映画だった。ただひたすらスクリーンを(DVDで見たからTVのブラウン管なのだが)見続けているだけ。たった90分間。ただひたすら車から見える風景を見ている。イスラエルからヨルダンへ。そして中東各国の境界線上にあるフリーゾーンへ。自由交易地帯であるその荒涼とした景色をただ眺めるだけ。そこにはただ車が延々と並んである。それだけ。
何が起きたのか。ここで彼女たちが見た現実をただ傍観することす . . . 本文を読む
前半の子供時代のエピソードがすばらしい。オープニングの教室のシーンでの、柄本明の先生と子供たちのやり取りなんか、見ていてドキドキする。昔々には、こういう先生がいたんだ、と思うとそれだけでなんんだか胸が一杯になる。居眠りする生徒にバケツを持たせて教室の後ろに立たせる。子供は自分の非を認めて立つ。先生の行為を正しいと認める生徒たち。そして、先生はなぜ居眠りをしたのかを聞く。すると、少年は昨夜から朝ま . . . 本文を読む
こんなにもつまらない映画を平気で作れてしまう神経ってどんなもんだろうか。確信犯的にくだらないものをねらっているのはわかるが、そんなことをして何の意味があるのか、僕にはわからない。よくあるマンガの映画化で、かなり面白いと評判になったものらしい。でなくては映画にはしないだろう。
くだらないものをわざと作り、それが笑える場合も確かにある。だが、ここまで滑るのはなんだろう。うちの娘が「マンガもアニメ . . . 本文を読む
かなりきつい話だ。まぁ、角田光代なんだからしかたない。35歳。いつまでも学生時代のままではいられない。だが、いつまで経ってもあの頃のまま。そんな自分たちに大概うんざりしている。そんな5人の男女たちの物語。
離婚式なんていう大袈裟でわけのわからないイベントを開催する。そこに昔ながらの仲間たちが集まってくる。みんなは2人の晴れの門出(!)を祝うために来た。しゃれでしかない。だが、本気でもある。裕 . . . 本文を読む
三原光尋監督の作品は最初の頃から、ずっと見ている。彼が大阪で自主映画を撮り、自分でフイルムを抱えて小さなホールを回っていた頃からだ。とてもいい人で腰も低く、なんとかしてあげたくなる。彼が商業映画でデビューし、細々と活躍し、今日まで映画界で生き残っているなんて、なんだか夢のようだ。だから、かってに応援してしまう。どんな酷い映画を撮ってもまた、次を見てしまう。親戚が頑張ってるのを応援するような感覚だ . . . 本文を読む
『ウォンテッド』があまりに素晴らしすぎてこの監督の前作『デイ・ウォッチ』も見ることにした。ロシアのティムール・ベクマンベトフである。彼の日本デビュー作でありこの作品の前作でもある『ナイト・ウォッチ』を見た時にはがっかりした。凄まじいアクションとSFXを駆使した破壊的な超大作なのだが、すごい、スゴイといっているうちにだんだん飽きてきて何が何だかわからなくなった記憶がある。この人は駄目だ、と思った。 . . . 本文を読む
こんなにもすごい映画だとは思わなかった。この手の感動ものの実話はなんだか苦手だ、なんて思い劇場ではパスしてしまったのだが、惜しいことをした。だが、かなりきつい映画だし、DVDでも充分に鑑賞は可能な作品だと思う。
遅くなったが、でも、見てよかった。この映画の魅力はなんといっても、ここまで苛酷な作業を成し遂げたことということに尽きる。それは原作者でありこの物語の主人公でもあるジャン・ドミニクこと . . . 本文を読む
マキノ雅彦監督第2作である。叔父であるマキノ雅弘監督の代表作のリメイク。これはかなりの気合いが入った作品であろう。東宝版全9部作のいいところを存分に1本に投げ込んで仕上げた渾身の力作、のはずだった。だが、現実は厳しい。だいたい最初から、これは無謀だと思った。この素材は映画向けではない。
次郎長もののよさはディテールにある。子分たちをいかに魅力的に見せていくかが最大のポイントとなる。なのに映画 . . . 本文を読む
こういう映画は映画館で見るに限る。なんて言いながらもう封切りから40日も過ぎてようやく見てきた。今週いっぱいで上映が終了すると聞き、一応見ておこうと思ったのだ。あまり評判はよくないし、この手のバカアクションのために貴重な時間を割くなんて、僕もバカだとは思う。だが、休みの日にこういう映画を何も考えずに見るのは、それはそれで快感である。
とことん従来のヒーローものをコケにした設定である。予告編を . . . 本文を読む
シリーズ第3作。もう続編はない、と思っていただけに、とてもうれしい。この大家族の中に入って、彼らの心地よい世界でまどろむことは快感だ。昔はどこにでもこういう風景があった。一つ家でみんなが暮らし、お互いに干渉したり、助けあったりして生活していく。そして、どんどん人間関係が広がっていき、次々いろんな人たちが彼らの輪の中に入っていく。そんな家族の輪が、この小説の中にはとても丁寧に描かれている。読んでい . . . 本文を読む
今年で3年目を迎えた楽市楽座による「同じ演目を繰り返し繰り返し上演していくことで劇団のスタンダードを作り上げていく」という作業。続編ではなく、再演。しかも、役者の一部変更も含めた改訂を繰り返すことで作品世界をどんどん深めていくとする作業。関西の小劇場界でこういう大胆な試みを、しかも、集中的にこなそうとした劇団は、ない。あまりにリスクが大き過ぎるし、題材自身にもそこまでのめりこめることができないか . . . 本文を読む
チヤン・ユアン監督の新作を偶然見ることにした。余談だが、本当はこの日は子供鉅人『電気女 夢太る』を見に行くつもりだったのに、『1798年、冬』を見たら、続いてここ(シネ・ヌヴォー)で上映するので、予定を変更してしまったのだ。せっかくこんなところまで来てしまったのだから、出会いを大事にしよう。
と、いうことで、『小さな赤い花』である。『1978年、冬』とは別の意味でこれも面白い映画だった。
. . . 本文を読む
この夏モーニングショーで公開され、一瞬で消えていった映画である。どうしても見たかったのに見れず、DVE待ちか、と思っていたが、偶然にも、たった1週間、朝だけシネヌーヴォーで上映されることになり、見てきた。
こういう上質の映画と出逢えたら、もう何もいらない。ただ、その余韻に浸れたなら、それだけでいい。荒涼とした中国西北部の地方都市、西幹道(いったいそれって、どこにあるのだろうか。そんなことも知 . . . 本文を読む
2007年と1986年。2つの時代をつないで青春の甘ずっぱい感傷が描かれる。ケラリーノ・サンドロビッチ監督第2作。前作同様、実に中途半端な映画だ。かなり期待したのだが、途中からもうどうでもよくなってしまった。これには乗れない。2時間7分という長さもこの映画の駄目さを象徴している。スピーディーではない。ぐだぐだしつこい。
ある種の距離感は悪くはない、と思った。感傷的なのもいいが、自家撞着してる . . . 本文を読む
テキストとしてプルーストの『失われた時を求めて』を使用して、文学座の女優である渋谷はるかさんを共演に迎えてボヴェ太郎が挑むアイホールとの共同プロジェクト。彼のダンス作品が言葉を受け入れる。それだけでも興味津々。
もちろんこれは単純な小説のダンス化ではない。(それはそれで興味があるが)小説からイメージとしての風景を喚起する箇所を抽出して引用する。きっとこのやり方は正しい。だが、見ていて企画意図 . . . 本文を読む