映画化された『明け方の若者たち』は原作には及ばない。だけど、原作小説自体も少しもの足りない出来だった。では、よく似た内容の映画である『花束みたいな恋をした』のほうがいいか、と言われたなら、それもちょっとなぁ、と思う。微妙。この手のお話はどこにでもある。自分の体験のほうが小説よりドラマチックで感動的だ、なんて思うようなお目出たい人たちもきっと多数いることだろう。わかるわぁ、という感じ。そんなさらりと . . . 本文を読む
こんな小説はない。2ページくらいでひとつのエピソードが終わる。そこに登場する主人公は、それだけの一瞬だけで消えていく。いや、消えたわけではない。彼らの時間は続くけど、小説は次にはもう別の人物に視点を変えている。そんなふうにして100人くらいの断片が綴られていく。時々、以前出てきた人物が登場したりもする。彼や彼女の周囲の人のエピソードに顔を出したりもする。そこには特別なことはない。どちらかというと、 . . . 本文を読む
今年劇場で見た芝居は51本。配信で見た芝居はもちろん含まない。それにしても少ない。でも、去年よりは少し増えた。(それでもそれ以前の3分の1くらいだ。)来年は従来の本数に戻したい。これはそんな中でのベストテン。
1位 フタマツヅキ(iaku )
2位 ghost notes (空の驛舎)
3位 落選の神様 (虚空旅団)
4位 眠れな . . . 本文を読む
昨年劇場で見た映画の本数は136本。映画館で見るのが本来の映画の見方だと思うけど、最近は配信で劇場で見れる以上の凄い作品が簡単にみられるようになったので、ついつい配信にも頼ってしまう。
でも特別な映画はやはり、映画館で観たい。映画館の素晴らしいところは、ここではないどこかにちゃんと連れて行ってくれることだ。日常生活から遠く離れて、どこでもない、どこかへと、いざなわれる。ここではない、どこかに行く . . . 本文を読む
例年12月になると続々と「お正月映画」と呼ばれる作品が公開され映画館はにぎわう。フライングした拡大公開の超話題作が11月の終わりに公開されるようになったのはいつ頃からだろうか。(『ジョーズ』くらいからかなぁ)
元旦をまたぐお正月映画は一年のトップバッターであり、各映画会社が自信をもって公開する「特別」であり、渾身の一作ばかりだった。それは豪華で華やか、幸せな気分にさせてくれる。そんな映画を見たく . . . 本文を読む
もう読まないつもり、と思っていたが、ついつい読んでしまった。先日読んで感動した『猫弁と鉄の女』の前作である。第2シーズンの第1作だ。やはり、そこそこ面白かった。この調子で第1シーズンの5冊も読んでしまいそうな勢いだ。きっと確かに面白い、はずだ。でも、それは『猫弁と鉄の女』と比較したら、到底及ばないはずである。要するにあの作品がこのシリーズの到達点だったからだ。そのことは疑いようもない事実だろう。作 . . . 本文を読む
カツセマサヒコの原作小説を読んだのは今年(2021年)の1月終わりのことだ。その数日後、映画館で『花束みたいな恋をした』を見ている。だから、驚いた。偶然続けて手にした作品が、まるで同じような話だ、と思ったからだ。明大前での飲み会。そこで出会ったふたり。やがて大学を卒業して、社会人になる。それからの日々。幸せだった時間。去っていく彼女。もちろん細部は違うし、状況も違うのは別の作品だから当然のことだけ . . . 本文を読む
年末、『エッシャー通りの赤いポスト』を見るまでの時間調整で見始めた映画なのだが、なんだか身につまされた。この男ほどではないけど、僕も彼のように言いたいことをちゃんと言えないで、すぐ口を噤んでしまう。(というか、僕にはたぶん言いたいことがないのかもしれないが。自分に自信がないわけではない、はずなのだけど、すぐにもごもごしてしまう。特にこの3月で仕事を辞めてからそういう傾向が強い。無職になり、自信を無 . . . 本文を読む