高校生から家出して浮浪者になった少年の彷徨い過ごす数年間を描く。なけなしの貯金8万円を父親に盗まれた、恋人を強姦された耕一郎は父を殴りつけ雪の中放置して家を出る。父を殺したと思う。
できる限り遠くに行く。そこでホームレスとして暮らす。ダンボールの家、空き缶拾い、やがて寄せ場に移動し日雇い労働に従事することになる。
住所不定、偽名の未成年の男を雇う人はいないけど、 . . . 本文を読む
N・シャマランの新作かと思ったら、娘の監督デビュー作。もちろん父さんがプロデュースしている。親の七光り。しかも父の作る映画そっくりのルックス。これはあかんな、と思ったけど、2時間の空白を埋めることが出来る映画は、その劇場のその時間帯にはこれしかなかったから、仕方なく見ることにした。監督は現在24歳だというイシャナ・N・シャマラン。
脚本はシャマランかと思っていたが(もちろん、シャマランだけど父で . . . 本文を読む
2018年に神戸アートビレッジセンターでリーディング公演として上演された階の久野奈美による作品をトレモロの早坂彩が演出して再演。再演大博覧会だけど、本格演劇作品としてこの台本の公演はこれが初演となる。4話からなるオムニバス・スタイルの70分。とても濃密で、爽やかな作品に仕上がっている。久野さんの脚本を早坂さんが適切な距離感を持って描いた。だけど、その距離感がこんなにも心地よい。神戸という街の100 . . . 本文を読む
現役90歳の草笛光子が佐藤愛子役で主演する。こんな映画が作られるような時代がやってきた。監督は前田哲。彼ならこんな(どんな)題材でも上手く料理する。だがそれは器用な職人監督ということではない。この題材ときちんと寄り添って必要なものを提示する。彼の誠実さの賜物である。
だいたいエッセイの映画化って難しいはず。ストーリーを組み立てにくい。しかも今回は作家本人を主人公にして、ほぼ現役で活躍 . . . 本文を読む
少し期待して読み始めだけど、甘かった。読みやすいし、悪くはない。だけどまるで中身のない小説で、退屈。それなりのセレブ老人4人(小学4年の頃からの友人、みんな今68歳)が、自宅である二世帯マンション(息子の家族と暮らすために購入)で悠々自的に終活暮らし。シングルになった(離婚、子育て終了、死別等々)彼女たちは広々とした家で気の合う仲間と人生の第2ステージを謳歌している。さすがにそれだけでは退屈してく . . . 本文を読む
こんなアニメ映画は見たことがない。前作も面白かったが、今回はまるで違う。圧倒的な情報量を詰め込んで、一気に語り、見せてくれる。だから2時間30分の長尺になったのだけど、それだけではない。ただ早いだけでなく、目まぐるしい。全編が凄いスピードと短いカットの連打で突き進んでいく。だから一瞬でも目を離したら振り落とされてしまいそうで、眩暈がする。しかもこの圧巻の浮遊感。それにはびっくりするしかない。
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ホン・サンス監督の2008年作品。相変わらずの話で、こういう映画はもう何度も見た気がするけど、この映画を見るのはきっと初めてのはず。だけどこの映画と同じような映画は山盛りあるホン・サンスです。2012年に4本同時に劇場公開されたホン・サンス特集の1本。知る人ぞ知るアート系映画監督のギョンナム(明らかにホン・サンスを自虐的にモデルにした)と、彼をめぐる人間模様を軽妙なタッチで描いたラブコメディだ(一 . . . 本文を読む
ポプラ社からの新刊だから借りてきた。タイトルにも心惹かれた。フリースクールの話だが、冒頭近くのまど兄の言葉で,この小説は大丈夫だと思った。「自分で考えることが大事。」「今の学校は考える前に与えすぎてるんや、」という言葉がいい。わかりやすい。
隣人でひとつ下の友人が自殺したことに引きずられて不登校になってしまった主人公が、東京だけど郊外の森にある全寮制のフリースクールに入って、そこで傷 . . . 本文を読む
傷をテーマにした10の短編集。ほんの少しの痛みが、人生全体を象徴することもある。この傷みを抱えて生きていくしかない。いつの間にか、長い歳月の中でついた目には見えない傷をグリフィスの傷と呼ぶ。
クラス全員から無視されて、そこにいるにもかかわらずいないものとして過ごしていた時間。竜舌蘭によって流した血。痛みはなかったが、それが原因で傷みから解放された。だが、果たしてそれは解放か? 黙殺さ . . . 本文を読む
古厩智之監督作品だから公開時に見たいとは思ったけど、扱う題材がeスポーツだということから少し腰が引けた。ゲームは苦手、好きじゃない。もちろん映画だし、高校生の全国大会が描かれるって以前の『ロボコン』とよく似たパターン。あれはいい映画だったし。
残念ながら、公開がすぐに終わって劇場では見逃したけど、配信されたので、早速見た。なんと僕の生まれた田舎町である徳島県阿南市が舞台になっている。 . . . 本文を読む
まさかのひらがなだらけの小説である。これは読みにくい。いちいち漢字変換して読まなくてはならない。いかに僕たちは表意文字に助けられているかを改めて知る。全体の9割くらいにひらがなが使われている。もちろん故意に。
しばらく我慢して頑張って読んでいるとなんとか慣れてきた。慣れは凄い。語り手である主人公の彼女は25歳で融合手術を受けて死なない体になった。老化せず、100年。25歳の体のまま,生きた。本当 . . . 本文を読む
Netflix、TBSのTV版『からかい上手の高木さん』第1話を見た。劇場版がイマイチだったから見るのをためらったが、こちらも今泉力哉監督作品だから、一応1話だけでも、と思い見たのだが、これがなかなかいい。わざとらしい高木さんとどこまでもおぼこい西片のやりとりが楽しい。あまりにあからさまな高木さんとまるでとんちんかんな西片。このふたりのやりとりがなんだか微笑ましい。こんな中学時代があったなら、幸せ . . . 本文を読む
これはチェン・ウェイハオ監督が再びメガホンをとり、2017年度の台湾映画興行成績第1位となる大ヒットを記録した作品なのだが、残念だが、つまらない。第1作のよさはなりふり構わない勢いだったが今回の作品にはそれがないからだ。確かに上手くなっているのかもしれないだけど前作のような勢いは感じられない。デビュー作の成功を受けて今回は自信をつけて挑んだ作品である。しかも観客から最大限の支持も得た。ただのホラー . . . 本文を読む
ウイング再演大博覧會の3作品目。初演のアイホールからウイングフィールドに劇場が変わり、台本もかなりの改変がある。当然だろう。時が経ち、人も劇場のサイズも変わったことは大きい。新しい『かえりみちの木』は前回とは違う。舞台中央にあった大木は,今回は上手になる。しかも舞台上で見えているのは(舞台に可視化するのは)全体の4分の1だけだ。しかも、地上から数メートル。彼らが見ている神木の全体はこのウイングの空 . . . 本文を読む
これは確か毎日新聞に連載されていて、連載時に読みたかったけど、少しずつ読むのが面倒で単行本化を待っていた作品だ。ようやく読めるのがうれしい。(毎日新聞の小学生新聞とあるが、それって、たぶん本誌のコーナーではないか?)児童書だけど、いつもながら倻月さんの冷静な視線が貫かれていて、気持ちいい。これは子どもだけでなく大人こそが読むべき小説だ。小学6年という微妙な時間に優しく迫る。忘れていたあの頃を思い出 . . . 本文を読む