今回の劇団未来は三島由紀夫の2本立て公演。しかも2本を2週間に渡って1日3回公演で、各9回上演。怒濤の18ステージである。僕は初日にまず男性キャストだけで贈るこちらから見ることに。しまよしみち、演出。彼が久々に役者としても出る。渡辺舞による舞台美術が素晴らしい。斜めになっている白い3つの壁の組み合わせが彼らの揺れる心を視覚化している。これはヒトラーがヒトラー(しまが演じる)になるまでの物語。彼はふ . . . 本文を読む
もう何度目になるのだろうか。数えきれないほど見てきた(気がする)『オー・マイ・リョーマ』である。だけどやはりまた見たい、と思う。毎回違うヴァージョンで、新しいキャストで作られるけど、絶対にリョーマは寺田夢酔が演じる。そこだけは変えられないし、そこを変えるなら見ない。それは渥美清が演じない寅さんのようなものだから。さて今回は布施PEベースでの上演。幾分狭い空間に20人に迫るキャストが走り回って大騒ぎ . . . 本文を読む
昨年の『波紋』に引き続き荻上直子が監督・脚本した最新作である。この作品に堂本剛が『金田一少年の事件簿』以来なんと27年振りで単独主演した。あれはTVからの派生作品だし、『ファンタスティポ』は国分太一とのダブル主演だから本格的な映画主演はこれが初めてである。しかもこれは監督が当て書きした「初めに堂本剛ありき」の作品。(綾野剛が共演するダブル剛だし!)100パーセント堂本映画。だからかもしれないが、今 . . . 本文を読む
よくあるTVドラマの劇場版である。ただしこれは今最も輝いている宮藤官九郎の脚本。さらには水田伸生の監督作品。このふたりのコンビの映画はいつも悪くないから期待した。ただオリジナルのTVシリーズは全く見ていないから一見さんでも大丈夫かと少し心配したが、やはり一見さんはお断りっぽい映画でした。いやぁ、参った。だけど気にしないで見ることに。
ゆとり世代を主人公にしたコメディから7年。30代になった主人公 . . . 本文を読む
この小説以前読んでいる気がする、と思いつつ読み進める。書き下ろし作品とあるし、この9月に出たばかりの本だからいくらなんでも読んでないはず。たぶん同じ話を小手鞠さんは何度も書いているんだ。本人の自伝風作品である。きっとエッセイか何かで書いている。編集者に裏切られた話ってショックだから。
それにしても今はあまりにたくさんの本を読んでいるから最近はどれがどれだったか、混乱している。これはマズい。しかも . . . 本文を読む
サブタイトルに『ラブレター代筆屋が詠む短歌』とある。だからこれは明らかに歌集である。だけどただの歌集ではない。まるで日記のような、エッセイのような軽さ。ストーリー性もあるから自伝風小説。そんな不思議な短歌集である。
最初は女性か、と思ったけど(本人は「僕」と言うし)途中からはっきり作者は男性だとわかる。隠していたわけではない。しかも45歳。中年男性。本名は小林慎太郎。
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凄い本を見つけてしまった。今10冊まず読みたい本があるにも関わらず、それらの前にまずこの本を読んでしまう。92歳の鉄人谷川俊太郎さんと僕と同い年65歳の詩人伊藤比呂美のただのおしゃべりをまとめた貴重な一冊。
ちょうど生きていたら谷川さんは僕の母親と同い年である。(この書き方は誤解を招くね。もちろん谷川さんは存命で母が死んでいるということだけど)ふたりの関係に自分たち親子のことを重ねてしまった。僕 . . . 本文を読む
今年もウイングカップが開催される。コロナ禍も含め15年連続途切れることなく、続いている。ウイングフィールドも32年を数えて今絶賛、再演大博覧會も開催中である。とうとう完成した30周年記念誌(30周年の記念なのに32年目まで完成しなかった!)も刊行された。リニューアルされたウイングフィールドはこんな時代だからこそ、小劇場演劇にしか出来ない戦いに挑む。
ウイングカップでは毎回前夜祭が開催され、そこで . . . 本文を読む
シンガポールのアンソニー・チェンの監督・脚本。彼は『イロイロ ぬくもりの記憶』の監督だ。これが第2作となる。原題は『燃冬』。(軽めの日本語タイトルより、こちらの方がいい)舞台となるのは中国と北朝鮮の国境にある町、延吉。中国のどこにでもあるような小都市。雪の中に埋もれるような町。もちろんここには朝鮮族がたくさん暮らす。ちょっとした都会でもあり観光地かもしれない。だけどなんだかうら寂しい。上海から友人 . . . 本文を読む
『赤い雪 Red Snow』の甲斐さやか監督第2作。ウィルスの蔓延により人口が激減した近未来のお話。映画化もされているカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』と同じ設定でクローン側ではなく臓器移植をクローンから受ける男(井浦新)が主人公。説明を最小限に留めて彼を中心として周囲のさまざまな人たちの心情やこの施設内の光景、そんな断片の数々を描く。回想で挟み込まれる状況や関係性がなかなか明確にはならない . . . 本文を読む
70年代後半に作られた日本のロボットアニメ「超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)」を、約半世紀の時を経て、フィリピンのマーク・A・レイエス監督がまさかの実写映画化。この映画に先行してフィリピンでは実写版TVシリーズが作られ人気爆発したらしい。フィリピンの特撮映画なんて初体験。僕は残念だがこのアニメは見ていない。もう高校生だったから仕方ない。だけど戦隊モノは知っているし、『仮面ライダー』は大好きだ . . . 本文を読む
今回の高瀬隼子は軽やかな短編集という体裁を取るがもちろんそれだけではない。とりあえずは恋愛小説という定番に挑戦している。だけどこんなえげつない恋愛小説を読んだことがない。表面的にはさらりとしているけど、恋愛の夢なんか粉砕してしまうくらいに強烈だ。だからといって、恋愛を拒否するのではない。非難もしない。それどころかちゃんと恋愛してしっかり結婚したりもする。ただ5つのお話は恋愛の甘さを描かない。シビア . . . 本文を読む
『昔々、アナトリアで』や『雪の轍』のヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の新作である。だから期待しないわけがない。しかも今回もまた3時間越えの大長編だ。辺境の地にある小学校が舞台になる。そこで働いている美術教師が主人公。傑作『ブータン 山の学校』を想起させる設定だ。冒頭雪の中を歩いてくる彼の姿を延々と捉えるのもこれから始まる3時間18分だから、あれだってまだ短いくらい。どこまでも続く雪原を歩いていく。『ブ . . . 本文を読む
娘がバイト先からイグアナを貰ってきて、育てた。今からもう20年くらい前になる。それから死ぬまで。あの日々は大変だった。僕は動物が苦手。しかも爬虫類である。あり得ない。しかもジェリ(イグアナの名前)はどんどん大きくなり、ゲージでは収まらない、やがて一部屋、彼女のために開けることになる。
今回この本を手に取ったのはイグアナというタイトルだけで反応してしまったからだ。主人公の美苑は4年生。 . . . 本文を読む
初めてつかこうへいを見たのは今は無きSABホールの『広島に原爆を落とす日』だ。衝撃的な芝居で忘れられない。主人公、ディープ山崎を演じた風間杜夫が素晴らしかった。ラストのひとり芝居には震えた。ヒロインのかとうかずこはまだ若くて声がちゃんと客席まで届かない。だけど美しさだけで作品を大きくリードする。平田満が作品全体を支える。歴史的傑作。
あれから40年以上の日々が過ぎた。つかが亡くなってからも、もう . . . 本文を読む