久々のスティーブン・フリアーズ監督作品。『シェイプ・オブ・ウォーター』のサリー・ホーキンスが主人公を務める。これはいい。実はあまり乗り気ではないけど、まぁいいかぁ、と思い見始めてのだがすぐにのめりこんでしまった。最初は何の話だかわからない。だいたい主人公の彼女自身もわかってない。これからどうしたいのかもわからないまま、会社のやり方に腹を立てている。息子との付き合いで仕方なく見た芝居。シェイクスピア . . . 本文を読む
なんだか甘そうな小説だから、どうしようかなと逡巡したが、漱石の『猫』(もちろん『吾輩は猫である』)の現代版かもね、と思い読むことにした。
1話が80ページくらいのボリュームで4話からなる連作だからスケールは大きくはない。300ページくらい。まぁそれなりの分量だろう。『猫』には及ばないし、もちろんこれは漱石を目指したわけではない。軽い読み物である。4匹の姉妹猫と彼女たちの飼い主の話。4匹がそれぞれ . . . 本文を読む
『宙をわたる教室』がドラマ化されて評判になっている伊予原新の新作である。相変わらず科学がテーマになっているけど、当然お話自体が面白いから科学は苦手(化学はもう無理)だけど、ついつい手に取ってしまう。空、海、森という自然が背景になっているけど、そこに人もいる。僕は人の物語がいい。ここに描かれるものは人と自然の邂逅である。
今回は5つの短編集。最初の『夢化けの島』を読んで驚いた。科学と物語とが見事に . . . 本文を読む
レビューを4回に分けて描くなんて初めてのことだ。それくらいに面白かった、わけではない。ただ4回に分けて見たことと、この大時代的な恋愛映画のバカバカしさスレスレの展開が意外に楽しく、さらには最後のあっけなさにも触れたくなったから完結編を書いた後の展開も書くことにした。先にも書いたように5話でお話は終わっている。6話以降は蛇足である。特に8話のトホホな展開には呆れる。心臓不調から坂口まで死ぬ、とか、最 . . . 本文を読む
第5話から8話までを見た。やはりこれは確信犯だった。5話でやりたいことが明確になる。それはラストの夜の駅でのシーンからはっきりする。究極のラブストーリーを目指す。亡くなった人は帰って来ない。だけどその人を忘れないで生きることはできる。
この作品を成功させたのは主役の4人の功績が大きい。彼らの揺れる想いとぶれない愛が伝わってくるからこのあり得ない話を信じる気になる。こんなまさかの設定をしても甘いラ . . . 本文を読む
このタイトルはインパクトある。もちろん『トイレの花子さん』と引っ掛けてある。介護職に就いた山田花、彼女は呑気であまり何も考えていない。明るいだけが取り柄の女の子。そんな22歳の奮闘記である。3Kと言われる介護の現場にたまたま入った花。大学を出たけれど就職先がなく、唯一採用された介護職。だけど親友や家族という周りは早く辞めて再就職先を探せばと言う。本人もこんな大変な仕事だとは思わなかったみたい。やは . . . 本文を読む
これは面白い。白石一文なのに今回も前回に引き続き短い。186ページである。しかも32章仕立てだから、各章5、6ページくらいのボリューム。どんどん話が進む。
まさかの展開が平然と描かれる。人口が爆発的に増えて出産制限が法制化された世界。昔の中国のように。持てる子どもはひとりだけ。(ひとりっ子政策だ)外国からの移民が50%を超えて、アンドロイドがさまざまな分野で仕事を受け持つようになったそんな時代。 . . . 本文を読む
第2話から先を見ることにした。これは明らかにわかりきってやっていると判断した。確信犯がこのわざとらしいメロドラマをどこに落とし込むのか、に付き合いたいと思ったからだ。(まぁ、僕もヒマだから、ね)
第2話は坂口健太郎の視点から描かれる。生田斗真から心臓移植を受けたことで生き延びることが出来た彼のその後が描かれる。妻(中村ゆり)との幸せな日々を過ごすけど、違和感がある。以前の自分とは違う。嫌いだった . . . 本文を読む
「最高においしい小説」シリーズの第3作らしい。帯を見て知る。そんなこと知らなかったし、気にはならない。だいたいシリーズといっても独立した長編だし、内容が繋がった作品ではなく「おいしい」をテーマにしただけみたいだから前作は関係ない。これ自身も、4話からなる連作長編である。しかも主人公のさやかは最終話まで脇役でしかない。さやかが大将である夕凪寿司に12年振りにやって来たまひろの話から始まった。彼女は2 . . . 本文を読む
Netflixのドラマシリーズ。第1話を見たが、あり得ないくらいにベタな話で見ていて恥ずかしい。こんなのありか、と思うくらいにあれやこれやの展開。有村架純主演で彼女が恋人の死を乗り越えて明るく元気に生きる姿をさまざまな人たちとの関わりを通して描く。今時ハワイが舞台になるなんていうのもあまりにベタで笑うしかない。もちろんこれはわざとしているのは確実だろう。恋人(生田斗真というのも、嘘くさい。彼が堂々 . . . 本文を読む
なんとこれは美しい物語だろうか。そしてこんなにも優しいし、哀しい。これは耳にまつわる5つの短編からなる小川洋子の最新作。ある補聴器販売員の死から始まる物語。耳鼻科医が父の骨壺から取り出した4つの耳の骨。カルテットのお話。一応これは補聴器販売員の娘が聴いた4つのこと、というスタイルになっている。基本的には父の仕事を描く。販売員として旅する中で彼が出会った人たちとのお話。缶に納められた4つの耳の骨。や . . . 本文を読む
久々の劇団大阪公演である。15年振りの再演となる。前回は初めてこの戯曲を見たからかもしれないが、当事者である子どもたちが出ない芝居に憤りを感じた。その後他の劇団での公演も見ているが、今回久々に劇団大阪による公演を見て感心した。今回も、もちろん熊本一による演出。劇団大阪にとっては2年振りの本公演であり、しかも第90回の節目にもなる。役者たちがとてもいい。それぞれが勝手だけど、自分の子どもを守りたいと . . . 本文を読む
久しぶりのあさのあつこによる現代劇。高校生が起業する話。自分たちの居場所を作ることで、同じように悩み苦しんでいる人たちを援護することが可能なのかに挑戦する4人組。
高校から始まって、大学生になり卒業するまでを背景にした青春小説。大人になるまでを描くのではない。何が大人で何が子どもなのか、そんなことわからないけど、17歳が起業して会社を作り、成功させてもいい。それは夢の話ではなく、ある . . . 本文を読む
なんと高齢者による読書会のお話である。高齢者ものは近年多いから驚かないけど、読書サークルである。そんな題材で書かれた小説なんてない。古民家カフェを借りて毎月開催される読書会。参加者は6人。会長はなんと92歳。最年少でも78歳。コロナ禍かは3年間開催が見送られていたが、ようやく再開する。カフェの新米店長28歳も新たにメンバー入りする。まるで介護の一環として参加したけど、そんな舐めた印象を吹き飛ばすよ . . . 本文を読む
長尾高校以外に見た二作にも少し触れておく。長尾を含めていずれも役者たちが達者で安心して見ていられる。予選を勝ち切って府大会に出場している学校なのだから当然かもしれないが、実に上手い。冒頭の前説だけで感心させるワンエピソードを成立する精華高校作品は、『椿姫』をベースにしたメインの話(らしいが、僕にはどこが椿姫なのか、わからなかった)に、さまざまな生徒たちによるエピソードを絡めて描く高校生アルアル。恋 . . . 本文を読む