「ご注文のワインはこちらでよろしかったでしょうか」
クアトロの父はうやうやしくワインのボトルをお客様に見せる。
クアトロの父は年寄りだから注文を聞き間違えることがありそうなのだが、自信をもってワインを差し出すクアトロの父を疑うのもためらわれる。
「はい、結構です」と答えるお客様。
返事を聞くと、年寄りとは思えない早業で、腰にぶら下げたソムリエ・ナイフを取り出しワインのコルクを抜きはじめるクアトロの父。
コルクを熟練の技で抜き取り、自慢気にそのコルクをテーブルに置くクアトロの父。
さあ、次はワインのテイスティングという儀式である。
大概のお客様は、このコルクを抜く作業で気後れするのか、テイスティングはクアトロの父に言われるままに、「大変に結構なお味でした」ということで終わってしまう。
せっかく、高いお金を出してワインを飲むのだから、このテイスティングを楽しんでみよう。
それには、いくつかのテクニックがある。まずは、クアトロの父がボトルを見せに来た時に注文したワインを持ってきたかどうか心配ではあるのだが、それよりもビンの形をチェックしておこう。
赤白ともに、いかり肩のボトル(写真右)となで肩のボトル(写真左)のものが多い。
いかり肩のものは、フランスのボルドータイプのワインがほとんどである。味わいが濃厚で複雑さを求めるタイプのワインである。ボルドーのワインでなくとも、ボルドータイプの味わいを目指すワインはこのビンを使うことが多い。
テイスティングの時に、このいかり肩のボトルだったら、ちらっとコメントしてみよう。
「ボルドースタイルらしさを感じますね」
急にクアトロの父の接待が良くなるかもしれない。
しかし、なで肩のボトルはエレガントで軽快なブルゴーニュタイプか、ボルドーよりも濃厚で男性的なローヌタイプがある。
なで肩タイプの時はコメントを控えめにしよう。
「エレガントで男性的ですね」
となると、ニューハーフのようである。
ボルドータイプのいかり肩以外のボトルの時は、クアトロの父の説明に耳をかたむけてからコメントしよう。