大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ライトノベルベスト『メゾン ナナソ・5』

2021-12-21 06:27:17 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

『メゾン ナナソ・5』   
 

 

 めずらしく二階からギターの弾き語りが聞こえている。

「ああ、よっちゃんがツアーから帰ってきたの」

 奈菜さんは、お茶を入れながら心持楽しそうに言った。

「ツアーって、ミュージシャンなんですか?」

「そうよ。メジャーじゃないけど、もっと売れてもおかしくない人だと思ってる。どうぞ、相変わらずのお番茶だけど」

 奈菜さんが出してくれた番茶に茶柱が立っていた。

「お、茶柱」

「あら、ほんと。いいことあるかもね」

「いいことが、やってきました」

 気づくと、管理人室の受付の窓に、よっちゃんの顔が覗いている。

「溜まってた三か月分の家賃です」

「どうも、よっちゃん忙しいから、なかなか会えないもんね。ま、入ってよ」

 奈菜さんは、互いの紹介をしながらお茶を淹れなおした。今度は茶柱は立たなかった。

「ツアーって、どんなとこを回るんですか?」

「どこでも。今度は関西中心だったけどね。歌声酒場とか大学の学園祭とか……たまには結婚式の余興ってこともあるけどね。これは実入りがいいの。それが二件あったから、でね、聞いてよ。二件目の結婚披露宴にレコード会社の人がいてさ。今度ゆっくり曲を聞かせて欲しいって!」

「よかったですね!」

 パチパチパチパチ

 ボクと奈菜さんは、揃って拍手した。

 ボクが帰るのに合わせて、よっちゃんはギターを持って付いてきた。

 

「ちょっと遠回りして、大川の土手にいこうよ」

 大川の河川敷は、今にも寅さんや金八先生が出てきそうな、ゆったりした時間が流れていた。

「キミは、大学に入ったら何をしたいの?」

「ええと……」

「まさか勉強なんて言わないでしょうね。そんな名刺みたいな答えだったら軽蔑だよ」

「笑わないでくださいね……作家になりたいんです」

「すごいじゃん。なんとなくなんていったらはり倒してやろうと思った。で、もうなにか書いてるの?」

「まだ、プロット程度のものばっかですけど……」

 ぼくは、二つプロットを話した。その場に合ったものがいいと思って大川の土手が舞台になっている話をした。よっちゃんは、とても喜んでくれた。

「肉付けは大学に入ってからだね。とにかく入らなきゃ話にならないもんね。勉強もしっかりやれよ!」

「なんだか、さっきの言葉と矛盾だ」

「んなことないよ。物事には、順序と程度ってものがあるから。それ胸に刻んでりゃ、きっと開けてくるものがあるわよ……」

 よっちゃんは、遠くを見るような眼差しになった。トンボが、その前をよぎった。

「あたしの歌聞いてくれる?」

 返事をしようと息を吸い込んだら、もうギターの伴奏が始まった。

「よっちゃんの曲って、明るいのが多いですね」

「音が楽しいって書いて音楽だからね。それに明るくなきゃ、結婚式なんかには呼んでもらえません。だけど、あたしは、もう少し情感があればって、目下苦闘中」

「情感て?」

「例えば、こんなの……」

 よっちゃんはイルカの『なごり雪』を歌った。ボクも好きな曲なんで、いっしょに歌った。

 汽車を待つ君の横で 僕は時計を気にしてる……♪

 二日たって、ナナソに行った。よっちゃんの部屋は窓が閉まってカーテンが引かれていた。

「よっちゃん、手紙を置いてった。これ」

――がんばれ、わたしよりずっと!――

 その一言だけが書いてあった。

「彼女、いつ帰ってくるんですか?」

「よっちゃん、ギター買い換えてた……安物に。前のは中古で売っても二十万くらいにはなるやつだった。五年も聞いてれば違いぐらいは分かるわ」

 そう言うと、奈菜さんは「空室」という張り紙を持って二階に上がっていった。 

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魔法少女マヂカ・250『ナガト ハッケン!』

2021-12-20 14:15:51 | 小説

魔法少女マヂカ・250

『ナガト ハッケン!語り手:ノンコ      

 

 

 英語が喋られへんから、どうなるのかってビビった。

 

 あたしは魔法少女と言うても、準がつく。

 元々は、ポリコウ(日暮里高校)のふつうの女生徒。

 いや……ちょっと劣等生(^_^;)

 こないだのテストでは調理研のみんなに助けてもろて、なんとか落第せんで済んだとこ。

 マヂカがポリコウに来て(気が付いたら同級生)、いつのまにか染まってしもて、準魔法少女になってしまった!

 自衛隊の特務師団というのに入れられて、身分的には特別職の公務員? よう分からへんけど。

 

 何の因果か、ほとんど百年前の大正時代で冒険の真っ最中。

 ここでは、京都の神社の娘という設定になってて、いつの間にか言葉も京都弁になってしもて直らへん(^_^;)。

 どないしょ(^_^;)

 まあ、暗示にかかりやすいというか、影響を受けやすい。

 それで、今回の任務ではイギリスの巡洋艦の水兵になって、対水上監視の接眼鏡に齧りついてる。

 首からぶら下げたメガホン、これは翻訳機になってて、日本語で「長門発見!」と叫ぶと、英語に変換される。

 

―― ノンコ、あと一分! ――

 

 マヂカから思念通信が入る。

―― 了解 ――

 返事して右舷一時の方向に遊園地の据え付け望遠鏡みたいな接眼鏡を向ける。あらかじめ出現の方角が分かってるからラクチン。

―― ハイドボール用意 ――

―― 了解 ――

 おお、霧子の思念が入ってきた。

 いよいよや。

―― テー! ――

 頭の中にブリンダの号令がして、それに応える霧子の息遣いを感じると、右舷二時の方角にカスミがたなびく。

 霧子がハイドボールを破裂させたんや!

 さすが魔法少女のマジックアイテム。

 まるで、自然現象みたいなカスミが右舷方向に広がっていく。

―― ガサゴソ ガサゴソ ――

 今度は衣擦れの音がする。

 いよいよ、ブリンダとマヂカが二人で戦艦長門に化けて、本物の戦艦長門を最大戦速で日本に向かわせる。

―― ヘーンシン! ――

 号令が響く。

 この瞬間、カスミの中に本物と偽物二隻の長門。カスミの外にあたしの巡洋艦。

 うっかりしてると、二隻の長門が見えてしまうかもしれへん。

 打ち合わせでは、本物の長門は少し東に進路をとるんで、グズグズしてるとカスミの中から出てしもて、見つかってしまう。

 大丈夫やろか……

 み、見えた!

 カスミの中に、小さく、でも黒々としたガチ長門の姿が浮かんできた。

「ナガト ハッケン!」

 メガホンに日本語で叫んだら、これがうちの声か?

 でもはっきりと英語になってて、ブリッジの艦長やら航海長やらが一斉に双眼鏡を向ける。

 ああ、なんとか無事に任務終了や!

 

 え?

 

 問題が一つ。

 あたしは、この先どないしたらええのん?

 どないしょ、どうやって巡洋艦から撤収すんのんか、ぜんぜん決めてへんかったやんか(;'∀')!

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
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明神男坂のぼりたい16〔明日香のナイショ話〕

2021-12-20 08:52:08 | 小説6

16〔明日香のナイショ話〕    


       

 

 実は、辞めようかと思い始めてる。

 演劇部。

 一週間先には、芸文祭。ドコモ文化ホールいう400人も入る本格的なホール。N駅で降りて徒歩30秒。条件はいい。

 交通の便はいいし、演劇ファンの中にも名は知れているし。

 だけど、観にくるお客さんが少ない……らしい。

 あたしは一年だから去年のことは、よく分からない。

 

「まあ、80人も入ったら御の字かなあ」

 稽古の休憩中に美咲先輩が他人事みたいに言う。

「そんなに少ないんですか!?」

「そうよ。コンクールだって、予選ショボかったでしょ」

「だけど、本選はけっこう入ってたじゃないですか」

「アスカ、あんた東京にいくら演劇部あるか知ってる?」

「連盟の加盟校は230校です……たしか」

「そうね、けっこうな数だけど、うちの予選は、観客席ガラガラだったじゃん」

「え、100人くらい入ってなかったですか?」

「30ちょっとよ」

「うそ、もっと入ってたでしょ?」

「観客席って、半分も入ったら一杯に見えるものなのよ。うちのお父さん役者だから、そのへんの感覚は、あたしも鋭いよ」

 美咲先輩のお父さんが役者だっていうのは、初めて聞いた。

 びっくりしたけど、顔には出さないようにした。

 それから、美咲先輩は、いろいろ言ったけど、要は、三年なったら演劇部辞めるつもりなんだ。

 

 それで分かった。元々冷めてるんだ。

 

 盲腸だって、すぐに治るの分かってて、お鉢回してきたんだ。

 馬場先輩に言われた「あこがれ」が稽古場の空気清浄機に吸われて消えてしまいそう。

「今は、目の前の芝居やることだけです!」

 そう言って、まだ休憩時間だけど、一人で稽古始めた。

「えらい、熱入ってきたじゃんか!」

「午後の稽古で、化けそうだなあ」

 東風先生も小山内先生も誉めてくれた。一人美咲先輩には見透かされてるような気がした。

――明るさは滅びの徴(しるし)であろうか、人も家も暗いうちは滅びはせぬ――

 太宰治の名文が、頭をよぎった。親が作家だと、いらんこと覚えてしまう。

 三年の先輩たちは、気楽そうに道具の用意してる。

 あたしは情熱ありげに一人稽古。

 このままいったら、四月には演劇部は、あたし一人でやっていかなくっちゃならない。

 それが怖い。

 芝居は好き。

 だから、こないだ梅田はるかさんに会ってもドキドキだった。馬場先輩にも「アスカには憧れの輝きが目にある」言われた。

 だけど、ドラマやラノベみたいなわけにはいかない。

 新入生勧誘して、クラブのテンション一人で上げて、秋のコンクールまで持っていかなくっちゃならない。

 正直、そこまでのモチベーションはない。

 それにしても、忌々しい美咲先輩。こんな時に言わなくってもいいじゃん!

 

 稽古終わって帰り道。

 男坂の上で立ち止まってしまう。

 

 四歳くらいの女の子が、坂の下から見上げている。

 ドキッとした。

 坂の真ん中あたりに時空の裂けめとかができて、四歳の明日香が12年後のあたしを見ている。

 明神男坂上りたい……

 あの時の想いが口をつく。

 ニコ(^▽^)/

 女の子が手を振って、反射的に胸の所で手を振り返す。

 タタタ

 女の子が坂を駆けあがって来る。

 あ、危ない!

 三つ目の踊り場で転げ落ちてしまう!

 タタタタタタ

 駆け下りる! 女の子は、勘違いして勢いを増して、幼女とは思えない速さで駆け上がって来る!

 危ない!

 手を伸ばしたあたしの方が踏み外してしまった。

 ドチャ! フグッ!

 石神井の池でジャンプし損ねたカエルみたくズッコケた。

 

「……大丈夫、明日香ちゃん?」

 

 顔を上げるとだんご屋のおばちゃん。

「あ、だいじょうぶ……です」

 振り返ると、坂の上、瞬間、上りきった女の子のリボンが揺れて見えなくなる。

 おばちゃんがカバンを拾ってくれる。

 きちんと締めてなかったので、中身のあれこれがぶちまけられている。

「あら、キーホルダー壊れちゃったわね」

「あ」

 それは、だんご屋さんが操業記念に作ったのをもらって、ずっとカバンに付けていたやつ。

「こんど、新しいのあげるわね」

「あ、ありがとう」

「あら、あれ、部活の台本じゃないの?」

「え?」 

 見下ろした坂の下で、バラバラになった台本が散らばっていた。

「イタ」

 取りに下りようとしたら、足が痛む。

「うちには内緒にしといてください」

「うん、分かったよ」

 そういうとおばちゃんは、坂を下りて台本のページを集めてくれる。

「すびばぜん……」

 そこまで言ったら、涙と鼻水が溢れてしまった。

 

 

※ 主な登場人物

  •  鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生
  •  東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
  •  香里奈          部活の仲間
  •  お父さん
  •  お母さん
  •  関根先輩         中学の先輩
  •  美保先輩         田辺美保
  •  馬場先輩         イケメンの美術部
  •  佐渡くん         不登校ぎみの同級生

 

 

 

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ライトノベルベスト『メゾン ナナソ・4』

2021-12-20 06:33:53 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

『メゾン ナナソ・4』   




 今日も奈菜さんはいなかった。

 中村さんの部屋で待たせてもらおうかと思って、中村さんの部屋のドアをあけると「空室」と張り紙があった。

 仕方ない、今日は諦めよう。

 そう思っていると隣の部屋から声がした。

 女同士の話声で、なんだかやりこめられているほうが奈菜さんの声のような気がした。

 これは助け船を出した方がいいと思って、加藤たか子と書かれたドアをノックした。

 トントン

 だれ!?

 若干のやり取りがあったあと、加藤さんは話し相手が多い方が楽しいと判断したらしく、ボクを招じ入れ、自分と奈菜さんの間に座らせた。話の内容から、加藤さんは、某都立高校の先生であると分かった。

「……と言うわけで、今日はストなのよ」

 なんで、学校の先生が平日に病気でもないのに出勤していないのかと、それとなく聞いたら。中教審答申に反対し、おまけになんだか忘れた理由で、都立高校のほとんどでストをうっているらしい。それを知らずに奈菜さんが「あら、加藤先生、今日は学校お休みですか?」と声を掛けたのが発端らしい。

 話題……というか演説の内容は中教審から女性の自立というところに話が移っているようだ。

「奈菜さんみたいに管理人やってるのは悪いとは思わないけど、若いんだから、もっと社会に出てからでもいいと思うの。アパートなんて住人で自治会こさえて自主運営。管理人さんは、家賃に見合ったアパートの管理さえしていればいいのよ。伯母さんの後釜に収まるのは、奈菜さん、若すぎる」

「そりゃ、職業婦人も悪くはないと思うんですけど……」

 奈菜さんは、軽くいなそうと思った。

「その婦人という意識と言葉がいけません。分かるわよね、キミ?」

「え、ああ、婦人の婦のツクリがまずいって考え方ですよね」

 ボクも現役のころに、組合の女の先生から聞かされていたので頭に染みついていた。

「そうよ、あれは女偏に帚(ほうき)と書いて、女が家庭で非人間的に縛られていたときの、女性蔑視のシンボル。看護婦、婦人警官、みんな廃止すべし!」

 ボクは、このことについてかねがね思っていた疑問や不満をぶちまけてみたい衝動にかられた。

「加藤先生の説は間違っています」

 正面から切り込んだ。

「どこが間違いなのよ。女と帚をくっつけて、それを女の代名詞に使うなんて、封建制度まる出しじゃないの!?」

「いわゆるホウキは、女偏に竹冠のない『帚』ですが、これは、いわゆるホウキではなくて、古代中国で巫女が神事に使う宝器であるものの名前が由来になっています。箒と似てるんで混同されただけです。第一「婦」の字を無くしたら青鞜社のころから連綿と続いてきた『婦人解放運動』の言葉が使えなくなります。大東亜戦争をアメリカにむりやり太平洋戦争と言わされたようなもんです」

「え、日本人が呼び換えたもんじゃないの?」

「米語の『パシフィック ウォー』を和訳したものをGHQが強制したものです。もし、戦時中の日本人に『太平洋戦争』と言っても通じません。それに、太平洋戦争って言ったら、その前から起こっていた中国との戦争がすっぽり抜け落ちてしまいます」

「そ、そうなの?」

「『婦』にもどりますけど、看護婦、婦人警官を無くしたら、日本語が貧弱になります」

「どうしてよ!?」

 加藤先生は、一歩踏み出してきた。

「看護婦は言葉だけで性別が分かります。かりに性別のない『看護師』というような言葉を作ったら、いちいち「女性看護師」てな具合になって、言葉のリズムを崩してしまいます」

「リズムくらいなんだってのよ。女性の地位向上の方が、よっぽど大切だわよ!」

「じゃ、お手伝いさんはどうなんですか? 地位が向上しましたか? BGをOLって呼び換えたけど、やってることは、やっぱ腰掛のお茶くみじゃないですか」

「そんないっぺんに変わりはしないわよ。まず、象徴である言葉から変える。それから中身よ」

「じゃ、先生という言葉はどうなんです。戦前の呼び方そのものじゃないですか。公的な呼称の教育職公務員では長すぎますし。それに……」

 ボクたちの激論は二時間続いた。奈菜さんは、いつの間にかいなくなっていた。

「ごめん、あの先生、どうにも苦手でね」

 管理人室で改めて奈菜さんから、お茶をもらった。どこかで飲んだお茶だと思ったら、中村さんが残していったお茶だそうだ。

 その後分かったことだけど、加藤先生は期限付き常勤講師で、その後勤務校が替わったので、メゾンナナソを出て行った。

 またひとつ空室が増えた。
 

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せやさかい・266『夜中に目が覚めて……』

2021-12-19 14:12:39 | ノベル

・266

『夜中に目が覚めて……』さくら     

 

 

 さっぶううううううう!

 廊下に出たとたんに体の5%くらい縮んでしまう。そんなことがリアルに思えるくらいに寒い!

 

 この家には95%満足してる。

 お寺やさかいに、敷地は300坪を超えるし、本堂はもちろん、家族が済む住居部分も、お屋敷かいうくらいに広い。

 その広い住居部分の二階に、うちら女子の部屋がある。

 詩(ことは)ちゃん  あたし(さくら)と留美ちゃん

 他にも空き部屋があるねんけど、留美ちゃんは「さくらと同室がいい」というので、八畳の部屋にベッドと机を二つずつ置いて共同生活。

 そんな遠慮せんでもぉ。

 お祖父ちゃんもおっちゃんも「もし遠慮してんねんやったら、いつでも留美ちゃん専用の部屋用意するで」と言ってくれてる。

 せやけど、半年いっしょに居てて、よう分かった。

 留美ちゃんは、ほんまに、うちと同室なんがええねんや(^▽^)。

 

 で、廊下に出て、あたしも思った。

 

 二人で居てると、ほんまに温い。

 ときどき、詩ちゃんの部屋にも行くんやけど、同じ間取りやのに詩ちゃんの部屋は、ちょびっと寒い。

 やっぱり、二人で居てるのんは、それだけで温いんや。

 

 で、いま5%ほど縮む感じで寒いのは、トイレに行くため。

 部屋に不満はないねんけど、トイレが階段下りた一階にしかないのんは、数少ない不満。

 夜中にトイレにいくことは、めったにないねんけど、夕べは詩ちゃんと三人でパジャマパーティーみたいになってしもて、ちょっとあれこれ飲み過ぎた。

 それでも、留美ちゃんも詩ちゃんもトイレに起きた気配が無い。

 やっぱり、女子のたしなみやねんやろね、二人ともえらい。

 将来就職して稼げるようになったら、二階にトイレ作ろ!

 

 そう、決心して『ありのままの~♪』とアナ雪の歌を口ずさんで用を足す。

 

 そのまま『ありのままの~(^^♪』と開放感にしたって、お茶を飲むためにリビングへ……

「あれ?」

 テイ兄ちゃんが、テーブルに湯呑置いて、タブレット見てる。

「どないしたん?」

「ああ……」

 生返事なんで、横に座ってタブレットを覗き込む。

 

 え、なに?

 

 ネットのニュースに『神田沙也加転落死』のニュース。

 中国の新聞みたいに漢字ばっかりの見出しなんで、アホのうちは、理解すんのに数秒かかった。

「え、アナが死んだ!?」

「声大きい!」

「せやかて!」

 たった今まで『ありのままの~』を口ずさんでたんで、ちょービックリ!

「事故か…………か分からんけどな、ちょっとショックやなあ」

 すると、階段の方から人の気配。

 留美ちゃんと詩ちゃんも、パジャマの上にカーディガンとかひっかけて降りて来た。

「ほら、起こしてしもたやろがぁ」

「ああ、かんにん(^_^;)」

「ううん、おトイレにいきたくて……」

「え、神田沙也加……亡くなったの!?」

 三人で、テイ兄ちゃんごとタブレットを取り囲む。

 さすがに、二人とも、うちみたいに声はたてへんけどビックリしてる。

 

 一夜明けて、日曜の朝。

 みんな、朝ごはん食べ終わってもリビングに居続けでテレビのニュースを見てる。

 そして。

 今朝のテイ兄ちゃんのお経は、いつもよりも長かった。

 

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明神男坂のぼりたい15〔鈴木明日香の絵〕

2021-12-19 08:10:22 | 小説6

15〔鈴木明日香の絵〕    

 

        


 ―― 君の絵が描けた ――

 

 うそ!?

 

 トースト食べながらメールをチェックしていたら、馬場先輩のメッセが入ってたのでビックリした。

 ここんとこ、毎朝十五分だけ絵のモデルをやりに美術室に足を運んでる。

 まだ一週間ほどで、昨日の出来は八分ぐらいだったから、完成は来週ぐらいかと思っていたので、ビックリした。

 

「うわー、これがわたしですか!?」

 イーゼルのキャンパスには、自分のような自分でないような女の子が息づいていた。


「昨日すごくいい表情してたんで、昨日は残って一気に仕上げたんだ。タイトルも決まった」

「なんてタイトルですか?」

「『オーシッ!』って付けた」

「『オーシ!』……ですか?」

「いや、『オーシッ!』 ほら、これからなんかやるぞって時に拳握って力入れるだろ」

「あ……ああ!」

 拳握って思い出した、無意識にやってるよ。

「うん。もともと明日香は、なにか求めてるような顔をしていた、野性的って言っていいかな。動物園に入れられたばかりの野生動物みたいだった」


 あたしは、高崎山の猿を想像して、打ち消した。

 小学校の頃のあだ名は、そのものズバリ「猿」だった(^_^;)。

 ジャングルジムやらウンテイやら、とにかく上れる高いとこを見つけては挑戦してた。


 最後は四年のときに、遠足で木に上って、校長先生にどえらく怒られた。


「ハハ、そんなことしてたんだ。でも……いや、それと通じるかもしれないなあ。木登りは、それ以来やってないだろ?」

「はい、親まで呼ばれて怒られましたから。それに木には興味無くなったし」

「でも、なにかしたくて、ウズウズしてるんだ。そういうとこが明日香の魅力だ。こないだまでは、それが何なのか分からない不安やいら立ちみたいなものが見えたけど。昨日はスッキリした憧れの顔になってた。それまでは『渇望』ってタイトル考えていた」

 思い出した。

 一昨日の帰り道、女優の梅田はるかさんに会って、東亜学園まで案内したことを。

 あたしは、梅田はるかに憧れたんだ。それが、そのまま残った気持ちで、昨日はモデルになった。

「あたし、今でも、こんな顔してます?」

「う~ん……消えかけだけど、まだ残ってるよ」

「消えかけ……?」

「心配しなくても、この憧れは明日香の心の中に潜ってるよ。また、なんかのきっかけで飛び出してくるかもしれない」

「うん。描いてもらって良かったです。あたしの中に、こんな気持ちが残ってるのが再発見できました!」

「オレもそうさ。増田って子も良かったけど……」

「けど、なんですか?」

「あの子のは自信なんだ。それも珍しい部類だけどね。満ち足りた顔より、なにか届かないものに憧れている顔の方がいいと、今は思う」

 理屈から言うと、増田さんの方が自信タップリでいいけど、馬場さんの言い方のせいか、あたしの方がグッドに思えた。

「これ、卒業式の時に明日香にあげるよ」

「え、ほんとですか!?」

「ああ、絵の具が完全に乾くのにそれくらい時間がかかるし、この絵を描いたモチベーションで次のモチーフ捜したいんだ」

 フワア~(#^0^#)

 あたしは、高校に入って、一番幸せな気持ちになれた。

 梅田はるかといい、馬場先輩といい、短期間に素敵な人に巡り会えた。

 この気分は、放課後まで残って、気持ちを小学四年に戻らせてしまった。

 

「こらあ、アスカ! パンツ丸見えにして、どこ上っとるんじゃあ!」

「あ、ちゃんとミセパン穿いてますから」
 
 稽古前になにかやりたくなってグラウンドへ。

 で、十年ぶりに気に登りたくなった!

 でも、うちのグラウンドはコンクリート。

 頭を巡らせると玄関外の楠が思い浮かんだ。

 よし!

 初めて男坂を見上げた時のような高揚感!

 で……

「もうすぐ本番だって言うのに、怪我したらどうすんの!」

 上ったところを顧問の東風先生に怒られてしまった。

 

※ 主な登場人物

  •  鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生
  •  東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
  •  香里奈          部活の仲間
  •  お父さん
  •  お母さん
  •  関根先輩         中学の先輩
  •  美保先輩         田辺美保
  •  馬場先輩         イケメンの美術部
  •  佐渡くん         不登校ぎみの同級生

 

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ライトノベルベスト『メゾン ナナソ・3』

2021-12-19 06:02:58 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

『メゾン ナナソ・3』   


       

 今日は迷わずにメゾンナナソにたどりつけた。

 でも、管理人の奈菜さんの姿は見当たらなかった。

「奈菜さんなら、出版社だよ」

 管理人室の前で「どうしよう」と思っていると、五十代半ばのごま塩頭のオジサンが声を掛けてきた。

「まあ、おっつけ帰ってくるだろう。よかったら俺の部屋で待ってなよ」

 けして愛想のいい人ではなかったけど、この人の部屋で待っていれば確実に奈菜さんに会えるような気がして、待たせてもらうことにした。

「俺、中村吾一っていうんだ。つまらんオッサンだけど、まあ、奈菜さんが帰るまでだ。今お茶淹れるから」

「あ、おかまいなく……」

 おかまいなくと首を回しただけで部屋の様子が知れる。

 小ぶりな洋服ダンスに座卓、あとはキッチンに小型の冷蔵庫があるくらいのもので、あっさりしている。

「まあ、何もないけど煎餅とお茶だ。酒を出すにはお天道様がまだ高いからな」

 そう言うと、中村さんは、蒸らした急須のお茶を注いだ。

 淹れ方が、男のボクが見ても見事だ。二つの湯呑に交互に注ぎ、瞬間急須を持ち上げるようにして、お茶の最後のエキスを落とした。

 そして、座卓に置いた湯呑と塩煎餅の配置が、そのまま生物画になりそうなほどに、それぞれの位置を占めている。

「並べ方が、その……見事ですね」

「ハハ、多少はね。なんせ、この通りの男やもめ。せめて整理整頓ぐらいはね……こういうのを色気を付けるっていうんだ」

「色気?」

「ああ、軍隊用語だけどね。きちんとやるだけじゃなくて、どこか最後はスマートでなきゃいけない。ハハ、カッコつけてもただのオッサンのくせだけどね」

 ゆっくり湯呑を口に持っていくと、長押に軍艦の写真が額縁に収まっているのに気付いた。

「あの船は?」

「雪風……俺が最後まで乗っていた駆逐艦だ」

「駆逐艦て、自衛隊の護衛艦みたいなのですか?」

「そうだな……この雪風は、戦争の初めから、ミッドウエー、大和の水上特攻まで、絶えず海軍の最前線にいた。その中で唯一無傷で終戦を迎えた艦だよ」

「ついてたんですね」

「ただの死にぞこないさ……戦後はしばらく復員船をやっていたけど、賠償で台湾に持っていかれた。そこで十何年働いたあとスクラップになった。返してくれって運動もやったんだけど……返ってきたのは舵輪だけだった。乗組員の大方は……人生のお釣りみたいに生きてる」

 どこかで、波の音が聞こえたような気がした。

「ほう、聞こえるのかい……今の若い奴には珍しい。奈菜さんが興味を持っただけのことはある」

 ボクは、密かに期待していたことを言われたようで、少しうろたえた。中村さんは、それを横顔で受け止めて微かに笑ったような気がした。

「中村さん!」

 ノックと同時に奈菜さんが入ってきた。

「珍しい、奈菜さんが、そんなに慌てて。宝くじでもあたったのかい?」

 奈菜さんが手にした紙切れを見て、中村さんが冷やかした。

「来たわよ、召集令状!」

「ほんとかい!?」

 中村さんが出て行ったあとの部屋は、波音がいっそう大きくなった。

 窓を開けると、遠く雪風が、南に向かって走り去っていくのが見えた……。

 

 戦争が終わったのって、たしか1945年だよな?

 

 時間の計算が合わない……でも、そんなことはどうでもいいくらい窓から見える海は爽やかだった。

『管理人室に寄ってってねぇ』 

 階下で奈菜さんの声。

「はい、お邪魔します」

 そう答えて振り返ると、今どき珍しい……なんて呼ぶんだろう上下に開く窓の外は、どこか昭和の匂いのする街が広がっていた。

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やくもあやかし物語・115『早くやっつけてアキバにいきたい』

2021-12-18 15:07:56 | ライトノベルセレクト

やく物語・115

『早くやっつけてアキバにいきたい』 

 

 

 神田明神が御茶ノ水で降りるんだとは知らなかった。

 御茶ノ水駅は、なんと秋葉原駅の隣で、図書室の地図で見たら、ほんの700メートルあるかないかって近さ。

 例のマップメジャーで測ってみる。

 800メートルと出てきた。

 道は真っ直ぐじゃないから、まあ、こんなもの?

 800という距離は微妙。

 アキバに行くことが目的だったら800というのは、そう苦にならない。

 だけど、神田明神に行って、将門をやっつけてから行くとなると、ちょっと唸ってしまう距離。

「ちょっと不まじめ」

 胸ポケットから顔を出して御息所が文句を言う。

「いいじゃない、ちょっとくらい楽しみが無いと、やってられないよ」

 もともと、二丁目地蔵や里見さんの八房にだまし討ちみたいにして持ち込まれた案件。

 少しくらいはね。

 そう思って、もう一度マップメジャーを走らせる。

―― ヨシタホウガイイ ――

「もう!」

「どうしたの?」

 不思議に思う御息所に見られないように、地図もマップメジャーもしまって下校する。

 

 わたしはね、アキバで本物のメイドさんに会いたかった。

 

 え?

 知ってるわよ。アキバのメイドさん、みんなアルバイトの女の子。

 そういうのを本物って言うわけです、わたしは。

 永遠の17歳とか、お仕事が終わったら、タンポポの綿毛に掴まって妖精の国に帰っていくなんて思ってないわよ。

 ふつうの高校生とか大学生とかフリーターのおねえさんが、時給1000円とかで、社会保険とかも無しでやってるんだって。知ってるわよ。

 でもね、メイド服着てアキバに居る限り、あっぱれ日本のメイドさんなのよ。

 本性はバイトのおねえさんでも、仕事中はメイドさん。

 その虚実皮膜の間に、あっぱれ日本のメイドさんの姿がある。

 だってね、ふだん、わたしの周囲に居るのはメイドお化けとか、メイドお化けを使って『あやかしメイドカフェ』始めた二丁目地蔵だよ。

 これまでの経験から言っても、コルトガバメントもあることだし、やっつけられると思う。

 さっさとやっつけて、アキバを目指そう。

 

 土曜日、朝から中央線に乗ってアキバ……じゃなくって、御茶ノ水を目指す。

 なんで土曜日かっていうと、日曜を予備日にしてる……わけじゃなくって、日曜は、家でゆっくりしたいから。

 まあ、今までの経験から言っても、一日あれば片付くでしょ。

 むろん、早く終わったら……ムフフですよ。

 乗った電車は、わたしの覚悟を裏付けるように『総武線 御茶ノ水行き』だよ。

 あれえ、うっかり降りるの忘れてたあ(^_^;)なんて、ぜったい言わせない!

 運命の神さまだか二丁目地蔵とかが、企んだ感じ。

 まあ、心配しなくてもやりますよ。

『つぎは、終点、御茶ノ水、御茶ノ水、お出口は左側です……』

 車内アナウンスがかかって、電車は静かにお茶の水のホームに入って行った。

 プシュー

 ドアが開く。

 どういう塩梅か、そのドアから下りるのは、わたし一人だ。

 で、驚いた。

 降りたところに、とてもトラディッシュナルなメイドさんが、レムとラムみたいなメイドを引き連れて立っている。

「お待ち申し上げておりました、お嬢さま」

 なんと、アキバの方が御茶ノ水までお迎えに来ているではないか!

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝

 

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明神男坂のぼりたい14〔スターと遭遇〕

2021-12-18 08:23:35 | 小説6

14〔スターと遭遇〕     

     

 

 たまに下校のルートを変える。

 いつもは外堀通りなんだけど、水道橋を渡って神田川の南に出て駿河台の方に進む。

 ちょっと遠回りなんだけど、神田川と中央線が朝とは反対の北側にくるので、気分転換にいいんだ。

 特にね、今日は稽古がうまくいったので、ちょっとシミジミしたいわけ。

 水道橋渡ってすぐ、東亜学園を右に見て曲がると駿河台の坂道。そこを東に向かって十分ちょっとで御茶ノ水橋。

 気分次第で、もう少し直進して聖橋を渡って帰ることもある。

 

 あ!?

 

 一瞬メガネを取った、その顔は、若手女優の梅田はるかだ!

 あたしは、間抜けなことにお茶の水駅まで来て、ヨッテリアの前で台本を忘れたのに気がついた。

 そして、振り返ったときに至近距離で目が合った。


 そうだ、春からの新作ドラマ、舞台はこの辺だって、ネットの情報だった。

 ちょっと離れたとこにカメラとか音響さんやらのスタッフがいる。休憩なんだろう、スターは駅前の交差点で、ボンヤリと下校途中の高校生を見ていた。で、たまたま、台本忘れたのに気が付いた間抜けなあたしと目が合ったんだ。

「あなた演劇部?」

「え、あ、はい。TGHの演劇部です」

「TGH、そこの?」

「あ、はい」

「ああ、そうなんだ。神田川の向かいだから覚えてる」


 あたしも思い出した。梅田はるかは、大阪の女優さんだけど、一時家の都合で東京に引っ越して、東亜学園に転校してきたんだ。代表作『わけあり転校生の7カ月』は、ドラマでも原作本でも有名だ。


「そう、その東亜学園に行くんだけど、いっしょに行く同窓生が仕事でアウト。どうだろ、よかったらお供してくれないかな?」

「え……!?」

「あなた、演劇部でしょ?」

「え、あ、どうして(分かるんだ)?」

「だって、カバンから台本覗いてる」

 あ……そうだ、水道橋渡るときにカバンに突っ込んだんだ。

 いつもは、台本読み返しながらだから家に着くまで手に持ってるんで、忘れたと思ったんだ(^_^;)

 恥ずかしさと安心と可笑しいのでアワワしてしまう。様子に気付いたスタッフが、集まってくる。

「編入試験受けるとき、水道橋で下りて、ここまで来て気づいたの。とっくに行き過ぎてるの。ここいらの学校って、ビルでしょ。学校だって気づかなかったことに気付いて。アハハ、なんか変みたいだけど、大阪は、学校ってグラウンドがあって、ここらへんみたいにビルっぽい校舎ってないからね。あ、上地さんいいですか?」

 監督みたいな人に声かけると「うん」と頷いて決まってしまった。

 流れと勢いで、あたしははるかさんのお供をすることになったよ。

「テストは間に合ったんですか?」

「うん、一時間勘違いして早く来ちゃってた(#^▽^#)!」

「「アハハ」」

 天性の明るさなのか、タレント性なのか、お日様みたいにポジティブなはるかさん。

「懐かしいなあ……ヨッテリアの二階」

「『ジュニア文芸八月号』 あそこで吉川先輩に見せられたんですよね!」

「よく知ってるわね!」

 はるかさんの出世作は、さっきも触れたけど、『わけあり転校生の7カ月』って自伝的ドラマ。

 ドラマでは、親の離婚で東京から大阪に越してきた女子高生になってるけど、実際は逆だったのがドラマ終了後に分かった。リアルにやると、いろんな人に迷惑かけそうなんで、設定を東京と大阪を逆にしたらしい。

「本で読みましたから。あれ、ちょっとしたバイブルです」

「ハハハ、大げさな!」

「ほんとですよ。親の都合で急に慣れない東京に来た葛藤が、リアルでも、はるかさんを成長させたんですよね」

「うん、離婚した両親のヨリをもどしたいって一心……いま思えば子供じみたタクラミだったけどね。明日香ちゃんはなに演るの?」

「あ、これです」

「『ドリームズ カム トゥルー』いいタイトルね」

「一人芝居なんで、苦労してます」

「一人芝居か……人生そのものね。きっと明日香ちゃんの人生の、いい肥やしになるわよ」

「そうですか?」

「そうよ、良い芝居と、良い恋は人間を成長させるわ」

 あたしは、一瞬馬場先輩が「絵のモデルになってくれ」と言ったときのことを思い出した。

 エヘヘ

「なにか楽しいことでも思い出したの?」

「アハハ、なんでも(^_^;)」

「明日香ちゃんて、好きな人とかは?」

「あ、そういうのは……」

「居るんだあ……アハハ」

「いや、あの、それはですね」

 だめだ、墓穴掘ってる!

「良い芝居と、良い恋……恋は、未だに失敗ばっかだけど」

 あたしも、そう……とは言われへんかった。


「あ、東亜学園ですよ!」

 たしかに、あらためて見る東亜は、どこかの本社ビルって感じだ。

「あ、プレゼンの部屋に灯りが点いてる!」

 どうやら、ドッキリだったよう。学校に入ったら、本で読んだ坂東はるかさんの、お友だちや関係者が一堂に会してた。

 なんだか知らないうちに、あたしも中に入ってしもて遅くまで同窓会に参加してしまったよ。

 

 ※ 主な登場人物

  •  鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生
  •  東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
  •  香里奈          部活の仲間
  •  お父さん
  •  お母さん
  •  関根先輩         中学の先輩
  •  美保先輩         田辺美保
  •  馬場先輩         イケメンの美術部
  •  佐渡くん         不登校ぎみの同級生

 

 

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ライトノベルベスト『メゾン ナナソ・2』

2021-12-18 04:41:32 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

『メゾン ナナソ・2』   




 

 グーグルの地図を検索しても出てこなかった。

 あの川を北に500メートルのはずだ。

 1キロ先にまで伸ばして探してみたが『メゾン ナナソ』は見当たらない。

 確かにナナさんは風呂帰りのクミちゃんと大介くんの後を、一分ほどおいて川沿いを帰って行った。

 風呂屋までは分かった。

 鶴の湯という銭湯で、グーグルをウォーキングモードにして地図の中を歩いてみても、ちゃんと鶴の湯はあった。でも、その先が判然としない。

 これは川沿いといっても路地を入った脇道なんだろう。グーグルの地図でも入りきれない脇道はいくらでもある。

 ナナさんが気になったのか、時代遅れの『メゾン ナナソ』の名前から思い浮かべたアパートが気になるのか、クミちゃん大介コンビの醸し出す昭和の匂いが引きつけるのか……たぶん全部。

 

 グ~~~~

 

 いや、それ以上考える前にボクは朝飯を食べていないことに気づいた。

 財布をつかんでコンビニを目指す。

 コンビニは臨時休業だった。

 ドアの前に警官が立ち、規制線のテープが張られている。

 あ……思い出した。

 昨夜夢うつつでパトカーのサイレンを聞いた。このコンビニに強盗でも入ったんだろう。

 仕方なく、もう一つ向こうのコンビニを目指す。

 その途中で気づいた。

 これは、あの川沿いの道に出る。スマホで検索すると、川沿いに一度だけ行ったことがあるコンビニがある。

 目標変更。

 コンビニで、パンとカフェオレを買って、外に出た。

 照り付ける太陽にクラっときて自転車にぶつかりそうになった。

 自転車は器用にボクを避けて川沿いを北の方に……少し驚いた。

 自転車は、今時めずらしいドロップハンドルに八段はあろうかと思われる変速機がついていた。

 えらい自転車マニアなんだと思いながら自然に川沿いを北に歩いていった。

『メゾン ナナソ、この先北に300メートルです』

 スマホが、検索もしないのに教えてくれた。

 資材置き場を過ぎると道幅が狭くなり、細い路地が目に入った。

 

 路地を抜けると、そこに『メゾン ナナソ』があった。

 

 木造モルタル二階建て。玄関は申し訳程度の庇があり、庇の上には木彫り金塗りの『七十荘』の立体文字が薄汚れて傾いている。間口一間の入り口は両開きだけど、片方だけが開いていて、閉じた側にはアクリルかなんかの切り抜きで『メゾン ナナソ』とあった。

「あら、夕べのキミじゃない!」

 ナナさんが、アパートの横から箒を持って現れた。

「お早うございます」と言いながら、手に持っていたコンビニの袋が無くなっているのに気付いた。

「ハハ、朝ごはん買いに出て、落っことしちゃったの?」

 

 笑いながらナナさんは、トーストを焼いてスクランブルエッグをこさえてくれた。

「ナナソって、七十って書くんですね」

「うん、すごく読みにくいから入り口にカタカナにしたの」

「じゃナナさんのナナソも七十って書くんですか?」

「そうよ。子供のころから苦労したわ。だれがよんでもナナジュウだもん。下のナナは奈良県の奈に菜っ葉の菜。これはまんまだから、たいがいナナちゃんで通ったけどね。あ、そういや、君の名前聞いてなかったよね」

「ですね。ボク……こう書くんです」

 メモ帳を借りて、山田五十六と書いた。多分読めないだろう。

「ヤマダイソロク……君もちょっと珍しいね」

 ナナさんは、あっさりと読んでしまった。

「今時アパートの経営ってむつかしいんでしょうね」

 失礼な質問をあっさりしてしまった。

「古いからね、七部屋あるけど、詰まってるのは六部屋だけ。月二万円」

「二万円!?」

「よかったら空いてる部屋見ていく?」

 部屋は意外に広かった。

 四畳半のキッチンに八畳の部屋にトイレ付。これなら五万でも安いと思った。

「気が向いたらいつでも越しといでよ。今のアパート、ここの倍は取られてるでしょ?」

「ええ……」

「お風呂が無いのがね……管理人室にはちっこいけどあるの。女性に限って使ってもらってる。男の邪魔くさがりは台所のシンクで風呂がわり。みんな器用よ」

「失礼ですけど、家賃収入だけじゃやってけないでしょ?」

「もちよ。あたしはボランティアのつもりで管理人やってるの。相続したときは即更地にして売り飛ばそうと思ってたんだけどね」

「なにか、わけでも?」

「みんないい人ばっかだからね」

 それから他愛ない話をしたが、ナナさんの本業が作家だということ以外は忘れてしまった。

 話し込んでいるうちにボクは眠ってしまって、気が付くと自分の部屋で居眠っていたから……。

 

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明神男坂のぼりたい13〔小野田少尉〕

2021-12-17 06:57:39 | 小説6

13〔小野田少尉〕          


 

 
 珍しく、お父さんが二階のリビングでスマホを見ている。

「あら、珍しい」


 思ったままが口に出たあたしは、スゥエットの上下にフリ-スいう定番のお家スタイルで朝ご飯。

 今日は、久々に、完全オフの休日。

「小野田さんの映画が出来てたんだ、いやあ、秋のカンヌ映画祭に出てたんだけど、気が付かなかった」

「オノダさん……どこの人?」

 あたしは、お気楽にホットミルクを飲みながら、お父さんのいつになくマジな視線を感じた。うちは鈴木で、お母さんの旧姓は北野。オノダいう親類はいない。淡路恵子やら中村勘三郎が亡くなったときもショボクレてたから、古い芸能人かと思った。

「明日香には分からない人だよ」

 お父さんは、そう言って、一階の仕事部屋に降りていった。

「誰なの、オノダさんて?」

 同じ質問をお母さんにした。

「戦争終わったのも知らずに、ルバング島ってとこでずっと一人で戦争やってた人。それより明日香、家にいるんだったら、洗濯ものの取り込みお願い。洗剤も柔軟剤も変えたから、ちょっと仕上がりが楽しみよ。お母さん、恵比寿で友だちと会ってくるから、ちょっと遅くなる」

「恵比寿!? だったら豚まん買ってきてくれると嬉しい」

「あ、時間あったらね。それより、家に居るにしても、もうちょっとましな格好したら、ちょっとハズイわよ」

「へいへい」

 三階の自分の部屋に戻って、ベランダを開ける。洗濯物のニオイを確認。

「う~~~ん、ちょっと爽やか的な?」

 それから、ストレッチジーンズとセーターに着替えてパソコンのスイッチを入れる。

 なんの気なしに、お父さんが言っていた「オノダ」を検索した。候補のトップに小野田寛郎というのが出てたんでクリックした。

 ビックリした!

 穏やかそうな笑顔なのに目元と口元に強い意志を感じさせるオジイチャンの写真の横に、みすぼらしい戦闘服ながら、バシっときまって敬礼してる中年の兵隊さん。どうやら、新旧二つの小野田さん。

 昭和の偉人さんのようだ。思わずネットの記事やらウィキペディアを読んだ。

 1974年まで、三十年間も、ルバング島で戦争やっていたんだ。

 盗んだラジオで、かなりのことを知っていたみたいだけど、今の日本はアメリカの傀儡政権で、満州……これも調べた。中国の東北地方、そこに亡命日本政府があると思ってたみたい。

 日本に帰ってからは、ブラジルに大きな牧場とか経営して。細かいことは分からないけど、画像で見る小野田さんは衝撃的だった……1974年の日本人は、今のあたしらと変わらない。せやけど小野田さんはタイムスリップしてきたみたいやった。

 その小野田さんの映画がフランス人の監督で作られたんだ。

 ヘーホー……

 あたしの好奇心は続かない。昼過ぎになってお腹が空いてくると、もう小野田さんのことは忘れてしまった。

 で、コンビニにお弁当を買いにいった。

 お父さんは粗食というか、適当にパンやらインスタントラーメン食べて済ましてるけど、あたしはちゃんとしたものが食べたい。

 

「アスカじゃんか」

 

 お弁当を選んでたら、関根先輩に声をかけられた。

 心臓バックン!

「美保先輩はいっしょじゃないんですか?」

 と、ストレートに聞いてしまった。

「美保はインフルエンザ」

 

 で、二人で喫茶店に行ってランチを食べた。コンビニ弁当を選ぶ前でよかった(^▽^)/

 

「アスカと飯食うなんて、中学以来だなあ」

「そ、そですね(;'∀')」

 

 そこから会話が始まった。

 喋ってるうちに小野田さんの顔が浮かんできて、無意識に先輩のイケメンと重ねてしまう。

―― 覚悟をしないで生きられる時代は、いい時代である。だが死を意識しないことで日本人は、生きることをおろそかにしてしまっているのではないだろうか ――

 ネットで見た小野田さんの言葉がよみがえる。

 憧れの先輩の顔……なんだけど、取り込むのを言われてた洗濯物を思い出した。

 その時、店に入ってくるお客さんがドアを開け、その角度で一瞬自分の顔が映った。しょぼくれてはいてるけど、先輩と同じ種類の顔をしていた。

 それから、互いに近況報告。二月の一日に芝居するって言ったら「見に行く」て言ってもらえた。

 ラッキー!

 家に帰ってパソコンを開いたら、蓋してただけやから、小野田さんのページが、そのまま出てきた。

―― ありがとう ――

 小野田さんに、そう言われたような気がした。

 

 ※ 主な登場人物

  •  鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生
  •  東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
  •  香里奈          部活の仲間
  •  お父さん
  •  お母さん
  •  関根先輩         中学の先輩
  •  美保先輩         田辺美保
  •  馬場先輩         イケメンの美術部
  •  佐渡くん         不登校ぎみの同級生

 

 

 

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ライトノベルセレクト『メゾン ナナソ・1』

2021-12-17 05:59:45 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

『メゾン ナナソ・1』   
       


 
 
 気が付いたら彼女はそこに居た。

 サロペットジーンズのスカート。サラリとした髪が、僕の二の腕にかかったので気づいた。
 
「ごめんなさい、せっかく集中してたのに」
 
 化粧気のない、でも十分にきれいな笑顔で彼女は言う。そこはかとなく、懐かしくいい香りがした。
 
「いいですいいです、どうせ暇つぶしのゲームですから……」

 ボクは今時めずらしい浪人生だ。
 
 贅沢を言わなければ入れる大学はあった。
 
 でも、そういう大学は進路実績がイマイチなので、当初の希望校を一般入試で四つ受けて見事に落ちた。
 
 で、今は親の仕送りとバイトで浪人をやっている。

 バイトが終わると、三日に一度くらい、この『志忠屋』に来る。
 
 本店は大阪にあるんだけど、バイトで腕を磨いた多恵さんが東京にブランチを出した。
 
 本店のマスターは親父と古い友達で、バイト時代の多恵さんとも顔なじみだったので、自然と、ここに寄り付くようになった。
 
「スマホ、面白い?」
 
「あ、いや……癖なんでしょうね、女の人が無意識に髪を触るみたいな」
 
 言いながらマズイと思った。彼女が、たった今まで、それをやっていたような気がしたから。
 
「フフフフ……」
 
 図星だったのか、穏やかに笑って。でも、それが魅力的で、内心オタオタしてしまい、言葉の接ぎ穂が無くなってしまう。

 それからサロペットの彼女も黙った。
 
「あの、近所の方ですか?」
 
「そうよ、そこの川沿いの北。500メートルぐらいのところ。メゾンナナソに住んでるの。これでも管理人」
 
「え……」
 
「ハハ、似合わないでしょ。持ち主の伯母さんが亡くなってね、アパートってむつかしいのよ。住んでる人がいるからすぐには処分できない。で、立ち退きとか処理がつくまで、あたしが、親の代わりに管理人。まあ、いい人ばかりだから、あたしでも務まる」

 それからなんだか話し込んで、気づいたら二人で川沿いの生活道路を歩いていた。

 横丁から、お風呂帰りらしいアベックが出てきて、サロペットさんに「こんばんは」と小さく挨拶した。
 
「うちの住人のクミちゃんと大介君。仲いいでしょ」
 
 二人は無言で、先を歩いていく。サロペットさんは気を使って歩調を落とし、ボクも、それに倣った。
 
「あの、お風呂ないんですか、アパート?」
 
「あったらアパートなんて言わない」

 前を歩く二人が、なんだか新鮮だった。無言なんだけどスマホをいじるわけでもなく、それでいてちゃんとコミニケーションがとれている。
 
「あ、あなた方向逆なんじゃない?」
 
「あ、ほんとだ」
 
 ボクは南へ行かなければならないのに北についてきてしまった。

「あたしナナソナナ。また志忠屋で会えるといいわね」
 
「あ、ボクは……」
 
「ボクはボクでいい。じゃあね」
 
 サロペットのナナソさんは、クルリと髪をなびかせて振り返ると、軽やかな足取りで向こうに行った。

 ナナソナナ……ハハ、上から読んでも下から読んでもいっしょだ。でも、どんな字を書くんだろ?

 そんな疑問が、懐かしい香りがシャンプーの香りであることに気づくことと引き換えに残った……。
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明神男坂のぼりたい12〔てへぺろ(๑´ڡ`๑)〕

2021-12-16 08:09:26 | 小説6

12〔てへぺろ(๑´ڡ`๑)〕  

     

 

 ジリリリリ! ジリリリリ!


 え、なんで目覚ましが!?

 頭が休日モードになってるんで、しばらく理解できなかった。

 そうだ、今日はドコモ文化ホールで、裏方の打ち合わせ兼ねてリハーサルだったんだ!

 朝のいろいろやって……女の子の朝ていろいろとしか言えません。

 こないだリアルに書いたら自己嫌悪だったしね。

 

「明日香、タクシーで行け!」

 

 五千円札出してお父さんが言ってくれる。

「ううん、電車で行く!」

 まだ、ギリ間に合うって気持ちと、タクシーだったら日課の男坂とは逆方向の昌平橋通りに出なきゃならない。

 大事な日に明神様をスルーするわけにはいかない!

 

 で、いつものように男坂駆け上がる。

 

 キャ!

 神田明神男坂門の標柱曲がったところで巫女さんと鉢合わせ!

 申し訳ないことに、タタラを踏んで巫女さんの胸を掴んでしまった(#'∀'#)!

「す、すみません! 急いでたもんで!」

「え、あ、うん、大丈夫、気にしないで(^_^;)」

 寛容な笑顔に、もう一度ペコリと頭を下げて、そのまま随神門から出てしまい――しまった!――と気が付いたときには鳥居を出てしまって、明神様にあいさつできなかった。

 とっさに振り返って最敬礼!

 もっかい回れ右して駆けだそうと思ったら、だんご屋のおばちゃんと目が合う。

 申し訳ないけど、アハハとてへぺろ(๑´ڡ`๑)して駅に向かう。

 まあ、おばちゃんも笑ってたんで、いいや。

 

 で、けっきょく早く着きすぎて、ホールの前で待つ。

 

 やがて、東風先生と美咲先輩がいっしょに来た。

「お早うございます」

「お早う、明日香」

 と、先生。

「なんだ、まだ開いてないの?」

 挨拶も返さないで美咲先輩はぷーたれる。

 すると、玄関のガラスの中から小山内先生が、しきりに指さしてるのに気が付いた。

「え……」

「ああ、横の関係者の入り口から行けるみたい」

 美咲先輩が言う。こういうことを読むのは上手い。

―― ほんとうは、美咲先輩の芝居だったんですよ! ――

 思っていても、顔には出ません出しません。


 ちょっと広めの楽屋をとってもらってるんで、直ぐに稽古。

 台詞も動きもバッチリ……なんだけど、小山内先生は「まだまだ」と言う。

「エロキューションが今イチ。それに言った通り動いてるけど、形だけだ。舞台の動きは、みんな目的か理由がある。女子高生の主人公が、昔の思い出見つけるために丘に駆け上がってくるんだ。十年ぶり、期待と不安。そして発見したときの喜び。そして、そのハイテンションのまま台詞!」

「はい」

 ほんとうは、よく分かってない。

 でも、返事はきちんと真面目に。

 稽古場の空気は、まず自分から作らなくっちゃ。

 稽古が落ち込んで損するのは、結局のとこ役者。

 そして、今回は役者はあたし一人。

 

 よーし、いくぞ!

 

 美咲先輩は気楽にスクリプター。

 まあ、がんばってダメ書いてください。書いてもらって出来るほど上手い役者じゃないですけど。

 もう、本番二週間前だから、十一時までの二時間で、ミッチリ二回の通し稽古。

「もうじき裏の打ち合わせだから、ダメは学校に戻ってから言う」

 小山内先生の言葉で舞台へ。

 南風先生はこの芸文祭の理事という小間使いもやってる。ガチ袋にインカム姿も凛々しく、応援の放送部員の子らにも指示をとばす。

 本番通りの照明(あかり)作って、シュートのテスト。

「はい、サスの三番まで決まり。バミって……バカ、それ四番だろが! 仕込み図よく見なさい!」

 東風先生の檄が飛ぶ。

 放送部の助っ人はピリピリ。

 美咲先輩はのんびり。

 美咲先輩、本番は音響のオペ。で、今日は、まだ音が出来てないから、やること無し。

 正直言て、迷惑するのは舞台に立つあたしなんだけど、学年上だし……ああ、あたしも盲腸になりたい。

「それじゃ、役者入ってもらってけっこうです」

 舞台のチーフの先生がOKサイン。

「はい、じゃ、主役が観客席走って舞台上がって、最初の台詞までやりましょ。明日香いくぞ!」

「はい、スタンバってます!」

 一応舞台は山の上いう設定なんで、程よく息切らすのに走り込むことに演出変えになった。

「……5,4,3,2,1,緞(ドン)決まり!」

 あたしは、それから二拍数えて駆け出す。

 階段こけないように気をつけながら、自分の中に湧いてくるテンション高めながら、走って、走って、舞台に上がって一周り。

 

「今日こそ、今夜こそあえるような気がする……!」

 

 ああ、さっきまでと全然違う。

 こんなにエキサイティングになったのは初めて! いつもより足が広がってる! 背中が伸びてる! 声が広がっていく!

「よっし、明日香。その声、そのテンション、忘れんなよ! 舞台の神さまに感謝!」

 小山内先生は、舞台には神さまが居るって、よく言う。

 ただ、気まぐれな神さまなので、誰にでも微笑んではくれない。

―― あと二週間、微笑んでいてください ――

 心の中でお願いした。

 さあ、昼ご飯食べたら、学校で五時まで稽古。

 がんばるぞ!

 気を引き締めて、観客席見ると美咲先輩が見事な大あくび。

 カチン!

「もう、あなたの毛は生えたのだろうか!?」

 美咲先輩めがけてアドリブを、宝塚の男役風にかます。

 さすがにムッとした顔……舞台のチーフの先生が。

―― え、なんで? ――

「あの先生はアデランスなんだよ、バカ!」

 東風先生に怒られてしまう。

 てへぺろ(๑´ڡ`๑)

 …………

 ああ、スベッテしまった(╥﹏╥)。

 

※ 主な登場人物

  •  鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生
  •  東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
  •  香里奈          部活の仲間
  •  お父さん
  •  お母さん
  •  関根先輩         中学の先輩
  •  美保先輩         田辺美保
  •  馬場先輩         イケメンの美術部
  •  佐渡くん         不登校ぎみの同級生

 

 

 

 

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ライトノベルベスト『わたしの彼は吸血鬼・3』

2021-12-16 05:23:34 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

『わたしの吸血鬼・3』  

     


 事務所に戻ると衣装の仮縫いが出来ていたので、その補正をやった。

 明日は、新曲のプロモを撮るんで、時間がないのだ。

 アイドルは忙しい……正確には、アイドルグループが忙しいのであって、わたし個人が忙しいのとは意味が違う。そりゃあ、センターの潤ちゃんなんかはピンの仕事も多く「あたし、忙しいの!」って、資格はあると思う。でも、選抜のハシクレに過ぎないわたしは、たまにバラエティーのニギヤカシに呼ばれる以外は、モエちゃんといっしょのラジオが一本あるっきり。

 アイドルは忙しいなどと、イッチョマエなこと言えてるのはハシクレ選抜であるおかげ。

「おつかれさまー」

 そう言って、帰宅できたのは、もう日付が変わりそうな時間だった。

 すぐにお風呂のスイッチ入れてメイク落としていると、鏡にお月さまが映っている。

 フルムーンだ。

「……こういう風流なことに気づけるのは、わたしの感性……それとも、ただ潤ちゃんほどには忙しくないせい?」

 アイドルに相応しいロマンチストだからだよ……

 遠くから声がした。

 え? え?

 鏡に映った満月の中にこうもり傘差した男の人が、メリーポピンズみたく、わたしの部屋のベランダに近づいてきた。

「あ、アルカード……!?」

「おっと、サッシは開けちゃいけないよ。今夜は、キミの素顔を見られただけで十分さ」

「あ、ハズイ!」

「そのままで……」

 アルカードの声にはあらがえなかった。わたしは、じっとアルカードの目を見つめてしまった。

「さあ、もう一分だ。まもなくお風呂も沸くよ。じゃあ、またね……」

 そういうと、アルカードは、こうもり傘を差して、再び満月の中に消えていった。

 それから、アルカードとの距離が縮まるのには時間はかからなかった。

 お互いのグル-プの曲は三日後には、オリコンの一位と二位を競うようになった。

 アルカードは三日間、夜になるとやってきてくれた。

 ベランダにばかり居られては、かえって人目に付く。四日目の夜、わたしはアルカードを部屋に入れた。

 アイドルといっても、わたしクラスのアイドルは、そうそう良いところには住んでいない。キッチンとバスの他は、ウォークインクロ-ゼットが付いているのが取り柄という、1Kだ。むろんセキュリティーなんかはしっかりしていて、多少の物音が上下左右の部屋に漏れることはないけども。

 アルカードは、部屋の隅で体育座りして、わたしを見つめている。話は、とりとめがないってか、もう小学生並。

「どこのロケ弁が美味しい?」「11時回るとタクシー券もらえることが分かった!」「潤はデベソなんだよ。でも『さよならバタフライ』のプロモとるときに整形したの。デベソの整形!」「アハハ」

 てな感じ。

 けして、わたしが座っているベッドの上には上がってこようとはしない。そして、長くても三十分もすると、こうもり傘で帰っていく。

 わたしは、アルカードが耐えていることが分かった。わたしたちは、エレベーターの中でAの行為にまでは行っていたけど、Hにはほど遠い。

「そこじゃ遠いよ、こっちにおいでよ(#^0^#)」

 わたしは、ベッドの半分を空けた。二回同じことを言って、やっとアルカードはベッドの端に腰掛けた。

「もうちょっと、寄ってきていいよ……」

「これ以上、近寄ったら、オレは、もう後戻りできない」

「……できなくってもいいよ」

「ありがとう、その前に言っておかなきゃならないことがある」

「オレは、ほんとは吸血鬼の子孫なんだ」

「え……?」

「マジで……仲間はもう人間の血が濃くなり過ぎて、もう吸血鬼とは言えない。サイドボーカルのアルカーダは、まだマシな方だけど、クォーターさ。もう吸血の必要もない。でも、オレは違うんだ。ネイティブな吸血鬼なんだ。このグループ始めたのも、オレに必要な血液を集めるためなんだ」

「冗談でしょ?」

「本当さ、もう昔みたいな吸血はやらないけど、ってか、できない。だから輸血用の血液のいいのを買ってまかなっていた。でも、不適合な血が多くて、もう、オレは見かけほど丈夫じゃないんだ」

 そのとき、月光が差し込んできて、アルカードの手を照らした。まるで八十歳のオジイチャンのようだった。

「その手……」

「もう、手まで若さを保っていられなくなってきた……も、もう帰るよ」

「待って!」

「オレ、最初はキミの血が欲しいためだけに、近づいた。あのグル-プの中で無垢なのはキミ一人だったから」

「無垢って……?」

「キミは、まだ男を知らない。キスさえ、あれが初めてだった。そして、オレが変な現れ方をしても、キミはなんとも思わなかった。そんなキミを好きになってしまって……もう、キミの血はもらえないよ」

「……血を吸われたら、わたしも吸血鬼になってしまうの?」

「それはないよ。母さんと父さんが神さまと契約したんだ。オレを生かしておくために、もう吸血鬼のDNAは残さないって。自分たちの命と引き替えにしてね」

「だったら、わたしを。あしたはオフだから、一日貧血で倒れていたっていいんだから!」

「だめだ、どうせ、吸血鬼は、オレの代でおしまいなんだ。早いか遅いかだけの違い……」

 ドタ

 そこまで言うとアルカードは倒れ込んでしまった。わたしは彼の口をこじ開けて、わたしの首にあてがったが、アルカードは、もう噛みつく力も残っていなかった。

 こうと決めた女は強い。

 わたしはカッターナイフをもってくると、開いたアルカードの口の上で手首を切った。そんなに深い傷ではない。これからも彼に血をあげるためには、これで命を落とすわけにはいかない。

 ポタリポタリと、わたしの血はアルカードの口に入っていく……しだいに、血の色を取り戻していくアルカード。

「よかった、アルカード生きてちょうだい」

 すると、アルカードが急に苦しみだした!

「こ、この血は!」

 アルカードは、顔を隠すようにして、ベランダから、いつもの十倍ぐらいのスピードで逃げていった。

「あ……!?」

 わたしは思い出した。わたしは男性経験はない。そればっか思っていた。これに間違いはない。針千本飲んでもいいくらい間違いはない。

 でも、選抜に入るまでに、三度ほど整形をやっている。それも潤ちゃんのデベソの手術のようなものじゃない。一度は出血が多く輸血したこともあった……あれだ!

 S・アルカードは、突然の解散になった。原因はアルカードの体調不良。解散記者会見には、アルカードのお父さんが車椅子に押され、酸素ボンベを付けながら現れ、息子のことを謝っていた。

 お父さんは、記者会見が終わると、わたしの方を見てニッコリと笑った。で、気がついた。

 アルカードのお父さんは、彼をたすけるために、とうに亡くなっているはずだってことを……。

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銀河太平記・084『パチパチに手伝わせる』

2021-12-15 13:58:47 | 小説4

・084

『パチパチに手伝わせる』 本多兵二    

 

 

 おーい、ニッパチ!

 

 呼びかけると、構内作業車の姿のままリアルハンドを振って応えた。

「まだ、A鉱区の後始末か?」

『いえ、あらかた終わったんですけどね、存在価値を認められて、いろいろお役に立ってるんです』

「A鉱区以外の仕事だってぇ?」

 恵も、面白そうに質問する。

『ええ、イッパチとサンパチが助っ人で来てくれてるじゃないですか。ぼく達って共感連携しあって仕事するから、効率がいいんですよ』

 今までパチパチは、カンパニー、ナバホ村、フートンと、別々に働いていた。

 今度の落盤事故は規模も被害も大きいので、ヒムロ社長も、節を曲げて申し入れを受け入れ、三台のパチパチを使っている。

 一台一台の能力は知れている。

 でも、三台が共感し合って働くと、×3以上の働きをする。

 構内作業車パターンの場合、積載能力は2トンに過ぎず、5トン10トンが当たり前の専業作業車には敵わない。

 しかし、パチパチは、作業の進捗に合わせて、特定の作業や現場に集中したり、その可変能力で、並みの作業車では通れないところを通ることができる。

 また、カンパニー全体の作業量と進捗具合を把握しているので、本務の運搬作業の合間に他の仕事をこなすこともできるのだ。

 それを見越して、ニッパチを探していたんだが、いや、僕が思っていたよりも仕事が早い。

『なにか御用ですか?』

「ああ、おタキさんに頼まれて、食材を取りに来てるんだけど、ちょっと量が多いんで、手伝ってくれないか」

『いいですよ、データください』

 ハンベを赤外線通信にして作業内容を送ってやる。

『うわあ、キノコ狩りだ! やりますやります(^▽^)/』

「じゃ、こっちだ」

「ニッパチ」

『なんですか、恵さん?』

「食堂とはエンゲージしてないの?」

『おタキさんは、いい人なんですが、ネットワークで仕事するのは嫌がるんです』

「「ああ……」」

 恵と声が揃ってしまった。

 僕は、元々は扶桑将軍の近習。日々の役目は、経験と推察でやっている。

 ネットワークやデジタルに頼っていると、平時は便利だが、戦争や大災害の時には間に合わないので、上さまの意向で、アナログなシステムでやっている。

 恵の天狗党も似たり寄ったりな気がする。

 おタキさんの経歴は分からないが、たぶん、同じようなところで働いてきた人なんだろう。

 

『拙者も手伝うでござるよ(^▽^)/』

 

 栽培庫の前でサンパチが待っていた。

「さっそく共感かぁ?」

『イッパチも来たがっていたでござるが、拙者がジャンケンで勝ったでござるよ(^▽^)』

 どうやら落盤事故の後始末も終盤のようだ。

 

『う~~~ん いい香り』

 シメジを収穫しながら、香りを楽しむニッパチ。

 サンパチは黙々と仕事をこなしているが、二人が感じているのは同じことだ。

 頭の上に仮想ディスプレーを出して、香り成分の化学式と成分の割合を数値化して感動している。

 同じ数値が出ると、それがピカピカと点滅している。

 どうやら、共感し合って喜んでいることを現しているようだ。

「あんたたち、手触りはどうよ?」

 恵が意地悪な質問をする。

『こんな感じです!』

 ニッパチもサンパチも、キノコ表面の弾力や水分、温度などを数値化し始める。

「そういうの禁止、自然に湧いてくるままにやってごらんよ」

 そう言うと、二人ともペースを落として作業に没頭しはじめた。

『む、難しいでござる……』

 サンパチは、仮想ディスプレーを明滅させて固まってしまう。

 ニッパチは、ペースこそ落ちてきたが、手つきが愛しんでいるような感じになってきた。

『チルルの手を握っていた時を思い出します……』

 キノコと人間を同じだと言い始めた。

『潤いが……生き物としての潤いが……似ているかもしれません』

 サンパチの仮想ディスプレーは、数値も化学式も現さず、グリーンの明かりをホワホワとさせるだけだ。

 人の手とキノコが似ているというのは、少し突飛だけども、なにか深遠なことを言っているような……いや、パチパチたちはロボットのカテゴリーにも入らない汎用作業機械なんだ。

 ニッパチとサンパチが加わったので、作業は格段に捗った。

 最後のエノキをパッケージに入れて、恵が、目を輝かせた。

 

「ねえ、ちょっと思いついたんだけど!」

 

 この目の輝き、ちょっと危ない気がした。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥              地球に帰還してからは越萌マイ
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室                西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、おタキさん)
  • 村長                西ノ島 ナバホ村村長 
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地

 

 

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