淡く綺麗で幻のような画面である。白いテーブルクロスはコーヒーミルやポットに対し微妙な位置関係を提示している。物が置いてある平面としての奥行きを感じさせず、むしろカーテンか何かのように垂直とはいかないまでも斜めに揺れているような不思議な背景になっている。海、潮風、初恋の香りを感じさせる。
にもかかわらず、煙草とマッチという大人の誘惑が、逃げれば追い追えば逃げるといった、あたかもダンスのリズムを思わせるような距離感をもって置かれている。
これは詩といわず何と言おう。美しい旋律が流れている、切なく甘い彩色のハーモニー。
ガラスの灰皿にはすでに吸い終わった短い煙草が三本、しかし未だ着火の気配もない煙草が一本。待っているのか諦めたのか・・・マッチとは距離がある。というか、黒いポットが阻止しているようにも見える。小粋に被せたハットは自身の擬人化か。水差しの容器であれば中には液体(水または湯)が入っていて、その注ぎ口は(点けたら、すぐに消すぞ)といつたポーズのユーモアがある。
そのポットを思い切り押し倒すかに見える真直ぐ伸びたコーヒーミルの取っ手、しかしこのコーヒーミル、立っているのが困難なほどの薄い板状で、回す前に倒れてしまうことは必至。
輝色のコーヒーミルは女、黒いポットは男。二人の関係の危うさ。ポットの注ぎ口は誘っているようだし、コーヒーミルの取っ手は拒否を示しているようでもある。いえ、拒否する前に倒れこむ想定の画かもしれない。
マッチの箱は開けられ、煙草も用意されている。
けれど、ストップ・ザ・ファイアー・・・黒いポットの自制心。緊迫の恋の状況を描いた一枚だと解釈したい。(写真は神奈川県立近代美術館カタログより)
にもかかわらず、煙草とマッチという大人の誘惑が、逃げれば追い追えば逃げるといった、あたかもダンスのリズムを思わせるような距離感をもって置かれている。
これは詩といわず何と言おう。美しい旋律が流れている、切なく甘い彩色のハーモニー。
ガラスの灰皿にはすでに吸い終わった短い煙草が三本、しかし未だ着火の気配もない煙草が一本。待っているのか諦めたのか・・・マッチとは距離がある。というか、黒いポットが阻止しているようにも見える。小粋に被せたハットは自身の擬人化か。水差しの容器であれば中には液体(水または湯)が入っていて、その注ぎ口は(点けたら、すぐに消すぞ)といつたポーズのユーモアがある。
そのポットを思い切り押し倒すかに見える真直ぐ伸びたコーヒーミルの取っ手、しかしこのコーヒーミル、立っているのが困難なほどの薄い板状で、回す前に倒れてしまうことは必至。
輝色のコーヒーミルは女、黒いポットは男。二人の関係の危うさ。ポットの注ぎ口は誘っているようだし、コーヒーミルの取っ手は拒否を示しているようでもある。いえ、拒否する前に倒れこむ想定の画かもしれない。
マッチの箱は開けられ、煙草も用意されている。
けれど、ストップ・ザ・ファイアー・・・黒いポットの自制心。緊迫の恋の状況を描いた一枚だと解釈したい。(写真は神奈川県立近代美術館カタログより)