続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『青春の泉』

2015-04-24 06:46:28 | 美術ノート
 鷲だろうか、嘴の先が違うのではないか。怖ろしい形相、肩の厳つさは鷲を想像させるが、これは『鳩』だと思う。
 並んで描かれたのは、『オリーブの葉』。

 ノアが水がひいたかどうかを見ようと放った『鳩/はと』であり、そのくちばしには、オリーブの若葉があったという。
 マグリットはその鳩を描いて『大家族』と名づけたが、鳩がオリーブの若葉を持ち帰り地が乾いたのを知って、神はノアとその子らを祝福して彼らに言う。
「生めよ、ふえよ、地に満ちよ・・・」
 ここから世界の大家族が始まったのだとマグリットは解釈したのではないか。


 その「鳩とオリーブの若葉」である。
 しかし、鳩はオリーブにそっぽを向いている。オリーブの若葉の否定である。
 石化ということは、永遠の死を意味している。石碑には「葦」を意味するフランス語が書かれているという、つまりは「英知の死」である。空は赤く染まり、怒りや怒号のような彩色は戦火をも思わせる。どちらにしても不安・不吉を象徴している。背後の巨大な鈴はにこやかに笑っているとさえ見える穏やかさである。鈴は人心を揺らすもの、掻き立てたものは何だったろう。
 私的解釈としての鈴は世間一般の風評、噂、流言ではないかと思っている。そして、右のオリーブの葉と共にこの石碑の背後にあるということは、つまりは否定の暗示である。ここに説明はなく、存在があるばかり。しかし、この沈黙は有言を秘している。

 廃墟のような地平に、「人間は考える葦である」という「葦」と書かれた墓標が過去の遺物のように刻まれている。ここに大家族は費えたという未来の恐るべき予言なのだろうか。鳩がオリーブを咥えて戻った聖書の逸話自体の否定なのだろうか。
「青春の泉」(The Fount of Youth)・・・地平は漠とし荒涼としている。「ROSEAU」という文字をを刻んだ石碑の鳩はオリーブに背を向け、巨大な鈴(世俗)を押さえている。
「ROSEAU」を胸に刻んだ《考えよ、さらば(未来は)開かれん》というメッセージを秘めた暗示とも思える。否定ではなく、思考/英知への大いなる肯定ではないか。新しい未来は必ずや沸くように出でるであろうと・・・。(写真は、国立新美術館「マグリット展」カタログより)

『冬のスケッチ』9 。

2015-04-24 06:37:43 | 宮沢賢治
       *
  黒くもの下から
  少しの星座があらはれ 橋のらんかんの夢、
  そこを急いで その異装束の
  脚の長い旅人が行き
  遠くで川千鳥が鳴きました。


☆告げる戒めは衝(重要)な精(こころ)である。
 座(星の集まり)の況(ありさま)は夢(空想)を究(突きつめて)告げている。
 総ては則(道理)による規約の重なりだと慮(思われる)。
 図りごとの講(はなし)を掩(隠し)遷(うつりかわるようん)宣(のべている)。
 懲(過ちを繰り返さないようにこらしめる)冥(死後の世界)である。

『城』1946。

2015-04-24 06:23:40 | カフカ覚書
 Kは、緊張し、口をすぼめて、じっと耳をかたむけていた。彼の下にある薪の山が、ごろごろとくずれだして、あやうく尻餅をつくところだったが、まったく意に介しなかった。彼はやっと立ちあがると、教壇に腰をおろし、フリーダの手をとった。フリーダは、その手を弱々しく引っこめようとした。Kは言った。


☆Kは緊張して聞き入っていた。地獄へ転がり落ち荒地へ滑り込むところだったが、全く気にしていなかった。禁錮の境遇で二重に仮定していたことだった。フリーダ(平和)は国(地方団体)の占領から恥辱を遠ざけようと試み、そして言った。