『フレッシュ・ウィドウ』
新しい未亡人、初々しい未亡人(?)未亡人を、新しい誕生のようなめでたく祝うような雰囲気である。哀と楽が混沌としており、共有している感もある不思議なタイトルである。
しかし作品は暗く閉じている。不明であり隠蔽、秘密の闇、暗黒、恐怖ですらある。開けてはならないタブーの窓を予感させる。少なくとも「さぁ、お入りなさい」という歓迎のムードもなければ、「みなさん、こんにちわ」という解放感など微塵もない。
本来、窓というものは(内と外)をつなぐものであり流通を由とするが、人の出入りする通行口ではない。
鑑賞者は窓の外に位置するとして漆黒の窓の向こうを凝視する、もちろん何も見えない。
ウィドウということは伴侶の死を意味する。たった今、伴侶(男)は死に、ウィドウ(女)が残された。事件である。この事件は一人の人間の変身を暗示している、なぜならフレッシュという刹那に悲劇はなくロマンの香りさえ漂う妖しさが隠れているからである。
写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク www.taschen.comより