『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(大ガラス)』
彼女の独身者たち、独身者たちを彼女が所有することはありえない。彼女の独身者たちには実態が見えない。その見えない者たちが花嫁を裸にする・・・意味は更に分裂し、粉砕されていく。負のスパイラル、言葉には負の側面があり、観念を破壊していく力があることの証明めくタイトルである。
しかもダメ押しのように《さえも》と続く。
作品はこれまでの作品の集合体の配置である。
上部のものは軽い印象で落下を余儀なくされる空気を孕んでいる。
下部のものは設置の床面を想像できるかのように並んでいる。水車が床面を掘り下げるはずはなく床面と思われる設定はもろくも崩壊、霧消する構成である。
全体は大ガラスの内部にあり、前後どちらに回っても視覚を自由に鑑賞者に委ねている。三次元空間を想起させるがあくまで疑似空間である。
機能的なもの、実質生産を可能にするものはここにはない。前向きなプラン(設計)は故意に外されており、花嫁という新しい門出に似合う光景は見えず、むしろ静かな破壊の脅迫さえも感じさせている。
この不思議に空漠とした構成はタイトルと共に世界の終わりのような空気感さえ潜ませている。まさに毅然とした《崩壊感覚》の景である。
写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク www.taschen.comより
戸外の雨風の響は少しも衰えない。秋山は起き直って、
「それから」
「もう止そう、余り更けるから。
☆己(わたくし)の我意である。
有(存在)は普く胸(心の中)にあり、章(文章)を推しはかる。
修(整えて)算(見当をつける)奇(珍しい)自記である。
詞(言葉)は予(あらかじめ)考えてある味(内容)である。
顔もからだつきもはっきりと貧相な女は、すくなくともほかにもまだ秘密をもっているにちがいありません。たとえばクラムとの関係のように、だれにも突きとめようのない秘密をもっているにちがいありません。それで、わたしは、そのころこんなことまで考えたものですわー
☆幽霊のような体は疑いもなく惨めであるにもかかわらず、秘密があるに違いありませんが誰も調べることはできません。クラムとの関係も表向きにすぎない。ペーピはこのように考え心配したのです。