続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

デュシャン『フレッシュ・ウィドウ』②

2020-05-08 06:45:41 | 美術ノート

 黒いなめし皮は光を通さず、したがって向こうは見えない。本来、窓というものは内から外、外から内に開かれるための通気口である。それがなぜ遮断されているのか、開けてはならない《禁止》の窓。しかし、なめし皮の一部には薄く亀裂の線が見える。時間だろうか・・・少し何かが動く、ひび割れ、崩壊、そして解放へと向かう予兆(しかしあまりにも僅かで動かし難い)。

 四角四面、融通が利かないことの例えである。正方形のなめし皮は動かし難い観念的な社会の比喩ではないか。歪むことを許可しない・・・。
『フレッシュ・ウィドウ』は現実の死を連想させない。むしろ、高らかに歌うデビューの凱歌のようであり、木枠のブルーは《空》であり、解放をイメージさせる。

 この窓を叩けよ!さすれば『フレッシュ・ウィドウ』の登場である。
 しかし、閉じている、男を滅した新しい女が生まれているにもかかわらず。
 ただ、この窓はそんなに簡単に開く窓ではなく、社会の正義から固く閉ざされている自由である。覆っている黒いなめし皮も、いつか劣化し、新しい自由な未来を見せるに違いない。


 写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク www.taschen.comより

 


『忘れえぬ人々』142.

2020-05-08 06:34:28 | 国木田独歩

この道幅の狭い軒端の揃わない、しかも忙しそうな巷の光景が、この琵琶僧とこの琵琶の音とに調和しない様でしかもどこかに深い約束があるように感じられた。


☆套(おおって)伏せている胸(心の中)を兼ねた譚(話)である。
 千(たくさん)の謀(はかりごと)がある講(話)である。
 講(話)を継(つなぐ)備(あらかじめ用意してある)を把(つかみとる)。
 総て備(あらかじめ用意してあるもの)を把(つかみとる)。
 隠した帖(ノート)の話の要は化(教えみっちびくこと)の諸(もろもろ)であり、新しく訳(ある言語をほかの言語で言い換える)を測(予想し)換(入れ替える)。


『城』3412。

2020-05-08 06:22:57 | カフカ覚書

わたしがあなたに恋をしたのは、そのころのことです。これまでにだれかをこんなに好きになったことはありませんでした。わたしは、もう何カ月も階下のちっぽけな、暗い部屋に寝起きをし、これから何年間も、へたをすると一生涯のあいだここでだれからも顧みられずにすごすのだと覚悟をきめていました。そこへ不意にあなたが、あわれな娘を救いだしてくださる英雄が、あらわれたのです。


☆わたしがあなたに恋をした時です。まだだれかを恋したということはありませんでした。わたしは数カ月物間、小さく暗い部屋に、生涯注意を払われることもなく過ごすのだと思っていました。そこに突然あなたが現れたのです。先祖の英雄、先祖の作り話の求婚者が自由に造られ現れたのです。