続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

D『秘められたる音』

2021-08-12 06:49:46 | 美術ノート

   『秘められたる音』

 震撼とするような作品である。果たして音とはなにか?
 音の根源は、物理的現象であり、物体の振動が空気を振動させて伝わる波である。

 作品では、縄紐でくくられたものが上下の鉄板に挟まれ、しかも台座は床面より上(浮いている)にあるという設えである。あたかも音はこの中に隠されているという風であるが、音を隠蔽するなんてことは考えにくい。防音はあるが、音を秘めるは無い。音に関して秘めるという行為は成立しない。

 端に状況により発生する、あるいはせざるを得ないのが《音》である。音に主体はなく従属であり、厳重に包囲し音を消すということは出来るかもしれないが、〈秘める〉とは言わない。

 作品を見ると、どうしてもこの中に《音》は存在するのだと思いこんでしまう。しかし音には実体がない。振動により音が発生したときにのみ、音は存在するのであって、振動(動く)という現象なしに音の発生はない。したがって、鑑賞者が作品に近づく、その周囲の空間も、縄紐でくくられた中も条件は全く同じである。

 デュシャンによって誘導された眼差しの奥に『秘められたる音』の正体がある。


 写真は『DUCHAMP』 www.taschen.comより


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