「シンデレラ」を考える:堀江珠喜教授大いに語る(スケッチ&コメント)
江嵜企画代表・Ken
堀江珠喜さんから「例年11月にやっていた『公開講座』を今年は12月12日に
しますのでご案内申し上げます。お忙しいこととは存じますが、お出まし願いました
ら幸いです」と認めたお手紙が届いた。楽しみにして家族と出かけた。演題は「シン
デレラ―玉の輿物語を比較文学的に考えるー」である。
お馴染みのピンクのドレス、ノースリーブ姿、マイク片手に、たおやかな笑みを絶
やさず、時にドキッとするようなギャグをいれる堀江ブシ全開で1時間半、教室を一
杯にした堀江ファンを魅了した。
シンデレラといえばガラスの靴。ところがフランス語のVaur(リスの毛皮)を
Verre(ガラス)と聞き間違えたとう話がある。仮にシンデレラの靴がリスの毛皮だっ
たらシンデレラ物語そのものが存在しなかったかもしれないと堀江さんは口火を切っ
た。この日配布されたレジメに載せたご自身が5歳の時、さる幼稚園でシンデレラの
継母の役で出た時の写真コピーから話を進めた。
哀れな境遇の女性が、ハンサムで優しく裕福な男性に見初められて結婚し、幸せな
人生を歩む、すなわち、シンデレラ物語は「玉の輿」として古今東西お人気ストー
リーですと堀江さん。女性が結婚によってしか、その存在を認められなかった時代に
おいては、夫の地位のみが自分の社会的立場を保証してくれた。女性は白馬に乗った
王子様にあこがれたのは当然でした。女性にとって結婚とはなにか。①生い立ち。②
子孫を残すこと。③おカネが常に背景にあった。特にお金が大きかったと堀江さん。
堀江さんのこの日のテーマは玉の輿物語を比較文学的に切り込む。イギリス、ウイ
ンザー家系図、オーストリア,ハプスブルク家系図、ロシア、ロマノフ家系図、明治
天皇からの日本の皇室の家系図紹介しながら、結構、シンデレラ婚(格差婚)の悲劇
が多いことが分かると堀江さんは話した。
ロシアのロマノフ皇帝の末路は悲劇的だった。なかでも悲惨なケースは、恋と帝位
の両方を選んだオーストリア・ハンガリー帝国の皇太子、フランツ・フェルディナン
トは、妻,ゾフィー・ホテクトとサラエボを馬車で視察中に暗殺された。この事件が
きっかけで第一次世界大戦が勃発した。
サラエボ事件が十分な解決をみせないままに第二次世界大戦がはじまったとも考え
られると堀江さん。シンデレラ物語を教室で語っているような呑気な世界情勢にあり
ませんでしょう。第一次大戦がはじまって今年は101年目。偶発的な事件をきっか
けに第三次世界大戦が起こってもおかしくないと仰天発言で堀江さんは会場を煙に巻
いた。
堀江さんは子供のころからBe yourselfを通してきたそうだ。自分自身を振り返っ
てみて玉の輿だったら大阪府立大学の教授なんかやっていない。女性が社会進出を始
め、社会的アイデンティが夫に帰属す必要がなくなった。「シンデレラ」が「セレブ
の男性を射止めた女性」から「自己実現を遂げた女性」へ変容していくのではないか
と、講演を結んだ。(了)