よみうり読書、芦屋サロン
江嵜企画代表・Ken
作家、原田マハさん(54)の「笑う家」、副題、「女2人旅またしましょな」(読売朝刊、10月16日掲載掌説)「読書会」が、11月4日(金)午後2時からルナホールで開かれ楽しみにして出かけた。恥ずかしながら原田マハさんが「楽園のカンヴァス」〈12年〉で山本周五郎賞、「暗幕のゲルニカ」〈16年〉が直木賞候補だったことも知らなかった。
原田マハさんは、生まれは東京、岡山で少女時代をすごした。関西学院大で4年間過ごした。ルナホールで開催されると聞いたとき、「ほんま?、やったー!!と思った。」と聞き手の西田朋子さんの司会の挨拶もそこそこに原田さんはマイクを取って喋り始めた。
作品の「笑う家」は、友だちが主人公に送ったメール「何とかがんばって通勤しようとおもうとってんけど、もう アカンわ。芦屋から、八尾、片道一時間半やで。残業終わってうちに帰りついたらもうへトへトやねん。」という関西弁全開で始まる。作品には春爛漫の芦屋川沿いの情景、化粧直しの終わった姫路城も出てくる。
作品「笑う家」は、倉敷を30年前に訪ねた大原美術館の工芸館にあった、ガラスケースの中に展示されていた小さな陶器。蓋つきの入れ物で青い絵が描いてあった。「その家が、私には、笑っているように見えてん」と続く。その陶器は、大正時代に日本にやってきて、日本で陶芸家になったバーナード・リーチの作品だった。(中略)作品は『なあ、ナガラ、そっちさえよければ、またたびしょか?』とメールで友達ナガラにメールしたところで終わる。
トークは、女2人旅がいかにお勧めかの話題で満開になった。女二日旅は面倒くさくないからいい。宿についてから相棒は買い物。自分は「ちょっと、今、寝とくわ、で済む。男と女の二人旅は、ね、面倒くさいでしょう?と会場に向けてウインクした。会場には、大いに納得したという雰囲気が生まれた。
原田さんは聞き手が一言話すと最低10倍は答える。聞き手の西田さんが「原田さんは飛び回っておられます。ようこそ「笑う家」を書いて下さり、芦屋のルナホールまで来てくださいました」というと、原田さんは「原田マッハと申します」と目いっぱいおどけた。戦闘機でいう秒速いくらいくらというあのマッハ。忙しいはずである。
トークのあと2人が質問した。一人は一つの作品はどのようにしてできるか。いつ書かれるのかと聞いた。旅先で書くことが多い。いままで40篇ほど書いたが90%が旅先だ。飛行機の中は外に出られないから仕上げ場所になる。6時間で飛んで外国へ出かけるときは一本短篇が出来ると話した。旅の途中、電車の中であれ、移動中にアイデアが浮かぶ。登場人物が決まる。名前が決まる。その時作品ができると答えた。
これを書いたら右に出るものはいないという作品を書きたいと言って、1時間半のトークを終えられた。谷崎の「細雪」がそうだ。耽美な世界が見事に描かれていると原田さんは言葉を添えた。
会場の出口で恒例により、トークと出演者,会場を写した特別号外が配られる。その日は4時半に上六へ出る所用があり、小走りにJR芦屋駅発3時45分発の新快速に間にあった。車内でやおら号外を見たら、なんと、「熱心に聞き入る参加者」として掲載された写真に筆者も入っていた。何かの記念にと思い、ご笑覧いただければありがたい。(了)