画・江嵜 健一郎
福島香織氏の「台湾総統選後の中台情勢と日本の今後を語る」講演会が3月16日(土)午後2時半から質問入れて4時半まで大阪府福祉会館であり楽しみに出かけた。会場の様子をいつものようにスケッチした。
福島氏は講演冒頭に正面に金門島の地図を映し2月の中国漁船と中国海巡局との衝突事件、金門島クルーズ観光船事故と3月の中国船転覆事故から話をはじめた。まず2月14日、中国漁船が制限海域に侵入、パトロール中の台湾巡視船と接触・転覆、2人が溺死した。中国当局は2月17日「厦門金門島海域は両岸の漁民にとって伝統的な漁場である。根本的には禁止・制限水域は存在しない。」と暗黙の了解として守られていた「禁止・制限水域」を無視する意思を表明した。福島氏は「乗組員は漁師ではなかった。」と指摘した。
2月19日、金門島発のクルーズ船が制限水域をわずか0.5海里で福建海警局巡視船の臨検にあった。クルーズ船乗組員11人と観光客23人は「このまま中国に連行されるかもしれない」と恐怖を感じたと話している。
3月14日、中国の漁船が金門島沖で転覆、沈没、中台双方が救助に当たり4人が救出、2名が行方不明の事件があった。「金門島は台湾からは100キロだが大陸から2キロの位置にある。中華民国の蒋介石が台湾に避難した時から中華民国の領土、つまり台湾の領土として認識されている。」
習近平氏は「ロシアが2014年にクリミアを併合した。それがロシアのウクライナ侵攻の契機となった。」ことを学習した。習近平氏の考え、すなわち中国政府の出方を知る上で「金門島を巡る動きは重要だろう」と福島氏は指摘した。
福島氏は「今年の全人代での「政府活動報告」の李強首相が読み上げた台湾関連の文言で「平和統一、一帯一路」から「平和統一」の表現が消えた。」と指摘した。全人代の解放軍武警代表団分科会会議で習近平氏は「新クオリティ戦闘力」を発展させ、包括的な海上軍事闘争の準備をせよ。新クオリティ生産力と新クオリティ戦闘力の成長を極めていく」と発言した。「新クオリティ戦闘力とはAIコントロールのドローンなどによる攻撃か」と福島氏は指摘した。
「ウクライナでロシアの戦闘もドローン戦争になってきている。台湾有事を想定すれば長距離ミサイルは必要がない。ドローン含め武器の整備も回収も安価で習得がより容易である.即応性が高い。」と指摘した。
「今年の全人代では李強首相による内外記者団との質疑応答がなかった。李強首相との対応を習氏が懸念したとの見方や李強氏が辞退した話もある。習氏の次が見当たらない。李強氏入れて下の内輪もめが伝えられる。」と指摘した。
「台湾総統選挙では習近平氏による恫喝は失敗した。民進党は蔡英文氏が車を運転し助手席に頼清徳氏と副代表の蕭美琴氏が乗るCMが成功したが得票率は40%。国民党侯友宣氏は38.6%。民衆党柯文哲氏は26.4%と三つ巴の結果となった。福島氏は「4年後の総統選では柯文哲氏は侮りがたい」と指摘した。
「日本のやるべきことは何か。地域防衛への参加。日米軍事同盟の強化と安定。台湾の安全を守ることが日本の利益、発展を合致するという認識を広める事だろう。」と講演を終えた。
講演のあと2人が質問した。一人は中国の不動産不況と上海ロッダウンについて聞いた。福島氏は「習氏は上海ロックダウンはテストした。習氏の行政能力は高くない。ご本人も頭が悪いと自覚しておられる」と答えた。2人目の方は「習氏の後任は」と聞いた。福島氏は「次を期待されていた副首相の薄熙来を習氏は嫌った。薄熙来氏は賄賂を理由に除名された。」と答えた。福島氏は「習氏の健康状態が余りよくないと伝えられる」と指摘した。台湾有事との関連で見ればタイミングが早まる可能性を示唆した。(了)