下野雅承氏at甲陽学院同窓会総会にて
母校甲陽学院同窓会総会が8月27日(土)午後2時から大阪キタにあるホテル阪急インタナショナルで開かれ楽しみにして出かけた。はじめに物故者黙祷,辰野久夫同窓会会長、今西昭甲陽学院中学校・高等学校校長の来賓挨拶のあと「デジタル・ファースト時代の到来」と題して、下野雅承、日本アイ・ビー・エム最高顧問(53回生:甲陽学院高校:1972年卒業)の話を聞いた。20分休憩の後、第2部として福永沙央里さんのピアノ演奏、「学校教育のマネジメントを振り返って」と題して永井哲郎、元大阪市教育長(53回生)、辻洋、元大阪府立大学理事長・学長(53回生)の対談形式の講演会があった。紙数の関係で下野氏の講演の様子のみご紹介する。
会場正面に53面の映像を映しながらよどみなく話した約1時間半の下野氏の熱烈講演は迫力満点だった。
「ひとつのイノベーションが劇的に街を変える。」1900年、ニューヨーク五番街。一日15万頭の馬車が往来した。10キロの道に馬糞の悪臭が覆っていた。1913年、T型フオード(1908年発売)が往来する画像とを並べた。次に下野氏は「100年後のバチカンでは」と、コンクラーヴェでローマ法王が選出された時のサンピエトロ広場の様子を2005年、ガラ系を手に持った群衆と2013年、スマホを手にした群衆とを並べた。2007年、iphoneが登場した。「たった6年で風景がすっかり変わりました。」と下野氏は言葉を添えた。
映像は目まぐるしく変わる。13枚目の「指数関数の恐ろしさ」では、「人間はリニア(直線的)な変化の中で生きているが、データAIの世界では、すべての変化が指数関数的に起きるからリニアな思考では全て読み間違える」と下野氏は話した。
18枚目の映像に「テスラ:”車輪のついたコンピューター”。「テスラの車は、パソコンのようにソフトのアップデートを繰り返して機能を広げていく方式にもう移行している。買った時より買った後の方が車が賢くなる、という考え方だ」と下野氏は話した。
下野氏はここで「ドッグモードの画像」を紹介した。ペットを車の中に置いてその場を離れても温度調整含め車外への表示として「今車を外しています」と表示してくれる。テスラの「機能を更新する楽しみ」と紹介、「テスラの時価総額はトヨタ含めて7社の合計より大きい」と言葉を添えた。
下野氏は「フィジカルとデジタル」へ話を進めた。フィジカル(身体的)な世界をデジタルに変換して新たな価値を生み出しフィジカルの価値に取り込んでいくので①規模の拡大が容易で早い、②状況を即座に把握して即応できる、③エコシステムが容易に作られイノベーションが加速します」と話しを進めた。
「デジタル推進へのアドバイス」として以下話した。①すべては「シーズ」ではなく「ニーズ」から始まる。重要なのは「技術」でなく「課題」。「顧客のニーズから逆算せよ。」とアマゾン創業者のジエフ・ペソスは話した。②ビッグデータがあるからこそ出来る事。データへの好奇心。③業界を変える。部門別ではなく、全社横断、ひいては業界を変えると言うマインドセット。④ひとり勝ちは続かない。他社との連携。⑤社内の仕組みでは世の中の最先端は見えない。ベンチャー企業との協業、M&A。」と話した。
デジタル・ファースト時代のリーダーの姿としては「①イノベーションを尊重する。②どんな立派な会社でも、変革の中から生まれなくては定着しない。③「社や自組織の成長は業績の良否でなく人の成長で測られるべきである」と話した。
最後に「甲陽学院後進の皆さんへ」と呼び掛け、「好奇心」と「闘争心」、適度な「恐怖心」があれば殆どの仕事は成功します」と結んだ。「適度な「恐怖心」があれば」という言葉が特に印象に残った。(了)