思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

子育て・教育の最大の敵は「理想」を追うこと

2007-08-16 | 教育

子育て・教育に何よりも恐ろしいのは、親や教師が「理想」を持つことです。
目の前にいる子どもをよく接すること・よく見ることで、何をしたらよいか?を探るのではなく、親や教師の「理想」に子どもを誘導しようとするのは、根源悪だと言えます。
さまざまな不適応・自他への暴力が生じるのは、ありのままの姿を受容されなかった子ども=人間の心の悲劇です。

わたしは、過去に多くの実にさまざまな「不適応者」を見てきましたが、共通するのは、大人が「理想」をもって子どもに接した点にあります。
さまざまなヒステリー症状は、「ありのまま」を受け入れずに、「あるべき」姿を追い求めた結果です。

たとえ、既成の考え方や見方からはどんなに「異様」に見えても、それをまずは肯定し、受け入れることがはじめの一歩です。人間に「異常」というものはない、あるいは逆に人間とはすべて「異常」なものであるという認識を持つことで、人ははじめて「正常」になれる存在だという逆説を知らないと、よき子育て・教育はできませんし、悦びをもった人生は歩めません。

文字通りの「正常」であることは、人間が善・美という幻想上の価値を生きる存在であるかぎり有り得ない話であって、恋愛に象徴される聖なる「狂気」を自覚したときに、はじめて人間のよき生や美しき生は始まるのだと言えましょう。

「理想」―「あるべき」姿ではなく、赤裸々な自他の心の中に埋もれている善・美を発見すること、既成の基準にあてはめずに、自他のありのままの姿の中によきものを見出す努力、それが子育て・教育の核心であり、よく生きることです。「ありのまま」が肯定されたときにだけ、ただその時にだけ、人間は階段を上ることができるのです。

武田康弘




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