思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

『坂本龍一・音楽の学校』(NHK)

2010-04-17 | 教育

とても優れた教育番組をご紹介します。
NHK教育テレビ・『坂本龍一・音楽の学校』です。

バッハの音楽の特質を音楽史を踏まえて明晰にする作曲家・坂本龍一さんの『音楽の学校』は、優れた授業・教育の一つの典型だと思います。能動性に富む参加型授業で、分明にして深い内容を持ちます。

第三回目の放映は今夜11時45分からです。

坂本さんは、生徒のみなさん(異なる楽器を演奏する学生)にバッハの考え方と方法によって作曲(=編曲)をしてもらいますが、ここがポイントです。ただ理解し覚えるのではなく、各人がつくる(編曲する)という営みの中で、バッハを能動的に知り、自分のものにするのです。テスト秀才をつくる受動的な授業ではなく、人間的で能動的な了解を生みだす授業になっています。

また、もう一つのポイントは、教える側の人が坂本さんの他に二人いて、三人が掛け合いながら授業をしていることです。リーダーの坂本さんも含めて各講師の体験談や新たな発見をその場で話すことは、より大きな能動性を生み、授業を立体化させます。


実は、坂本さんが音楽で行っている能動的な(わたしの言いかたでは哲学的な)授業は、『白樺』の目がけてきたところなのです。複数の講師の掛け合いは、小中学生の授業ではほとんどありませんが(経済的余裕がない)、高校生と大学生が参加する土曜日の『哲学授業』(3時間30分)では、しばしば社会人も参加しますので、掛け合いをやっています。

哲学の授業とは、ほんらい自分の頭で考える力を育てる営みで、他の教科の技術的な勉強とは大きく異なるものです。思想書が読めて理論的な話ができるようになるだけでは単なる理論家(理屈屋さん)に留まりますから、哲学の教育は、従来の方法では出来ないのです。能動性を刺激し・生みだす方法によらなければ、哲学はほんらいの意味を持ちませんから、各人が自分の考えをつくれる(音楽で言えば、作曲・編曲できる)新しい授業=方法が必要です。

坂本さんの「音楽の学校」は、音楽、哲学、教育に関心をもたれる方には、とてもお勧めです。よいヒントが得られると思います。


武田康弘



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