石川議員の裁判について、ここ2、3日の新聞・テレビの報道だけでも、小沢=悪というのは、意図的に作られた物語であることが分かります。
「主権在民」を現実化していく「民主主義」の最大の阻害物は、官僚が主権者として政治を行う「官治主義」ですが、この官治主義を象徴する「検察特捜部」という組織は、存在そのものに問題あり、ですね。
そもそも、捜査・逮捕・取り調べと起訴を一つの組織が行うのは、『日本国憲法』が依拠する近代民主主義の原則=三権分立の否定であり、独裁権力と規定するほかありません。こんなデタラメな法務行政=検察支配が今日まで続いているのには唖然としますが、これが民主主義後進国のわが国の現実なのです。
旧内務省に代表される官僚機構の実態を明らかにする本も多数出ていますが、わが国の明治における近代化が、天皇を神格化してそれに付属する「官」を絶対化するという基本戦略の上に築かれてきたことは、すでに衆知の事実です。
戦後、政治権力と切り離された天皇という存在は、より純粋に象徴化され、それゆえに誰も触れられない「権威」(=ソフト化されたゆえに逆らうことすら不可能)にまで徹底されたとも言えます。だから、主権者の代行者である国会議員でさえも、一役所にすぎない「宮内庁」の批判ができないのです。天皇一家のお世話をするという役人が一番権威を持つのですから(笑)。いつの時代の話か?と言いたくなりますが、これが実態です。
旧内務省の最大の役割り=仕事は、権威ぶる=権威者として振る舞うことでしたが、それがそのまま今日の官僚組織に受け継がれています。それを支えているのが、「東大病」(=学歴序列宗教)という精神疾患ですが、それゆえに、「権威を具現する東大」という神の前に全国民が拝跪(はいき)することになるのです。笑えない笑い話ですね。だから、日本では、知的教育とは、受験勉強のことでしかなく、勉強と受験勉強の違いすら分からぬまでに知的退廃が進んでしまうわけです。
このように、明治の超保守政治家・山県有朋らがつくった「官治主義」は、知的教育の歪みの象徴である「東大病」と一体であるために、その廃棄は困難を極めます。権威による支配である官治主義は、対等・自由に基づく民主主義とは根源的に対立しますが、一人ひとりの個人の価値観が、権威に縛られたもの・学校で教え込まれる客観主義(答えは一つという思想)による知によって形成されてしまうために、「私」から立ち昇る民主主義の実践がなかなかうまくできません。対等・自由な議論に依拠して決めるという場がないのですね。上位者に反対することが「悪」であると思い込まされている(著しいのは中学校教育)ために、権威による支配から抜けられない、というわけです。
今回の小沢関連の事件によりあぶり出されてきた「検察特捜部」の巨大なウソ(=「官治主義」を永続化しようとする集合無意識によって捏造された物語)への批判は、民主主義を骨抜きにして形だけの民主制国家をつくり、その上に官僚の集団意識&無意識が君臨するという戦後の「国体思想」をその全体として問い正すしかないのです。わが日本人の無意識領域にまで踏み込んだ構造的批判に進まないと、この問題の核心には届かない、とわたしは見ています。
武田康弘
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コメント
Unknown (古林 治)
2011-02-09 19:59:24
「権威を具現する○○」
『○○』部分には「東大」は無論のこと、ハーバードとかNIHだとかノーベル賞だとかの権威が入れ替わり可能ですね(NIH:アメリカ国立衛生研究所のことで医学の世界ではハーバードと並んで権威です)。
「マスメディアの論説委員」というお偉いさんもこの○○に入れることができます。
厄介なのは、進歩的と称するような人々にも、そうした自覚がほとんどないままにこの権威を振り回して思考停止状態になっている現実です。さらに厄介なのは、そうした上位者に反対することが「悪」だという観念が私たち市民の深層に刷り込まれてることでしょうか。
『わが日本人の無意識領域にまで踏み込んだ構造的批判に進まないと、この問題の核心には届かない』
まったく同感です。
ーーーーーーー
Unknown (林)
2011-02-11 15:19:29
武田先生のご見解ならびに古林様のコメントを拝読して。
強く共感しております。いわゆる小沢氏の件は、代理人でもある弘中弁護士が今後、法廷の場できちんと白黒付けてくださる事でしょう。
問題は、思考停止どころか、芸能人の恋愛、ドラマ等に夢中であったり、何ら問題意識が皆無の大多数の輩に対し、有効な治療法はございますでしょうか。
ーーーーーー
自由対話をする生活をつくる (タケセン)
2011-02-11 20:50:44
林さん
「何ら問題意識が皆無の大多数の輩に対し、有効な治療法はございますでしょうか。」
うん、こういう風になったのは、日本の精神風土(様式による意識の支配)が大きく関わっていますが、それについては、「金・武田の哲学往復書簡」http://www.shirakaba.gr.jp/home/tayori/k_tayori81.htmをお読み下さい(金さんのところは斜め読みにし、武田の説明を注視すると分かりやすいと思います)
一番大切なのは、どんどん、気楽に対話を楽しむ文化の創造です。社会&人生問題を話題にした自由対話を交わす習慣=文化をそれぞれの生きる場につくることです。それは結構大変ですが、試行錯誤、失敗を繰り返しながら、「対話する生活」を生み出す努力です。
「主権在民」を現実化していく「民主主義」の最大の阻害物は、官僚が主権者として政治を行う「官治主義」ですが、この官治主義を象徴する「検察特捜部」という組織は、存在そのものに問題あり、ですね。
そもそも、捜査・逮捕・取り調べと起訴を一つの組織が行うのは、『日本国憲法』が依拠する近代民主主義の原則=三権分立の否定であり、独裁権力と規定するほかありません。こんなデタラメな法務行政=検察支配が今日まで続いているのには唖然としますが、これが民主主義後進国のわが国の現実なのです。
旧内務省に代表される官僚機構の実態を明らかにする本も多数出ていますが、わが国の明治における近代化が、天皇を神格化してそれに付属する「官」を絶対化するという基本戦略の上に築かれてきたことは、すでに衆知の事実です。
戦後、政治権力と切り離された天皇という存在は、より純粋に象徴化され、それゆえに誰も触れられない「権威」(=ソフト化されたゆえに逆らうことすら不可能)にまで徹底されたとも言えます。だから、主権者の代行者である国会議員でさえも、一役所にすぎない「宮内庁」の批判ができないのです。天皇一家のお世話をするという役人が一番権威を持つのですから(笑)。いつの時代の話か?と言いたくなりますが、これが実態です。
旧内務省の最大の役割り=仕事は、権威ぶる=権威者として振る舞うことでしたが、それがそのまま今日の官僚組織に受け継がれています。それを支えているのが、「東大病」(=学歴序列宗教)という精神疾患ですが、それゆえに、「権威を具現する東大」という神の前に全国民が拝跪(はいき)することになるのです。笑えない笑い話ですね。だから、日本では、知的教育とは、受験勉強のことでしかなく、勉強と受験勉強の違いすら分からぬまでに知的退廃が進んでしまうわけです。
このように、明治の超保守政治家・山県有朋らがつくった「官治主義」は、知的教育の歪みの象徴である「東大病」と一体であるために、その廃棄は困難を極めます。権威による支配である官治主義は、対等・自由に基づく民主主義とは根源的に対立しますが、一人ひとりの個人の価値観が、権威に縛られたもの・学校で教え込まれる客観主義(答えは一つという思想)による知によって形成されてしまうために、「私」から立ち昇る民主主義の実践がなかなかうまくできません。対等・自由な議論に依拠して決めるという場がないのですね。上位者に反対することが「悪」であると思い込まされている(著しいのは中学校教育)ために、権威による支配から抜けられない、というわけです。
今回の小沢関連の事件によりあぶり出されてきた「検察特捜部」の巨大なウソ(=「官治主義」を永続化しようとする集合無意識によって捏造された物語)への批判は、民主主義を骨抜きにして形だけの民主制国家をつくり、その上に官僚の集団意識&無意識が君臨するという戦後の「国体思想」をその全体として問い正すしかないのです。わが日本人の無意識領域にまで踏み込んだ構造的批判に進まないと、この問題の核心には届かない、とわたしは見ています。
武田康弘
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コメント
Unknown (古林 治)
2011-02-09 19:59:24
「権威を具現する○○」
『○○』部分には「東大」は無論のこと、ハーバードとかNIHだとかノーベル賞だとかの権威が入れ替わり可能ですね(NIH:アメリカ国立衛生研究所のことで医学の世界ではハーバードと並んで権威です)。
「マスメディアの論説委員」というお偉いさんもこの○○に入れることができます。
厄介なのは、進歩的と称するような人々にも、そうした自覚がほとんどないままにこの権威を振り回して思考停止状態になっている現実です。さらに厄介なのは、そうした上位者に反対することが「悪」だという観念が私たち市民の深層に刷り込まれてることでしょうか。
『わが日本人の無意識領域にまで踏み込んだ構造的批判に進まないと、この問題の核心には届かない』
まったく同感です。
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Unknown (林)
2011-02-11 15:19:29
武田先生のご見解ならびに古林様のコメントを拝読して。
強く共感しております。いわゆる小沢氏の件は、代理人でもある弘中弁護士が今後、法廷の場できちんと白黒付けてくださる事でしょう。
問題は、思考停止どころか、芸能人の恋愛、ドラマ等に夢中であったり、何ら問題意識が皆無の大多数の輩に対し、有効な治療法はございますでしょうか。
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自由対話をする生活をつくる (タケセン)
2011-02-11 20:50:44
林さん
「何ら問題意識が皆無の大多数の輩に対し、有効な治療法はございますでしょうか。」
うん、こういう風になったのは、日本の精神風土(様式による意識の支配)が大きく関わっていますが、それについては、「金・武田の哲学往復書簡」http://www.shirakaba.gr.jp/home/tayori/k_tayori81.htmをお読み下さい(金さんのところは斜め読みにし、武田の説明を注視すると分かりやすいと思います)
一番大切なのは、どんどん、気楽に対話を楽しむ文化の創造です。社会&人生問題を話題にした自由対話を交わす習慣=文化をそれぞれの生きる場につくることです。それは結構大変ですが、試行錯誤、失敗を繰り返しながら、「対話する生活」を生み出す努力です。