思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

安倍首相の驚くべき無知。小西議員とのやりとりで明瞭になった近代民主主義への本質的無理解(拡散希望)

2013-05-07 | 社会批評

現代の市民社会において社会の支配者は、わたしとあなたです=「人民主権」。
これは、いまさら言うまでもなく社会契約論による民主制社会の原理中の原理です。
この人民主権は、『個々人の対等と自由』を前提として成立しています。
ここから、リンカーンの有名な演説も出てきます。
「人民の人民による人民のための政府」。

これは近代市民社会の常識ですが、安倍首相は、それを知らないと言います。憲法第13条個人の尊重、第14条ー法の下の平等・貴族の禁止、第19条ー思想及び良心の自由。わたしは小学5年生から一番大事な条項として暗記していましたが、現職総理大臣がそれらを知らない=応えられないことが国会答弁で明らかになった!なんとも形容のしようもない事件。

言葉を失いますが、なるほど、とも思います。

人民主権を原理とする「社会契約論」に則った人権と民主主義思想を了解せず、戦前の日本=明治の保守政治家のつくった『大日本帝国憲法』下の日本に郷愁をもち、天皇制を強化しようとする情念をもつ人間は、民主主義の最大の原理である個人の尊厳=裸の個人の価値と意味を否認しようとする底意をもちます。そのために13条等は見たくないのでしょう。安倍氏は、ブレーンの八木秀次が主張する「反人権宣言」の思想=普遍的な「人権思想」ではなく、「国民の常識」につくべきだという考えなのですから。

安倍首相は、もともと憲法尊重など心にはありません。「みっともない憲法」という発言に見られるように、廃棄しか頭にないのが実によく分かるのが今回の国会答弁です。人民主権の原理を骨抜きにし、国家主義(エリート支配)を復活させるのが安倍氏らの最大の目的ですが、それを引き出し明瞭にした小西議員は大いに評価されるべきです。拍手!!

武田康弘

 

以下は、国会議事録の全文です。

参議院予算委員会 第183回国会 平成25年3月29日 第8号 
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/183/0014/main.html

○小西洋之君
 公明党からの大臣でございます太田大臣、公明党は法改正についていかがお考えですか。
○国務大臣(太田昭宏君) 選挙権というのは人の大事な権利であるというふうに思っておりまして、今、与党間で検討されている ということでありますので、回復されるようにということで見守っているという状況であります。
○小西洋之君 報道によれば山口代表は法改正をするとおっしゃっていましたので、見守るというと少し、閣僚のお立場なのでしよ うがないのかということなのかもしれませんけれども。
 先ほどの小林委員の質問の中で総務大臣が、選挙事務の取扱い上混乱が起きる、またかえって障害者の方々の権利保護上問題があるということを おっしゃっていましたけど、それぞれについて具体的にどういうことか、御説明いただけますか。
○国務大臣(新藤義孝君) 例えば、この控訴を断念して、この方のみの国政選挙の選挙権が認められるということになったといた しましても、 先ほど申しましたように、四月任期満了の地方選挙、これ百九十三選挙が予定されているわけであります。そういうときに、全国各地で、じゃ、そ のほかの成年 被後見人の方々が投票させてくれということで投票所を訪れて、投票をめぐっての、各地での現場が混乱する、こういうおそれもありますし、さら には選挙権の 地位確認や選挙人名簿登録を求める、こういう訴訟も起こる可能性もございます。さらには、選挙後の、自分が参加できなかった選挙が無効である と、こういう 訴訟などいろんなものが提起されるおそれがあると考えているわけであります。
 そして、政府といたしましてもこの問題については検討を進めていかなければいけないと、このような御答弁をさせていただいておりますし、何 よりも選挙制 度は、これは国民の民主主義の根幹にかかわることでございます。これについては各党間での御議論が始まっているということになりますと、その 間、まずは今 の法律の、法令の安定度をきちんと確保するためにも我々はこのような判断を最終的にさせていただいたと、こういうことでございます。
○小西洋之君 今、訴訟が提起されること、また無効の訴訟が提起されることについて混乱ともおっしゃいましたけれども、今、一 票の格差で全国で十六の訴訟が起こされ、無効判決が二つ出ております。これは混乱なのでしょうか、総務大臣。
○国務大臣(新藤義孝君) 混乱といいましても、まずは、今まだ権利を与えられていない方々が自分たちにも権利が与えられたの ではないかということで現地に、投票所に出かけていった、このときのことは、これはかなりの混乱になるのではないかというふうに思います。
 それから、法律そのものが今地裁で、これから国においても、またほかの地裁においても裁判が行われているわけであります。そういう中で、今 その一つのも ので確定してしまうことによって、これはこれからいろんな制約が加わることにもなると。あらゆる意味でいろいろな混乱が想定されることから、 私どもとして は、まず法の、法令の一定的な安定を保ちつついろいろな検討ができるような、そういったことでこの今回の判断としたことでございます。
○小西洋之君 ちょっと論点を整理させていただきますと、冒頭、この度の判決の効力ですね、仮に控訴せずに判決を確定させたと きの効力を聞 きました。具体的にそれは何かというと、当該原告女性は選挙権を得ることができるんですね。それ以外の全国十三万余の成年被後見人の方々は引 き続き公選法 の下で選挙権を制限される。
 つまり、今回控訴しなければ、当該女性を救って、それ以外は今までの現行の法制度と同じ。しかも、政権与党、自民党そして公明党、そして我 が民主党 等々、法改正についての議論があるわけですね。つまり、総合的な環境は、法改正について議論するのであれば、当該女性を救いつつ、それ以外は 現行制度。現 場が混乱するとおっしゃいました。それはしっかり周知して頑張ればいいことだと思うんですけれども、いかがでしょうか。総務大臣。
○国務大臣(新藤義孝君) この今回の原告の方の投票したいという思い、これは共有できます。私もそのように会見で申し上げま した。
 しかし、これはお一人のことだけではなくて、成年後見制度とそして選挙権との調整と、こういうもっとたくさんの方々に及ぶ問題であります。 ですから、そ ういったものをしっかりと国としても今回検討しなくてはいけない。それは民主主義の根幹である問題でありますから、これについては国民の代表 である国会に おいて国会議員がしっかりと議論していただきたいと、このことを私も期待をしているところでございます。
○小西洋之君 この問題の本質は、この控訴をめぐる、控訴するかしないかの判断の本質というのは、自らの権利保障を求めて最後 の道である司 法に救済を求めた女性に裁判所は選挙権を与えろと命じたわけですね。それを切り捨てる、つまり個人の人権の保障というものを切り捨てて、今 おっしゃいまし たその制度全体の調整とか、それは行政事務を頑張ることによって私は可能だったんじゃないんですかということを問うております。大臣、いかが ですか。
○国務大臣(新藤義孝君) 今回の原告の方は、国政選挙のみの投票の権利を与えられたことになります。ですから、直近は今度の 七月の参議院選挙、その次は衆議院選挙であります。しかし、それ以外に地方の選挙はたくさんございます。いろいろな機会があるわけでありま す。
 問題は、その方にとっての大切な権利でありますが、同じような権利をお持ちの方が、全国に同じ国民がいらっしゃるわけであります。その方々 も含めてしっかりとした整理をすることが重要ではないかと私は考えております。
○小西洋之君 法改正をするということがもう議論されているのであれば、その一人の個人の権利を抹殺してまで、そして、それを 補うための行政事務ができたかできなかったかについて明確な御説明がなくそういう結論をされたというのは、ちょっと私は問題があると思いま す。
 これについてはまた国会でもいろんな方が取り上げられると思いますので、そこに譲らせて、更に本質的な問題に移らせていただきますけれど も、この今の政 府の対応は、私なりの見方すれば、人権尊重意識の希薄さ、政府における人権尊重意識の希薄さを証する事件だと思います。これは、残念ながら、 安倍政権だけ ではなくて、自民党という政党全体の課題であるというふうに私は認識しております。
 それについて今から議論を深めさせていただきたいと思いますけれども、具体的には、自民党が平成二十四年に発表した日本国憲法改正草案につ いて総理と御議論をお願いしたいと思います。
 まず、議論に入る前に、現行憲法ですね、総理は憲法を変えると言っておりますから、現行憲法の基本構造についてちょっと整理をさせていただ きます。
 総理、三権の長である、行政のトップ、内閣総理大臣の立場としてお答えください。憲法の中で一番大切な条文を一つだけ挙げてください。何条 ですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 一つだけ挙げることはできません。
○小西洋之君 もう一度聞きます。憲法の下で三権の行政権を率いて国民の権利と自由を守り福祉をつくる、そのための使命を帯び る、憲法上の使命を帯びる内閣総理大臣として、たった一つだけ挙げてください。どうぞ。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は憲法遵守義務を帯びておりますから、一つだけ挙げることはできません。(発言する者あり)
○小西洋之君 今、後ろから優先順位は決められないというやじがありましたけれども、憲法が基本的に分かっていない方。多分、 谷垣前総裁はお分かりでしょう。実は、理論的には分かるんです。
 じゃ、そのことを今から解き明かしてまいります。では、じゃ具体的な話、総理、憲法において包括的な人権保障、包括的な人権規定と言われる 条文は何条ですか。安倍総理、どうぞ答えてください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今そういうクイズのような質問をされても、暫定予算を議論をしているわけでありますから、余り 生産性はないんじゃないですか。それだったら、そういうのを聞くんだったら、私に聞かなくても調べればいいじゃないですか。
○小西洋之君 私は知っています。今総理が答えられなかったことは、大学で憲法学を学ぶ学生が一学期でみんな知っていることで すよ。
 重ねて聞きます。総理、総理は、日本国憲法において包括的な人権保障を定めた条文、何条か知らないという理解でよろしいですか。どうぞ。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) これは、済みませんけど、大学の講義ではないんですよ。国会で大切な暫定予算の議論をしている んですよ。こんなやり取りが生産的ですか。
○小西洋之君 暫定予算の質問にふさわしくないと言いましたけれども、憲法の中で最も大切な条文の位置付け、またその内容を知 らずに予算を編成し執行すること自体が内閣として失格なんですよ。
 まあ、そのことおきます。じゃ、今総理は人権の包括規定を知らないということをこの国権の最高機関の委員会の議事録に付させていただきまし た。
 では、聞きます。総理、個人の尊厳の尊重、個人の尊厳の尊重を包括的かつ総合的に定めた条文は何条ですか憲法、日本国憲法何条ですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) まず、余り人を指さすのはやめた方がいいですよ。これは人としてのまず初歩ですから。そのこと は申し上げておきたいと思います。
○小西洋之君 指さすのは、やむにやまれぬ、国民のためにやむにやまれぬとき以外はしません。
 では、今、私が問うた質問。個人の尊厳の尊重を包括的に定めた総括的な規定は何条ですか、憲法第何条ですか。
○委員長(石井一君) 麻生財務大臣。(発言する者あり)
○国務大臣(麻生太郎君) 今、今言われましたから出てきて……(発言する者あり)ありがとうございました。御指摘をいただき ました。もう少しゆっくり出るようにいたします。
 もう一回御質問ください。
○小西洋之君 憲法、日本国憲法において個人の尊厳の尊重を包括的に定めた条文は何条ですか。総理、総理、総理に問うていま す。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) それをいきなり聞かれても、今お答えできません。
 それと……(発言する者あり)その、すごいとかいうことではなくて、こんな相手がすぐ答えられないことを今ここで質問して、まるで自分の方 が優越に立っているような、そういう子供っぽいことはやめましょうよ。
○小西洋之君 私の質問が、仮に日本国憲法が五十条、五十一条、五十二条、五十七条まで何を決めていますかと聞かれれば、私も 残念ながら明確には答えられません。後ろから今官房長官が助けに入りましたね。
 私は、聞いているのは、じゃ総理、カンニングしないで。憲法において、あなたは今、包括的な人権を定めた条文を知りませんでした。では、幸 福追求権を定めた条文は憲法第何条ですか。幸福追求権を定めた条文は憲法第何条ですか。どうぞ。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) それ、こういうやり取りは、私、何の意味があるか分かりませんよ。じゃ、これを決めた、憲法九 十三条、九十一条は何だとか、そういう、何の意味があるのか分かりませんけどね。これ、やるんだったら大学の憲法学の講義でやってください よ。
○小西洋之君 この条文は、私が問うている条文、じゃ、今議事録として、総理は幸福追求権を定めた条文を知らなかったというこ とを私は付させていただきます。
 総理、今総理が答えられなかった条文は、総理が声高に言っている普遍的価値の実現あるいは法の支配の実現、その中枢を成すものです。また、 日本国憲法が 何のためにあるのか、日本国憲法の下で立法府、行政、司法が何のためにあるのか、全てそこに行き着く究極の条文なんですよ。憲法第十三条です よ。憲法第十 三条を知らない。憲法五十条から五十七条までの条文が分からなくても、具体的、個別に言えなくても、憲法十三条が分からないというのは、これ は驚愕の事実 ですよ、総理。あきれます。
 じゃ、総理、じゃ、総理、今お手元に自民党の憲法改正草案で憲法十三条の新旧対照表がありますよね。憲法十三条、日本国憲法の憲法十三条を 見て、御自分の言葉で日本国憲法の憲法十三条の意味を説明してください、御自分の言葉で。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 何か興奮して質問しておられますけどね、このやり取り自体に私は何の意味があるのか分からない んですが、要するに、憲法の条文でこれを知っているか、あれ知っているかといっても、全く私は意味を感じません。(発言する者あり)
○委員長(石井一君) それじゃもう一度、小西洋之君。
○小西洋之君 では、お話、議論してもしようがないということがよく分かりましたので、先に進めさせていただきます。何も知ら ないということがよく分かりました。
 自民党の憲法改正草案は、憲法第十三条、幸福追求権、個人の尊厳、そして公共の福祉、最も重要な人権の原理を定めたその条文について、その 公共の福祉を 公益及び公の秩序と変更するとしています。今お手元にQアンドAがありますよね。QアンドAを基に、あるいは御自分の言葉で結構ですけれど も、どういう目 的、内容でその憲法十三条を公益及び公の秩序と変えるのかを御説明ください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 改正草案においては、自民党の案としては、「全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び 幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。」と いうことでありました。
 今、しかし、中西委員はずっと……
○小西洋之君 小西です。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) あっ、済みません、中西さんじゃなくて小西さんですか。小西さんは知っているか知らないかとい うだけの質問 であって、その精神はどう考えるかということではなくて、知っているか知らないかという質問だけだったので、それに何の意味があるかというこ とは、私は言 わざるを得なかったということでございます。
○小西洋之君 私は、かつて第一次安倍政権を含め十二年間霞が関で官僚として働いておりました。麻生大臣にもお仕えしたことが ございます。 で、国政に就いて二年半、立法に携わっておりました。憲法十三条を私は考えなかったことは、公務員時代、国会議員になっても一度もございませ ん。当たり前 の基本的な条文です。
 では、国会図書館、今日来ていただいています。日本国憲法の憲法十三条の内容を説明してください。
○参考人(吉本紀君) お答えいたします。
 一般に、憲法第十三条は三つの柱から成ると解されております。第一に、個人の尊厳の尊重でございまして、これは個人の平等かつ独立の人格価 値を尊重する という原理の表明と解されております。第二に、幸福追求権でございます。これは人権保障の一般原理を示すにとどまらず、具体的権利性を有する という見解が 通説でございます。第三に、最後でございますが、公共の福祉でございまして、通説的見解によりますと、人権相互の矛盾、衝突を調整するための 実質的公平の 原理をいうものと解されております。
 以上でございます。
○小西洋之君 ありがとうございました。
 続いて、憲法審査会で言われました高見先生による憲法十三条の解釈、日本を代表する憲法学者ですけれども、国会図書館お願いします。
○参考人(吉本紀君) お答え申し上げます。
 高見教授は、昨年の五月十六日……(発言する者あり)少々お待ちください。
 こういうものでございます。ちょっと戸惑って申し訳ございません。
○委員長(石井一君) 答弁を続けてください。
○参考人(吉本紀君) はい。
 高見教授は昨年五月十六日の参議院憲法審査会において参考人としていろいろと御発言されておりますが、私なりに要約させていただきますと、 国家の存立目 的が国民の権利及び自由を守るということにあるということを前提にいたしまして、公共の福祉とは内在的制約をいうものであって、外在的な制 約、すなわち特 定の国家目的による人権制限を認めますと、制限の範囲が非常に広がるのではないかとの見解を示されております。
 以上でございます。
○小西洋之君 その配付資料、大事なところが全部抜けていますから、全部、一言一句読んでください。
○参考人(吉本紀君) では読ませて、再現させていただきます。
 「公共の福祉という概念というのは、これは憲法で申しますとというか、国家自体の存立目的が言わば国民の権利、自由というのを守るというこ とが前提に なって組み立てられているという、そういった概念なわけです。 したがって、この公共の福祉という概念というのは、人権を制約する場合には少 なくとも内在 的な制約ということでしか説明は付けていないわけですよね。これは、外在的な制約でもって人権制限できるとなると、これはつまり、特定の国家 のある目的を 引っ張り出してくればそれによって人権制限ができるという、そういう議論になるわけですね。そこのところをぎりぎり、そういったことは駄目だ ということで 組み立てている理論なわけです。したがって、これに公益とか公序という民事法上あるいは刑事法上の、刑法上のそういった概念を用いて説明する となると非常 に広がってしまうわけですよね。」ということでございます。
○小西洋之君 今、国会図書館が読み上げてくださった公益また公序、すなわち公の秩序、公共の福祉をこの公益と公の秩序という 言葉ですり替えると人権制限が限りなく広がってしまう、そのことを私は議論をさせていただきたいわけでございます。
 では、かつて、国会図書館、公共の福祉を自民党草案十三条のように解釈した学説に対する戦後の通説的な学説からの批判について説明していた だけますか。芦部教授の。
○参考人(吉本紀君) お答え申し上げます。
 一元的外在的制約説というものでございまして、これは日本国憲法が施行された当初における通説でございまして、基本的人権は人権の外にある 公共の福祉によって制約され得るというものでございます。これは、後に憲法学者の芦部信喜教授が命名されたものでございます。
 この説の問題といたしまして、芦部教授は、公共の福祉の意味を公益とか公共の安寧秩序というような抽象的な最高概念としてとらえているの で、法律による 人権制限が容易に肯定されるおそれがあり、ひいては明治憲法における法律の留保の付いた人権保障と同じことになってしまわないかということを 挙げておられ ます。
 以上でございます。
○小西洋之君 内閣総理大臣、安倍総理、今述べられました芦部信喜さんという憲法学者、御存じですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は存じ上げておりません。
○小西洋之君 では、高橋和之さん、あるいは佐藤幸治さんという憲法学者は御存じですか。総理。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 申し訳ありません、私は余り、憲法学の権威ではございませんので、学生であったこともございま せんので、存じ上げておりません。
○小西洋之君 憲法学を勉強もされない方が憲法改正を唱えるというのは私には信じられないことなんですけれども。
 今私が聞いた三人は、憲法を学ぶ学生だったら誰でも知っている日本の戦後の憲法の通説的な学者です。今、国会図書館が読み上げた言葉、公益 とか公共の安 寧秩序という言葉で公共の福祉を潰してしまうと、人権とは全く違う価値によってこの世の中をコントロールすることができる、そうして、それは すなわち明治 憲法時代の法律の留保の下の人権侵害が解き放たれると、そういうことだというふうに言っているんです。恐ろしいことなんですよ。
 じゃ、これを、何か総理、首をかしげていますので、理解されていないと思いますので、具体的な例として見てまいりましょう。
 国会図書館にお願いをいたします。大日本帝国憲法で信教の自由を制限した条文、憲法二十八条ですけれども、それを読み上げていただけますで しょうか。(発言する者あり)
○委員長(石井一君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
○委員長(石井一君) 速記を起こして。
 小西さんに申し上げます。
 本日は時間を限られた暫定予算の審議をいたしておるわけでありますので、別の機会に通告をして堂々と憲法議論をいたしたいと思います。
 ただ、あなたの発言は自由でありますから、できるだけ簡潔に今日の委員会の趣旨に合わせて質問をしていただきたいと存じます。
○小西洋之君 はい。
 私は、憲法の下で国会も行政も営まれるわけですから、その憲法の最高価値、憲法十三条の内容を聞いております。しかし、委員長のおっしゃる とおり、時間が、本会議あるということでございますので、私から、じゃ説明をしながら申し上げます。
 大日本帝国憲法第二十八条、それにおいては、日本の、まあ臣民ですけれども、安寧秩序を妨げず、また臣民たるの義務に背かざる限りにおいて 信教の自由を有すというふうに、宗教の自由が制限されております。
 今申し上げたこの安寧秩序の意味ですけれども、戦前の最も有名な憲法学者、佐々木惣一さんという先生ですけれども、その方の説明によれば、 その安寧秩序というのは広く社会秩序と同じ意味であるというふうに言っております。
 今お手元にあります自民党の憲法改正草案、公の秩序の意味は何かという説明に対して、それは社会秩序のことだというふうに言っています。つ まり、社会秩 序という言葉を挟んで、明治憲法下で信教の自由を侵害していた安寧秩序という言葉は公の秩序と同じ意味になるということでございます。
 ここで、太田大臣に御質問をさせていただきます。
 太田大臣、かつての公明党の代表を務め、また公明党の中で憲法調査会の座長も務められました。そのお立場から、信教の自由を憲法レベルにお いて制限する 自民党の憲法草案、この改正十三条及び二十一条ですけれども、同じ言葉が含まれています。賛成ですか、端的にお答えください。
○国務大臣(太田昭宏君) 自由民主党の憲法草案ということについては、私は、それは自由民主党の考え方であり、私は、閣僚の 一員という今の立場からそれを論評するという立場にはないと私は思っています。
○小西洋之君 しかし、公明党は、自民党と連立を組んで政権を営み、そして選挙を戦う存在でございますので、そこは、私は、御 党の平和と、 あと人権、福祉のその姿勢、私も多くの公明党の先生方の御指導いただきながら、いろいろな法律を作る作業をさせていただいております。しか し、これは大問 題でございますので、自民党の憲法改正草案は憲法理論的に信教の自由を制限するものだと、制限していると、明示に、ということを指摘させてい ただきますの で、どうか今後のお取組のために御留意ください。
 では、もう少し、公共の福祉を公益及び公の秩序に変えることの影響について議論させていただきます。
 内閣法制局、日本国憲法において徴兵制は合憲ですか違憲ですか、お答えください。
○政府特別補佐人(山本庸幸君) 現在の憲法では徴兵制は認められておりません。
 一般に、徴兵制度といいますものは、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度でございます。軍隊を常設し、これに要する 兵員を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるというものでございます。
 このような徴兵制度といいますのは、我が憲法の秩序の下では、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべき ものとして社 会的に認められるようなものではないのに兵役と言われる役務の提供を義務として課されるということでございまして、この本質から考えますと、 平時であると 有事であるとを問わず、憲法十三条、憲法十八条などの観点から許容されるものではないというふうに言われております。
○小西洋之君 今法制局長官が読み上げてくださったのは、私の資料のこの質問主意書ですね。鈴木先生、失礼しました、そうです ね、鈴木先生 の、福田先生の、失礼しました、稲葉先生、大変失礼しました、質問主意書の裏です。今おっしゃられたとおり、公共の福祉に照らし等々で憲法十 三条の規定の 趣旨から見て違憲であるということを言っています。しかし、この公共の福祉という言葉を公益及び公の秩序というふうに自民党の改正草案はすり 替えるわけで ございます。
 安倍総理に伺います。自民党の改正草案において徴兵制は違憲ですか合憲ですか、端的にお答えください。
 あなたは、さきの参議院の本会議で我々国会議員に対して、国会議員の使命を果たすために憲法九十六条等の改正をするべきだと指を立てておっ しゃいました。闘う政治家の誇りに懸けてお答えください。違憲ですか合憲ですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 自民党の憲法草案において公の秩序というふうに書いてあるのは、これは言わば社会秩序のことで あって、国家 が守ろうとする秩序のことではなくて、これは言わば、平穏な生活に対して誰もが権利を持っているわけでありますから、それを脅かすようなこと はしてはなら ないという意味を定めたものであって、より分かりやすく公共の秩序、公共の福祉を書き下したというふうに御理解をいただきたいと思います。
 そして、新憲法草案について、私は今行政府の長としてここに立っておりますから余りそれを解説する立場にはございませんが、新しい、これは 自由民主党の 憲法草案、これは昨年の四月の二十八日にできたものでありますが、この草案においても、そもそも徴兵ということは全く、徴兵制度をつくってい くということ は全く想定はしておりません。
○小西洋之君 安倍総理、憲法の解釈というのは客観的なその文言をどう解釈するかということがまず前提になるわけでございま す。
 公の秩序というのは、大日本帝国憲法あるいは様々な用例あるいは学説も御紹介しましたけれども、かつての大日本帝国憲法、明治憲法のその安 寧の秩序、そ れとイコールなわけでございます。そうした言葉で公共の福祉を潰して、徴兵制が違憲になるのか合憲になるのか、それは明確に答えられないとい うのはおかし いと思います。
 防衛大臣はお答えできますか、小野寺大臣。憲法的にどうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 解釈については法制局長官が答えると思っております。
○小西洋之君 自民党草案の解釈は内閣法制局長官は説明できませんので。
 あなた方自民党は、安倍総理を先頭に憲法改正をするべきだと、そういうことを参議院の本会議でも言っている。にもかかわらず、自分たちが 作っている、こ れでやると言っている憲法草案で徴兵制が違憲になるのか合憲になるのか、そのことを説明できないわけですか。違憲になるのか合憲になるのか、 もう一度、安 倍総理から、説明できますか、憲法的に。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、自民党の憲法草案について私がここで解釈云々を述べる立場にはありません。
○小西洋之君 総裁ですよ、総裁です。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今ここにいるのは総裁ではなくて、これ、内閣総理大臣としているんですよ。当たり前じゃありま せんか。これ、暫定予算を今審議しているんですから。
 その中において、先ほど申し上げましたが、このそもそも立場にはございませんが、しかし、昨年四月の二十八日に作ったこの我が党の憲法改正 草案におい て、徴兵制ということは全く考えていないということであります。それははっきりと申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)
○小西洋之君 まさに、今、小川先生がおっしゃるとおりで、考えていないかどうかであって、憲法の規定上……(発言する者あ り)そうです、徴兵制が解き放てるのかどうか、合憲なのかどうかが大事なことです。答えなかったというふうに認識させていただきます。
 国民に対して、憲法改正をするべきだ、この草案を我々は問うと言っていて、その草案の内容上、憲法解釈上、徴兵制が合憲か違憲か答えられな い、驚くべきことでございます。公明党、大変なことだと思います。
 そしてまた、ちょっと時間上、内容を精査させていただきますけれども……(発言する者あり)
○委員長(石井一君) 静粛に願います。
○小西洋之君 お示ししたお手元の資料の中には、この自民党草案が、かつての治安維持法の言論や結社の自由、表現の自由、そう いうものを全て規制し得るということも論理的に示させていただいているところでございます。
 では、もう一つ、国際問題について問わせていただきます。
 外務大臣、本年一月の安倍総理の東南アジアの訪問の際に安倍総理が訴えた人権等の普遍的な価値についてお答えください。どのようなことを表 明したか。
○国務大臣(岸田文雄君) 安倍総理は、一月にASEAN諸国を訪問した際に、インドネシアにおいて対ASEAN外交五原則を 発表いたしました。
 この中で、自由、民主主義、基本的人権等の普遍的価値の定着及び拡大に向けてASEAN諸国とともに努力していくこと、また、力でなく法が 支配する自由で開かれた海洋は公共財であり、これをASEAN諸国とともに全力で守ることなどに言及いたしました。
○小西洋之君 その度の訪問は、尖閣の情勢をめぐる中国との関係でそうした声明を発せられたというふうに理解しておりますけれ ども、総理、総理は、中国は普遍的な価値を体現できていない国だとお考えですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 他国について私はそういう論評をすることは控えさせていただきたいと思います。
○小西洋之君 お手元に中華人民共和国第五十一条を示させていただいております。実は、自民党の憲法改正草案十三条は内容的に 中華人民共和国第五十一条と同じでございます。違いがあるんでしたら御説明いただきたいと思います。
 以上、自民党は憲法の価値、そして何よりも、内閣総理大臣である安倍総理は、憲法で最も重要な条文すら知らずこの行政を営もうとしていま す。私は、これは議会の威信に懸けて問責に値すると思いますので、各党会派の皆さんの御検討をお願いいたします。
 ありがとうございました。

 

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