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西洋美術館(松方コレクション)の設 計をした(日本政府からのお願いにより)ル・コルビュジエの展覧会が、「ル・コルビュジエと20世紀美術」と題して当の国立西洋美術館で行われています。
これは、大変貴重な展覧会で、総合芸術家としてのコルビュジエの全体像をよく知ることができる企画です。
第一期から第四期に分かれるその作風は、天才コルビュジエが自己に誠実な努力の人であることを証明しています。初期の「建築家の絵画」を意識させる作品から、一段づつ素晴らしい飛躍を遂げ、第三期には驚くべきレベルに達します。ピカソをはじめ20世紀を代表する画家たちに伍する作品群には 圧倒されます。
絵画、
版画、
写真、
彫刻、
映像作品、
壁画。
20世紀を代表する建築家、無神論者にして優しさと人間味に溢れるコルビュジエは、柳宗悦の白樺「民芸運動」を継いだ長男の宗理(むねみち・工業デザイナー)が「神 」のように尊敬した人でもありますが、近代合理主義と自然物・有機体のもつ世界との融合を目がけたル・コルビュジエの全貌が明かされるこの度の展覧会を二度見て、わたしは深い悦びを得ました。彼と交流のあった芸術家たちとのコラボ展示は、20世紀美術のもつ 価値と面白さを闡明にしてくれます。11月4日までです。
イタリアルネサンスを代表するミケランジェロの展覧会も9月6日より同時開催ですので、20世紀のルネサンス人であるコルビュジエと同時に同会場で見られます。なんという贅沢!
なお、わたしが理念と全コンセプトをつくった『白樺文学館』(2001年)と 『白樺教育館』(2004年)は、西洋美術館に表れているコルビュジエの思想・理念に共感して建てたものですが、施行と実施設計を依頼した大成建設は、パリのル・コルビュジエ財団と共に世界有数のコレクションの持ち主で、この度の展覧会の協賛者・協力者です。
図録からの複写は、1959年にコルビュジエの描いた「牡牛 XVⅢ」(大成建設 ギャラリー・タイセイ蔵)。牡牛はコルビュジエ自身を表す。
武田康弘