テレビ朝日のキャスターとして知られる鳥越さんの10ページほどの文章で、小沢問題の核心は目が覚めるようにはっきりとします。
はじめて知る方は、恐ろしくなるほどの話でしょう。
この本の20人の豪華な執筆人は以下の通りですが、彼らにより、いま、日本がどれほどの政治的危機にあるか、民主主義は風前の灯であるかが説明されています。
国体思想の持ち主が主流派となった自民党+官僚種族による支配。彼らの集合意識により全体主義へと陥る日本社会ーーここからの脱出には、まず何よりも事実・真実を知ることが必要ですので、本書は、日本人の必読書と言えます。
一連の「事件」の発端となった検察裏金問題の主役、三井環さん(元大阪高等検察庁公安部長)の内部からの告発には凄い重みがありますし、
やはり検察内部からの郷原信夫さん(元東京地検特捜部・現在は大学教授)の詳細な解説は、有無を言わせぬほど明快なもの。
すべて読むに値する見事な文集ですが、ニューヨークタイムスの東京支局長・マーティン・ファクラーさんの結語は、わたしも指摘し続けていることで同意見。
「官僚制度の中にいる人々と主要メディアの社員は、同じエリート意識をもった狭いサークルのメンバー。権力側と似た感覚をもっているといえる。・多くが東大・京大・早稲田・慶応などの同じ一流大学の出身で同じ価値観を共有している。・彼らは、みは受験勉強が上手で、とにかくテストでいい点をとることができる。入社式に集まってくる彼らを比べれば、どちらもリクルートスーツに身を包み、どちらが官僚になる人で、どちらが新聞記者になる人かなど、区別がつかない。・多様性に欠けるのだ。」ーーーー「小沢事件」という国家犯罪が象徴する日本の異常性は、そこに根をもつ、との指摘です。
「真実」あるいは「本音」がどれほど面白いか、そして、日本の現状がどれほど危険なものか、背筋が寒くなり、公共的憤りでいっぱいになりますが、不思議と勇気が湧き上がる本です。ぜひ。
武田康弘