今日の東京新聞夕刊に、井筒俊彦全集刊行の記事が出ていましたので、思い出を書きます。
井筒俊彦さんの直筆を見ると、丁寧な楷書です。
わたしの師、竹内芳郎さんは、達筆だが個性的な崩し字でまったく異なりますので、たぶん性格も違うのでしょう。
その竹内さんは、他者への厳しい批判で知られますが、井筒さんのことは珍しく尊敬していました。
竹内さんが筑摩書房より出した『意味への渇き』の執筆時に、イスラムの項について竹内さんは井筒さんに意見を求め、井筒さんは竹内解釈に全面的に賛同するとの返信をしましたが、当時(1987年)竹内さんはわたしにそのよろこびを率直に語り、井筒さんからの手紙をコピーまでしてくれました。
井筒さんは、白樺派の柳宗悦の宗教思想に影響を受けたのですが、わたしは、当時は白樺派とは縁がなく、1999年2月から始まる『白樺文学館』創設の仕事の中で柳と正対することになるのですから、不思議です。柳と井筒の重視する神秘的体験!と冗談を言いたくなります。井筒さんは、古代ギリシャのプラトンに傾倒し支持していました。
この世界的碩学にして学者的権威主義のかけらもない井筒俊彦さんの全集が慶応大学出版部より刊行されるとのこと(すでに第一巻は出ている)よいニュースです。