Amazonに出した書評です。
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著者 氷見野 良三
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5つ星のうち 3.0 客観性の外被の下、著者の見方への誘導は困ります。 2013/10/11
By 武田康弘
形式:単行本|Amazon.co.jpで購入済み
なんとも評価しづらい本です。
日本語のマイヨール評伝はこれしかないので、フランス語や英語に通じていないと、選択肢は他にありません。
細かく調べ、現地でのマイヨールの彫刻写真も載せていますし、著者の思い入れも強いのですが、踏み込みが弱いので平板です。網羅的ですが深みにかけますので、芸術についての書であるのに「事実学」に留まっています。
その「事実学」に、著者の主観性が接ぎ木(内的な主観性の豊穣というのではなく、客観と主観が外的に接続)されているために、知らない人が読めば、著者の見方に誘導されてしまうのではないか、と危惧します。
マイヨールの発想の根源は、イデア的普遍性を支える「性=make love」への自由で健康な態度にあるのですが、それらについては、「ダフニスとクロエ」の章で遠まわしに記述するのみです。
また、マイヨールのバッハへの称賛を書きながら、モーツァルトへの熱愛、「もし、芸術家になるならモーツァルトにならなければいけない」とまで言っていた事実は完全に無視。
紙質も装丁もよい本ですが、マイヨールを著者好みに脚色しては困ります。
フランス語、英語、スペイン語、ドイツ語では、新しい評伝も出ていますので、翻訳本が出ることを望みます。
内的充実の極み・存在そのものの豊穣。20世紀のマイヨールは、ルネサンスさえ超えて、もちろんキリスト教を超えて、ギリシャのイデアに直結する奇跡をなし遂げました。その真価を21世紀に生きるわれわれは感じ知る必要がある、そうわたしは思っています。
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写真は、
アリスティード・マイヨール(1861~1944)の「夜」
上野の国立西洋美術館で撮影(ソニー・RX-1R ツァイスゾナー35mmF2、F4 1/80秒 iso6400)。
日本では、写真集を含めてよい本が出ていません。外国語ではたくさん出版されているのですが。
いま、買えるもの(中古ですが)でよいのは、1967年発行・河出書房新社の現代世界美術全集12「ロダン ブールデル マイヨール」です。