以下は、ある方への手紙(メール)の一部です。
小沢征爾らの先生の斉藤秀雄(彼を記念して結成されたのがサイトウキネンオーケストラ)は、
いつもいつも「心で歌え!心で歌え!」と生徒たちに言い、
音楽も人生も、「心から出て心に還る」、と話したとのことです。
確かに、
カタチー形式ではなく、
内容―心の豊かさ・深さが
人の生きる価値であり、ほんらいの人生というものです。
勝ち負けや外見的な美や世間的評価(有名か無名)に従う人生は、人生の「内容が貧しい」としか言えません。
真善美に憧れつつ生きるというのが「よき生・優れた生」であることは、哲学の実践的な勉強会に長年通われている○○さんは、よく御存じのことと思います。
人間の生は、真善美に憧れつつ生きるという次元と、
現実的な次元(利害・得失)をもちますが、
それは、平面的にふたつが並んでいるのではなく、立体的なものです。
人が生きる目的は、よろこびの世界を拓き享受すること=ロマン的・理念的世界の開発(真善美への憧れに基づく)ですが、
それを支える手段としての現実次元をもち、
この両者が立体的に一体化してはじめて人間の「人間としての生」は成立するのですね。
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武田康弘