感想家は、文学者、作家じゃない。思想家でもない。つまり読者の代表だ。大読者とでも言ってよかろう。
文学作品を読むのが好きで堪らない、文学の読書が何よりも好きだ、そういう人が謙虚に自らの読書感想を語るのである。
感想がなければ語らぬがよい。ありもしない感想をあるが如くに語ろうとするから、四十代三十代、分類、系列、苦心サンタン、妖怪を描きだしてしまうので、無理な背延びをしてはいけない。
――坂口安吾「感想家の生まれ出るために」
それってあなたの感想ですよね、という言い方への反発なのかも知れないが、ときどき学生が過度に感想に傾斜している現象が最近起こっている。それが意図されたものであるように感じられるのは、実際それが感想ではなく願望のようなかたちをとっているからでもある。内容を度外視して言うと、だが。