人生の裏側

人生は思われた通りでは無い。
人生の裏側の扉が開かれた時、貴方の知らない自分、世界が見えてくる・・・

ユダは語る4 ”私はこの地に戻ってきた”

2015-06-21 19:02:24 | 詩的文章
私はユダ、”生まれ出ない方がよかった”と言われたもの

かつての私にはこの世のことごとくが、他愛のないもののように思えてならなかった

主なる神の栄光にふさわしくないものは、全て滅び去るがよい!

トーラーに外れた異邦人どもは、外つ国に去りゆくがよい!

聖なる書に記されたとおりに、歴史は展開され、神の王国は成就する…

そう信じて疑わなかったのだ…

だがあの人の子の語ることはまるで違っていた

”神の国は故国、民族、信義を持たぬ者にこそふさわしい…寺院や会堂の外に居る者たち…

彼らの戦いはその日の糧のため、

彼らの楽しみは街中の野良猫のささやき、小鳥のさえずりと共にある…”

それは全く私の心の中を見透かしたようだった

そして私の隠された心の裏には、そのたぎるような信念の瓦解が始まりかけていた

ある時、私は主に訊いた”あなたは何故私を使徒に選んだのですか?”

主は答えられた…

”お前の中に燃え堕ちたトーラーの書が見える

 お前の中に焼け落ちた神殿が見える

 お前の中にダビデの星の失墜が見える…

 お前の中の選ばれた民は、異邦人にとって代わるだろう…

 古きものと新しきものの交点、その場こそはお前にふさわしい…”


何という呪詛に満ちた言葉であろう!

これにより、私の決心は定まったのだ…

人の子がローマ人の手に渡る前に、せめて同胞に売り渡そう、と…

銀貨30枚で…

しかし、私には主が言われた本当の意味が分からなかった…

私はわが主を裏切った…わが同胞をも裏切った…

私の思惑もはずれ、主はローマ人の手によって葬られた…

私は全ての依りかかるものを失ってしまった

絶望の果てに、全てを覆い尽くす闇から蘇った時…

私は見た! 全く他愛のない野良猫の戯れのうちに

神の栄光の現れるのを…

仮初のように思えたことごとくが光り輝いているのを…

私は知った! ここには聖なるものも他愛のないものも無いのだ…

私はこの地に戻ってきた… 











 


 

 












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