人生の裏側

人生は思われた通りでは無い。
人生の裏側の扉が開かれた時、貴方の知らない自分、世界が見えてくる・・・

現代の神秘家モーリス・ズンデル

2017-05-19 16:35:32 | 人生の裏側の図書室
「真の人間が見いだされるところに神は見いだされる」モーリス・ズンデル「慎ましい現存」(福岡カルメル会刊・自主出版)
「”お前は私だ” これこそ、私のうちに書かれた神の署名です」
同「沈黙に聴く―現代の神秘家モーリス・ズンデルの人と霊性」(女子パウロ会刊)

私がブログを書き始めてから変わった事といえば、それまでの数年間、なりを潜めていた読書熱がぶり返したことが挙げられます。
10年ほど前、ニサルガダッタ・マハラジなどの非二元関係の本を読んで、”こういう直接的な道というのは、頭で理解したってしょうがない、読書などで知的に分かろうとすることから離れる必要が有る…”と感じ、あまり書物を求めなくなったのです。
ずっと以前に夢中になって読んでいた宗教書も読み返してみると、どうも観念に浮いている気がして何だか色褪せて感じられたものです。
この時分に書店で、ふと手に取って読んでみたのがスイス系フランス人神父モーリス・ズンデルの言葉を集めた「慎ましい現存」という書物でした。
インド、東洋系が主流?のスピ界にあっては、あまりなじみの無い名前でしょうが、モーリス・ズンデルは、19世紀の終わりごろ生まれ、75年に没しているというから活動期間はかなり長かったのですが、世間に知られるようになったのは晩年になってからです。
これはパウロ六世の共感を得た事も大きかったのでしょうが、死後評価された仏人の生物学者、神父ティヤール・ド・シャルダンや、禅を初めとした東洋の霊性と西洋の霊性の橋渡しをした米人の作家、修士トーマス・マートンと同じく、あの画期的な開かれたカソリック教会へとシフトした65年のバチカン公会議というものが世に出る契機となったと言えるでしょう。
彼の文章というのが、20年代から残されているというのは驚く他ありません。
そのくらい彼が提示したものは、制約された時代相にあってキケン視されただろうし、あまりにも時代を先取りし過ぎていたと感じざるを得ません。
そうです。この神秘家の眼差しは正しく現代に向けられていたのです!
”真の人間の姿、真の自己、神は実在するのか、人類の生く末は?…”これらの問いかけは、我々がかつてないほど基盤と信じて疑わなかったものがグラつきはじめ、否応なしに崩壊か新生かの岐路に立たされざるを得ない、現代の時代相を浮き彫りにしていると言えるでしょう。
教会のドグマなど他からの強制的予断、決定論への迎合は、この抜き差しならぬ現実になんら応えてくれないばかりか、フタ閉めされ、誤魔かされるばかりです。
そこで彼が告示するのは、現存(彼にあってはイエスの現存であるのは言うまでもないです)との神秘的、実存的交わりです。現存は限界内に閉じ込められた自己を解き放つ他者として臨在し、この神的現存のあるところ真の人間も現存すると語られるなど、とても現代的問題に通底していると言えます。(これは実に彼の初期の時代フランスに住していたロシア人、ベルジャーエフの神人キリストと神と人間の相関関係と結び付けた言説と通うものが有ります。多分両者の出会いは無かったと思われますが…)

しっかし…それにしてもズンデルの本を読み返していると、いかにも”誰かさん”が書いてそうなことが所々見いだされるようです。
この誰かさんはどのくらい理解して書いているのか知らないですが(キリスト者でもない)、モーリス神父に私淑でもしてたんだろうか? でなきゃパクリか?
いや、そんなことは無いと思われます。(まるで他者のように他人事を言っているよう)特に意識していなかったですから…十年くらい本を読んでそれっきりで、上述したようにあまり熱心に読書していたわけではなかったのです。
ただあの「真の人間が見いだされるところに神も見だされる…」という言葉にすごーくインパクトを受けた事はハッキリ身に覚えています。
久しぶりに四谷に有るカソリック書店”サンパウロ”に立ち寄ってみて、ズンデルの近著「私というものは他者」(福岡カルメル会刊)が目に留まり、電撃のように内側に閃くものがあったのです!
私にはずうーっと前方に指標が与えられていて、自覚なしにそこから促されるままに、ここで書き続けていたような気がしてしょうがないのです。
私の内側で感じていたものは、実は知らず知らず他者からもたらされていたのかもわかりません。
それはこの生まれ出るのが早すぎた、現代の神秘家の向こうにいる、”見えざる他者”なのでしょうか?

O一般書店では求めにくいですが、前記の書店などには置いてあります。







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