人生にはいくつかの選択…いやこれっきゃないという選択の余地の無い道が有ります。
人はその道に全てを委ねなければなりません。
そして私は不思議なタクシーに全てを託し、35年前の私と対面することになったのです…。
ここは35年前の中央線沿いの都内の某所、彼~過去の私~のアパートに向かう途上、彼は何やら選択に迷ってる真っ最中のようです。
「ウーン…缶コーヒーなんだけど、ポッカとダイドーとどっちがいいかなア…」
―おお、この時分、飲料水の自販機が急増したなあ…そうねえ、私はボスってのが好きなんだけどね…
「エッ、そんな新商品が出回ってるんですか?知らなかったなあ…」
―おい、20メートル先にこの缶コーヒー問題を解決してくれそうな自販機の弁証法があるじゃないか!
「UCCか…」
そして六畳一間の彼のアパートに厄介になったのです。
―いやあ、しょぼい部屋、みじめなものだなあ…しかし、これが普通なんだよな、今のご時世。都営住宅みたいのは有っても、マンションなんざ殆ど無いじゃあないか!それにしても贅沢になったものだ…それで何が悲しくて死に急ぐ必要があるんだ、君を見習うべきじゃないかな。
「言ってる意味がよく分からないが、僕は貧乏なりに楽しくやってるよ。…そうだなあ、ここんとこ何だか理由は分からないけど楽しいよ!金は無い、恋人はいない、オヤジとモメたバッカシだし…それでもね、極端な話、突っ立ってるだけで楽しいことも有るよ。僕ってヘンかな?」
―…そりゃあ…ヘンだ(笑)…君は既に人生の裏側の住人なんだよ。いや生まれついての…と言うべきか?
「今年〈昭和54年)はもう暮れようとしてるけど、新年早々一寸変調をきたした事が有って、そこからどうもヘンなんです」
―何か、こう…ムクムクと気みたいのが満ちて来て、意識が高揚してくる感じかな?
「な、何で分かるんですか!驚いたなあ、オジサンって人は…」
―そりゃあ、君、私は人生の裏側の先住者なんだよ。分かるさ…そういう状態がずっと持続しているんだろ、全く大したもんだよ、君は!…これはだな、君の中で地殻活動が活発になっているのさ、富士山の爆発は近いかも知れない…今の君は揮発性に富んでるから何時そうなってもおかしくないよ。
「爆発ですって!それは聖霊のバプテスマか何かのことですか?」
―ああ、君は小池先生に触れていたんだよね…
「そうです、その出会いってのが不思議なんです。神田の古書街歩いてたら、何となくある書店に入りたくなり、何気なくある雑誌を取り,めくっていたら小池先生が寄稿してる文章が載ってたんです…。」
―そうしてあるスイッチが入ってしまったと…
「そう。どんな人でも聖霊の恩寵を受けられるんだと…もう一つ僕は既に又不思議な機縁であの日月神示に似た正体不明の、現在進行で出されている神示の冊子を取り寄せて読んでいたんです。それには人の内にある神の分霊というか、直霊、直日の御霊に目覚めよ!と畳みかけるように伝えているのです。
これもボルテージが上がりますねえ…」
―君の中のマグマが無けりゃ、そんな風には感じられないよ!
「だけど、その神示は、こないだそれを降ろしてる某教会にゴタゴタが起きたらしく、ストップしてしまいましたよ。」
―そこでは何かの霊学とか、秘儀のようなのも伝えられていたけど、その道はとん挫してしまったという訳だね…で、その小池先生の集会に行ってはみたが、バプテスマと言うのは無かったと…」
「そう、大丈夫なんだろうかっていう、警戒心が先に立ってしまったもので…こっちの方は今保留ってとこですかね…ただ小池先生の縁でこれ又別のものに出会わされた…」
―それがベルジャーエフ!
「そう、これ”神と人間の実存的弁証法”です。そうそう聞きたい事が有るんです、僕の生きてる百科事典のオジサン!」
―何だね、私の生きてるポッカコーヒーのような活火山の青年!
「ソボールノスチっていう、ベルジャーエフが言ってる精神的共同体とは彼の内面にあるもののことなんですか?それとも彼は何がしかの具体的なそのような共同体と関わっていたんですか?」
―それはだねえ…いずれ君が出会うであろう、もう一つの出会いと関係が有りそうだな…
「そう言えば、さっき言ってましたっけ、そんなこと…気になるなあ、なんですか、それは…」
―まあ、夜も長い、テレビでも見てそれからゆっくり語ろうじゃないか…
「ええ、いいですよ。今日は火曜日かあ…”探偵物語”をやってますよ」
―おお、松田優作(89年没)か…懐かしい…
「懐かしい?…僕は服部刑事の成田三樹夫(90年没)のファンなんです」
―二人とも惜しい俳優だった…
「エッ、死んじゃったんですかあ!聞いた事無いですよ、何かの間違いでしょ!」
―いや…その、勘違いだ…二人ともどっか不健康な顔してるだろ…だから、つい…
と、その時のことです。トントンと突然ドアをノックするものが…
「何ですか?」と彼がドアを開けるなり…驚きましたよ!二人連れの警官です!
「ドラッグの常習犯は君か!」と警官
―な、何ですって!何時私が危険ドラッグなんかを…
「ドラッグは皆危険に決まってるだろ!とにかく署に来てもらおうか!」
まるで服部刑事とヤマちゃん(山西道広)のように強引なやり方で、連行されそうになった刹那です!
突然現在に戻ってしまったのです…
何がどうなったのやら、サッパリ分かりません。
残された若き私の運命が気になる…ああ、こんな時選タクシーってのが有ればいいのに…
続く
(参照過去記事「台風一過と地殻活動」「聖霊のバプテスマ」「三位一体」)
人はその道に全てを委ねなければなりません。
そして私は不思議なタクシーに全てを託し、35年前の私と対面することになったのです…。
ここは35年前の中央線沿いの都内の某所、彼~過去の私~のアパートに向かう途上、彼は何やら選択に迷ってる真っ最中のようです。
「ウーン…缶コーヒーなんだけど、ポッカとダイドーとどっちがいいかなア…」
―おお、この時分、飲料水の自販機が急増したなあ…そうねえ、私はボスってのが好きなんだけどね…
「エッ、そんな新商品が出回ってるんですか?知らなかったなあ…」
―おい、20メートル先にこの缶コーヒー問題を解決してくれそうな自販機の弁証法があるじゃないか!
「UCCか…」
そして六畳一間の彼のアパートに厄介になったのです。
―いやあ、しょぼい部屋、みじめなものだなあ…しかし、これが普通なんだよな、今のご時世。都営住宅みたいのは有っても、マンションなんざ殆ど無いじゃあないか!それにしても贅沢になったものだ…それで何が悲しくて死に急ぐ必要があるんだ、君を見習うべきじゃないかな。
「言ってる意味がよく分からないが、僕は貧乏なりに楽しくやってるよ。…そうだなあ、ここんとこ何だか理由は分からないけど楽しいよ!金は無い、恋人はいない、オヤジとモメたバッカシだし…それでもね、極端な話、突っ立ってるだけで楽しいことも有るよ。僕ってヘンかな?」
―…そりゃあ…ヘンだ(笑)…君は既に人生の裏側の住人なんだよ。いや生まれついての…と言うべきか?
「今年〈昭和54年)はもう暮れようとしてるけど、新年早々一寸変調をきたした事が有って、そこからどうもヘンなんです」
―何か、こう…ムクムクと気みたいのが満ちて来て、意識が高揚してくる感じかな?
「な、何で分かるんですか!驚いたなあ、オジサンって人は…」
―そりゃあ、君、私は人生の裏側の先住者なんだよ。分かるさ…そういう状態がずっと持続しているんだろ、全く大したもんだよ、君は!…これはだな、君の中で地殻活動が活発になっているのさ、富士山の爆発は近いかも知れない…今の君は揮発性に富んでるから何時そうなってもおかしくないよ。
「爆発ですって!それは聖霊のバプテスマか何かのことですか?」
―ああ、君は小池先生に触れていたんだよね…
「そうです、その出会いってのが不思議なんです。神田の古書街歩いてたら、何となくある書店に入りたくなり、何気なくある雑誌を取り,めくっていたら小池先生が寄稿してる文章が載ってたんです…。」
―そうしてあるスイッチが入ってしまったと…
「そう。どんな人でも聖霊の恩寵を受けられるんだと…もう一つ僕は既に又不思議な機縁であの日月神示に似た正体不明の、現在進行で出されている神示の冊子を取り寄せて読んでいたんです。それには人の内にある神の分霊というか、直霊、直日の御霊に目覚めよ!と畳みかけるように伝えているのです。
これもボルテージが上がりますねえ…」
―君の中のマグマが無けりゃ、そんな風には感じられないよ!
「だけど、その神示は、こないだそれを降ろしてる某教会にゴタゴタが起きたらしく、ストップしてしまいましたよ。」
―そこでは何かの霊学とか、秘儀のようなのも伝えられていたけど、その道はとん挫してしまったという訳だね…で、その小池先生の集会に行ってはみたが、バプテスマと言うのは無かったと…」
「そう、大丈夫なんだろうかっていう、警戒心が先に立ってしまったもので…こっちの方は今保留ってとこですかね…ただ小池先生の縁でこれ又別のものに出会わされた…」
―それがベルジャーエフ!
「そう、これ”神と人間の実存的弁証法”です。そうそう聞きたい事が有るんです、僕の生きてる百科事典のオジサン!」
―何だね、私の生きてるポッカコーヒーのような活火山の青年!
「ソボールノスチっていう、ベルジャーエフが言ってる精神的共同体とは彼の内面にあるもののことなんですか?それとも彼は何がしかの具体的なそのような共同体と関わっていたんですか?」
―それはだねえ…いずれ君が出会うであろう、もう一つの出会いと関係が有りそうだな…
「そう言えば、さっき言ってましたっけ、そんなこと…気になるなあ、なんですか、それは…」
―まあ、夜も長い、テレビでも見てそれからゆっくり語ろうじゃないか…
「ええ、いいですよ。今日は火曜日かあ…”探偵物語”をやってますよ」
―おお、松田優作(89年没)か…懐かしい…
「懐かしい?…僕は服部刑事の成田三樹夫(90年没)のファンなんです」
―二人とも惜しい俳優だった…
「エッ、死んじゃったんですかあ!聞いた事無いですよ、何かの間違いでしょ!」
―いや…その、勘違いだ…二人ともどっか不健康な顔してるだろ…だから、つい…
と、その時のことです。トントンと突然ドアをノックするものが…
「何ですか?」と彼がドアを開けるなり…驚きましたよ!二人連れの警官です!
「ドラッグの常習犯は君か!」と警官
―な、何ですって!何時私が危険ドラッグなんかを…
「ドラッグは皆危険に決まってるだろ!とにかく署に来てもらおうか!」
まるで服部刑事とヤマちゃん(山西道広)のように強引なやり方で、連行されそうになった刹那です!
突然現在に戻ってしまったのです…
何がどうなったのやら、サッパリ分かりません。
残された若き私の運命が気になる…ああ、こんな時選タクシーってのが有ればいいのに…
続く
(参照過去記事「台風一過と地殻活動」「聖霊のバプテスマ」「三位一体」)