徳島を発つ2両編成の列車は、結構混んでいた。
五連休の初日とあって家族連れやお年寄りのグループが目に付く。
遍路と思しきグループもちらほら見受けられる。
車両の最後尾から乗り込んで、空き席を捜したが、結局は一番前のボックス席だけが空いており、
そこに腰を下ろした。
【写真:特急うずしおのアンパンマン車両】

車内で同年輩らしい、顔が真っ黒に日焼けしている遍路に会った。
荷物の量から察すると、野宿覚悟の歩き遍路とお見受けできる。
何よりもあめ色に照り輝く菅笠がベテランらしい雰囲気を醸し出している。
すれ違いざまに、「どちらまで?」と聞くと「鯖瀬まで」と返して来た。
鯖大師をお参りして、その後室戸を目指すので有ろうか?
JR牟岐線はその室戸に向う足で、徳島から海部までの80キロほどの路線だ。
以前は、海部からその先の甲浦まで延びていたが、今ではその間は阿佐海岸鉄道と成っている。
【写真:徳島駅で】
大昔には、その甲浦から土佐湾側の奈半利までを結ぶ鉄道の計画も有ったらしいが、計画は頓挫し、
今ではそこを便数も少ないバスが細々と結んでいる。
鉄道が出来ていたら、いろいろな意味で遍路にも有り難かったのにと思わずにはいられない。
立江には、徳島から30分足らずで到着する。
降りる時、かの遍路に会釈をすると、彼は顔の前で両手を合わせ軽く頭を下げた。

【写真:JR牟岐線立江駅】
立江は思った通りの無人駅であった。
小さな駅舎が線路脇に建っていて、無人の改札口を風が吹きぬけている。
降りるお客は少なく、運転士がキップを回収し、電車が出て行くともうホームにも駅舎にも人はいなくなった。
誰もいない駅舎で白衣を着、靴紐を締め直し、歩く準備をしていると、男が一人入ってきて、缶コーヒーを飲み
ながらベンチに座った。
出掛けに「立江寺へはあの道でいいですか」と聞くと、男は慌てたように飲みかけの缶コーヒーをベンチに置い
て駅舎を出てきた。
余り広くも無い駅前広場を数歩進んでその先を指差しながら、「ほら、あそこ。屋根が見えるだろ。あれがお寺」
「この道を行って、突き当りを右に曲がったら直ぐだ」と親切に教えてくれた。(続)
五連休の初日とあって家族連れやお年寄りのグループが目に付く。
遍路と思しきグループもちらほら見受けられる。
車両の最後尾から乗り込んで、空き席を捜したが、結局は一番前のボックス席だけが空いており、
そこに腰を下ろした。


車内で同年輩らしい、顔が真っ黒に日焼けしている遍路に会った。
荷物の量から察すると、野宿覚悟の歩き遍路とお見受けできる。
何よりもあめ色に照り輝く菅笠がベテランらしい雰囲気を醸し出している。
すれ違いざまに、「どちらまで?」と聞くと「鯖瀬まで」と返して来た。
鯖大師をお参りして、その後室戸を目指すので有ろうか?
JR牟岐線はその室戸に向う足で、徳島から海部までの80キロほどの路線だ。
以前は、海部からその先の甲浦まで延びていたが、今ではその間は阿佐海岸鉄道と成っている。

大昔には、その甲浦から土佐湾側の奈半利までを結ぶ鉄道の計画も有ったらしいが、計画は頓挫し、
今ではそこを便数も少ないバスが細々と結んでいる。
鉄道が出来ていたら、いろいろな意味で遍路にも有り難かったのにと思わずにはいられない。
立江には、徳島から30分足らずで到着する。
降りる時、かの遍路に会釈をすると、彼は顔の前で両手を合わせ軽く頭を下げた。


立江は思った通りの無人駅であった。
小さな駅舎が線路脇に建っていて、無人の改札口を風が吹きぬけている。
降りるお客は少なく、運転士がキップを回収し、電車が出て行くともうホームにも駅舎にも人はいなくなった。
誰もいない駅舎で白衣を着、靴紐を締め直し、歩く準備をしていると、男が一人入ってきて、缶コーヒーを飲み
ながらベンチに座った。
出掛けに「立江寺へはあの道でいいですか」と聞くと、男は慌てたように飲みかけの缶コーヒーをベンチに置い
て駅舎を出てきた。
余り広くも無い駅前広場を数歩進んでその先を指差しながら、「ほら、あそこ。屋根が見えるだろ。あれがお寺」
「この道を行って、突き当りを右に曲がったら直ぐだ」と親切に教えてくれた。(続)