
「あれっ、カメラが・・・」
この先に食事場所は無いと聞いて、今来た道を少し戻ることに成るが、「道の駅・みま」で
昼食を仕入れての帰り道、相棒が突然悲痛な声を張り上げた。
驚いて振り返ると、何時も首から下げているカメラが見当たらない。「何処で・・・」
急いで、道の駅に引き返し、荷物を下ろしたテーブルや、お弁当を漁った商品棚の辺りを
捜して見るがカメラは無い。
レジカウンターに「カメラの忘れものの届けは・・?」と聞いても「有りません」の返事。

「あそこだ・・」
41番札所を参拝後、参道に有る「手造り 福印まんじゅう」の大きさに心ひかれ、休憩をした。
店先のソファに腰を下ろし、餡のギッシリと詰まった大きな饅頭と、お茶を頂いたその時どうも
忘れたらしい。


「タクシーで取りに行く」と言う相棒。
「確認してからの方が良いだろう・・」とレジカウンターに相談すると、忙しい中電話番号を調べ、
電話を入れてくれる。
短いやり取りの後、「ご主人が、届けてくださるそうですよ」と嬉しい返事。
第42番札所・仏木寺までは、道の駅からは3キロほど、そこまでまんじゅう屋のご主人が、届けて
くれると言うのだ。

「あそこはレンタサイクルが有ったので、タクシーで無くとも・・」
「これからは、ダブルチェックだな・・」等と話しながら、県道31号を、振り返り、振り返り歩いて
いると、お寺が近づいたその時、脇にシルバーの乗用車が静かに停まり、窓からニュッとカメラ
が差し出されてきた。
そこには、ご主人の優しい笑顔も有った。(続)

