潜水艦が一度その任務に就けば、浮上して海面を見、青い空や星空を眺める
事も滅多にない、長い航海に成るという。
その間「音を出さない、音との戦い」が何ヶ月も続くのだそうだ。
様々な任務中でも、極力音を出さない工夫が求められる。
それだけに潜水艦の行動は孤独で、味方の艦とも通信を控えるほどだという。
そんな艦内では休憩時間でさえ、音との戦いを休むことが許されないのだ。
当然の事ながら、スマホも携帯もない生活で、それどころか家族や友人との連
絡もままならない。
深海では急遽帰ると言うわけにも行かず、当然親の死に目にも会えないという。
隊内では上司の命令は絶対であろう。上下関係のある男達が70名余り乗り込
んで、狭い空間で四六時中顔を突き合わす生活の軋轢は想像に余りある。
しかも艦内は、独特な匂いがして、生活環境は決して良いとは言えないのだ。
機械の発する熱や油の匂いに混じり、男の体臭や食事等の生活臭に、時には
糞便の匂いが入り交じる不思議な匂いだ、と案内の隊員が面白おかしく語って
聞かせてくれたが、このことすら心穏やかに任務をこなすには障害になるほど
だという。
勿論空調が無いわけでは無いし、トイレもタンクが満杯になれば高圧をかけ
て海中に排出されると言うが、電気を消費するものは極力減らさないといけな
いらしい。なにしろ艦内の電気が無くなれば(バッテリーが切れれば)、隊員
の命に関わる。そうなれば浮上しないわけにはいかない。
これが戦時なら敵に白旗を掲げることになる。
それだけ隊員には強固な体力と合わせ、強靱な精神力が求められているのだ。(続)
「バリ島旅行記」再編集しました
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