「五福」とは、人生に於ける五つの幸福の事である。
即ち「寿命の長いこと」「財力の豊かなこと」「無病で過ごすこと」
「徳を好むこと」「天命を全うすること」を言うそうだ。
西大寺会陽(はだか祭)では、本堂前の大床上で揉みあう裸衆に、
この五福が込められた陰陽一対の宝木(しんぎ)が投げられ、その福
を獲るための奪い合いが行われる。
その謂れに因んで、観音院に近い仁王門前の通りは「五福通り」と呼
ばれるようになった。
そこは吉井川の河口に近い場所で、昔から川運と瀬戸内海を結ぶ備前の
要港として栄え、寺もそんな賑わいと共に発展し、周辺に門前町が形成
され栄えてきた。
明治に入ると、多くの町屋で町並が形成され、商業の中心と成ったのが、
この五福通りである。
通りを歩けば、両側に商家の立ち並ぶ町並からは、何だか、どこか懐
かしい昭和の香りが漂ってくる。
この佇まいは、今日では珍しくなった「看板建築」と言うらしい。
これは関東大震災以降、全国的に商店等で用いられた建築様式だそうだ。
道路側の壁面線を揃える法令の普及や防火目的などで、建物前面に壁
を立ち上げ、外観を銅板やモルタルで擬洋風に仕上げたものだが、その
中身は昔ながらの純和風な建築である。
この通りでは、昭和の初期にバスを通す計画もあり、道路側の1階部
分の軒先が切り取られたことで一気に普及したという。
このレトロな懐かしい雰囲気が人気で、これまでにも「カンゾー先生」、
「ALWAYS三丁目の夕日」「魔女の宅急便」「この世界の片隅に」「君と
100回目の恋」等、多くの映画やドラマの撮影に使われている。(続)
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