ここのところボクシング小説を読み続けている。
タイトルからしてボクシングらしい。
2019年発行の町屋良平の作品。
主人公はボクで名前はない。
4回戦の若いボクサーで、初戦はKOで勝ったものの、
その後3敗1分であり、1勝3敗1分、
早い話が弱いのである。ただパンチ力はあるようだ。
しかし、気持ちの強さがない。
何が何でもとか、チャンピオンになってとか、ない。
なんでボクシングをやってるのか。
でもこういう若者がいるのかもしれない。
みんながチャンピオンになれるわけではないし、
センスがあるわけではない。
ボクは飲食店でバイトをしている。
店のみんながチケットを買ってくれたり、
シフトを優遇してもらったりしていたけど、
勝てないのでまわりから気を使われる存在になる。
ボクはジムに体験入門でやって来た、
女の子をナンパしたりする。
その辺にいるただの若者である。
ボクシングに賭けているものがない。
果たしてボクシングをやる意味があるのか。
そんなボクはトレーナーに見放されてしまう。
しかしそんなボクだが、パンチ力があるので、
同じジムの6回戦ボクサーである通称ウメキチが、
トレーナーとしてつく事にある。
ウメキチはボクの欠点をよく解っており、
解りやすく指導していく。ボクはウメキチの指示を
うっとうしく思いつつも従って行く。
そして迎える次の試合・・・・
「1R1分34秒」でKO勝ちする・・・・
のかと思ったら・・・
「1R1分34秒」でKO勝ちするのを空想するのであった。
私はボクシングをした事がない。
(正確には体験入門だけだ)
だから技術的な事はよく解らないのだが、
ウメキチの分析と指導はとても分かりやすかった。
減量中の精神的な浮き沈みとか、
トレーニングのつらさやモチベーションとか、
周りの環境との付き合い方とか。
この辺りも実際そうなんだろうと思った。
作者は物凄くボクシングに詳しいんだなぁ。
もしかしたら真剣に打ち込んでいた事があったのかなぁ、
などと思っていたら・・・・
最後のあとがきを見て驚いた!
なんと技術的な事は小熊ジムの田之岡条選手の説明を受けていた。
田之岡選手は私の友人がスポンサーについている選手だ。
スポンサーにこの本を推薦したら、やっぱりビックリしてたわ。
世の中狭いなぁ。