2011年の作品、タイトルは「誰もジェシカを殺していない」。
1999年4月30日にデリーのレストラン・バーで起きた、
ジェシカ・ラール殺害事件に基づいている。
ハリヤナ州知事の側近で元国務大臣ヴィドッド・シャルマの
息子マヌがレストランのバーが閉店した後で酒の提供を要求し、
拒否された事で激怒しスタッフのジェシカを射殺したもの。
その後、目撃者に賄賂を贈ったり脅迫したりし、
2006年2月に証拠不十分で一旦は釈放された。
大規模な国民の抗議運動により再審となり、
12月に終身刑が言い渡された。
インド映画に良く出て来る政治家や権力者による、
事件のもみ消しであるが現実も大して変わらない。
名前で判る通り被害者はキリスト教徒であるので、
その辺りの力関係もあったと思われる。
<ストーリー>
1999年のデリー、ディスコに友人達と訪れていた、
マニッシュ(モハメッド・ジーシャン・アユーブ・カーン)は、
酒販売の終了後に酒を要求したが断られた。そこで高額紙幣を出し、
要求したが再び断られたため、酒のストックをあさり始めた。
そこへジェシカが現れ退出を告げたため、激高し拳銃を抜き威嚇、
それでも断られたため天井に向かって1発発射、
さらにジェシカが拒絶したため頭部を撃ち殺害した。
所変わってジャンム・カシミール州のカルギル。
パキスタンとの戦闘に就く兵士を取材するミーラ
(ラーニー・ムカルジー)は、デリーへ戻る飛行機の中で、
ジェシカ殺害事件の犯人マニッシュが無罪となった事を
新聞で知りショックを受ける。
警察はマニッシュを逮捕し事情聴取を進め、同時に
現場に居合わせた顧客や従業員から目撃者証言を集める。
しかしマニッシュが政治家の息子であると言う事で、
同時刻に店内には多数の顧客がいたはずだったが、
報復を恐れたり、情報を高値で売りたいと言う人が多く、
警察に協力を申し出たのは7人だけだった。
ジェシカの妹サブリナ(ヴィディヤ・バラン)は、
裁判で証言してくれる人を求めリストを当たり始める。
証言を約束したヴィクラム(ネイル・ブーパー)も、
政治的な圧力によりコルカタへ行ってしまう。
サブリナはTVに出演し協力者を求める。
裁判では、記憶がないの一点張りの者、証言を翻す者、
証言をすると警察書類にサインをしたヴィクラムはなんと、
ヒンディー語が解らないと言い出し、自分がサインをした、
書類はヒンディー語で書いてあったので理解していない、
とまさかの展開になる。そして警察内にも裏切者がおり、
天井を撃った拳銃とジェシカを撃った拳銃は別の物で、
ジェシカを撃った拳銃はマニッシュの物ではないと言い出す。
これと言った確証がないまま7年後の2006年、
マニッシュは無罪釈放となった。
ジェシカの母親はショックで心臓発作を起こし死んでしまう。
新聞記事を見たミーラはTV局に掛け合い、
ジェシカの事件を取り上げる事にする。そして証人尋問で、
偽証したヴィクラムがヒンディー語に堪能である事を録画し、
TVで放送する。そして他の偽証した証人達にも、
罠をしかけ本当の証言を引き出そうとする。ヴィクラムは、
自分の過ちを認めマニッシュが自分のした事を話しているテープを、
ミーラに送る。ミーラはTVで大衆に向けてメッセージを送る。
インド全土の大衆がミーラの呼びかけに反応し、
至る所で正義を求める運動が始まる。
サブリナは7年間の努力が実を結ばなかった事で、
全てを諦めてしまっていたが、
ミーラは今こそ政府をも動かす事ができると諭す。
民衆の動きが政府を動かしマニッシュの父親は職を辞任し
最高裁で再審が開始される事になる。
最高裁の判決でマニッシュは終身刑に処せられた。
その後・・・サブリナは広告代理店を経営し、
ミーラは自分らしい人生を生きている。
こう言う民衆運動は2012年のレイプ事件でも起きたが、
最近9月14日にウッタル・プラデシュ州で19歳の女性が、
レイプ被害に遭って命を落とした事件でも起きつつある。
ニュース報道では「カースト最下層」と記載されているが、
正しくはダリットは「カースト外」になる。
社会科で習った4つのカーストの外(下)に当たる。
報道は正確にして欲しい。
この映画を観て感じたのだが、一人の力は小さいが、
同じ意思を持った人が集まれば社会を動かす事もできる。
と言う事だ。インドに多数いる弱者も一つになって、
国を動かして欲しいものだ。
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