2012年7月24日 (火)
政府は9月の通常国会閉会後に丹羽宇一郎駐中国大使を
交代させる方針を固めたとの報道がなされています。
丹羽氏の尖閣問題に関する「政府の立場とは異なる」発言が、
問題視され、更迭という事態になったようです。
丹羽氏は平成22年6月に菅直人内閣の目玉人事として、
初めての民間出身の駐中国大使に起用されました。
政治主導を掲げる民主党にとっては象徴的な人事でした。
私は最初から問題だと思っていました(*ご参考)。
*ご参考:2010年6月10日付ブログ「民間人を中国大使に」
http://yamauchi-koichi.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-7c2d.html
私が丹羽氏の大使就任直後から問題視していた点は、
丹羽氏の政治的センスについての懸念でした。
当時の私の主張を要約するとは「民間出身はいいけれども、
経済人の中国大使は問題がある」というものでした。
民間出身の大使が一定の比率でいることは良いことです。
しかし、民間人なら誰でもよいということにはなりません。
中国のように政治的に微妙な問題をたくさん抱えた隣国であり、
かつ、経済的に非常に密接な国に商社出身の大使は不可です。
アフリカとか中南米の大使なら商社出身がよいかもしれません。
日本との政治的な関係が薄く、経済的な関係を強化したい国には、
商社出身やJETRO出身の大使がよいでしょう。
しかし、政治問題が多くあり、きわめて戦略的な判断が必要で、
歴史的経緯や国際法の知識が求められる国の大使ポストには、
商社出身の大使では対応できないと思っていました。
脱官僚はいいけれど、専門家軽視はよくありません。
中国政治の専門家、外交・国際政治の専門家など大勢います。
官僚以外の専門家だって日本にはたくさんいるはずです。
オールジャパンで考えて適材適所の人材配置が必要であり、
単に民間人なら誰でもいいという発想ではダメです。
民主党の政治主導のはき違えの一例となってしまいました。
さらに、中国ビジネスを手広くやっている伊藤忠商事という、
直接の利害関係者を大使にするのは、まずいと思いました。
自社に有利な判断をしないか、という疑念を持たれます。
中国政府に伊藤忠商事のビジネスを人質にとられることも、
想定しておく必要があるでしょう。人治国家の怖さです。
中国政府がレアメタルを武器にしたのはつい最近のことです。
いろいろ考えるとやっぱり丹羽氏の中国大使起用は問題でした。
丹羽氏が立派な経営者なだけに、残念というか、お気の毒です。
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