危険な性格や才能が今日の自分を支えている

一方、だから活躍できたところもあるのです。私の性格は研究、執筆、指導などには向いているらしく、帰国後も順調に仕事ができました。人にできない仕事も多少はできたと思っています。

そういう仕事をするには、他人にはない異常さが必要だと思います。見方によれば非常に危険で、失敗の可能性も大きい人生でしょう。

しかし、危険な性格や才能が今日の自分を支えているのは事実です。そう考えると、自分が異常な性格を持ち、危険な道を歩んできたのは、運命の大きな力がそうさせたのではないかと思わざるを得ません。

私の周囲にも、若い頃から温厚で人望のある一群の人たちがいました。勉強もでき、将来を嘱望しょくぼうされていました。

しかし、多くの人が、平凡な人生を送ったようです。優秀だというレッテルを張られたために、嫉妬と反感の渦に巻き込まれ、いらざる争いで苦労し、結果的にそうなってしまったのだと思っています。

あせらずに「長い目で見る」賢さを磨く

人生は、予想もできない苦難に満ちています。中国でも「直木ちょくぼくはまずられ、甘井かんせいはまずつく」といわれます。

まっすぐに伸びた木はすぐに伐採ばっさいされて木材にされてしまう、おいしい水が湧く井戸はすぐ飲みつくされてしまう、というのです。目立つと引きずりおろされてしまうから注意しろという格言です。

高田明和『孤独にならない老い方』(成美堂出版)
高田明和『孤独にならない老い方』(成美堂出版)

私が案外しぶとく生き延びたのは、失敗男だと思われたからかもしれません。

最近、やっと落ち着いて過去を客観的に見ることができるようになりました。すると、欠点だらけで、あまり能力もないのに、なんとか生きてきた自分をいとおしく思うようになれたのです。

これも時間の働きだと思います。ビジネスでは、往々にして、時間をコストとして扱います。しかし、人生では、時間は決定者、神様なのです。

時間は、目立たずゆっくり行く者の味方。

先に頭角を現すと嫉妬の渦に巻き込まれ、
成功できないことも多いのです。